防災コラム
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【消防団は地域の守り手】参加条件や活動内容を詳しく紹介!年末の火災予防ポイントも解説
2024/12/13
消防団は、地域の安全と安心を守るために活動する、とても重要な組織です。消防職員と異なり、消防団員は本業の傍ら、災害が発生した際に即座に応じるための準備を日々行っています。
消防団の活動は、単に消火や救助だけに留まらず、地域防災の総合的な強化を目指しています。
この記事では、消防団に入るための参加条件と、さまざまな災害状況での活動内容を紹介。さらに、年末年始で私たちが火災に気を付けるポイントについても詳しく解説します。
目次
消防団とは
消防団は、会社員・自営業者・主婦・学生など、さまざまな職業や年齢層の人が参加する、地域の安全を守るための非常勤特別職の公務員組織です。
消防組織法に基づいて設置される消防団員は、災害が発生した際に消防署と協力して活動を行い、平常時にも防災活動や防火啓発を行っています。
消防団への参加条件
総務省消防庁では消防団への入団資格は、市区町村ごとの条例で定められています。
一般的に18歳以上で、その市区町村に居住(または勤務・通学)している人であれば、男女問わず入団できるとされています。
- 年齢:一般的に18歳以上で、70歳まで(上限年齢は地域で異なる)
- 居住: 参加希望する市区町村に居住、勤務、または通学している必要があります。
- 健康状態:健康な状態でなければなりません。
- 性別・職業:性別や職業は問いません。女性や学生も積極的に参加しています。
消防団に入るための基本的な条件は上記のとおりで、近年では女性の消防団員は年々増加傾向にあります。政府広報室が作成したグラフを見れば一目瞭然ですね。
また、各地域の消防団への入団フローは、以下のとおりです。
- ステップ1:地域の消防団を探す
- ステップ2:入団したい消防団へ問い合わせる
- ステップ3:案内に従い入団手続きが完了すれば「入団」となる
幅広い活動内容
消防団は、災害時には迅速に現場に駆けつけ、消火・救助・避難誘導といった活動を展開しています。
令和6年の能登半島地震においても、自らも被災者でありながら、地域住民の命と安全を守るために活動した消防団員が多数います。発生直後から住民への避難呼びかけや、消防職員との連携による消火活動、倒壊した建物からの救出作業、さらに避難所の運営などに全力を尽くしました。
平常時には、火災や風水害などの災害に備え、消防本部と協力して消火訓練や応急処置の訓練を行うほか、地域の防災意識を高めるための啓発活動にも取り組んでいます。
例えば、保育園や幼稚園、学校での防災教育や地域住民への防火指導など、多岐にわたる地域密着型の活動を実施しています。
このように、消防団員は地域を深く理解し、災害時には迅速に対応できる重要な存在です。その役割は、地域の防災力の要として欠かせないものとなっています。
消防団活動はライフスタイルに合わせた参加が可能
地域を支える消防団に関心を持ちながらも、仕事や家族の事情で全ての活動に参加するのは難しいと感じる方も少なくありません。
そこで、多くの方が地域の防災力を高める一員として活躍できるよう、消防団では「基本団員」として全ての活動に携わるだけでなく、特定の役割や活動に限定して参加できる「機能別団員」や「機能別分団」という仕組みを設けています。
全国どの地域にも適用する訳ではないようですが、政府広報オンラインによる情報に基づいて紹介します。
機能別団員の主な役割と活動内容
機能別団員としては、以下のような活動が挙げられます。
- 地域住民や子どもたちに向けて、応急手当やAEDの使用方法を教える
- 消防関連のイベントや自治体主催の行事でPR活動を行う
- 学生が学校で学んだ知識やスキルを活かし、広報活動や大規模災害時の支援に取り組む
- 消防団を退団後、OB団員として、豊富な経験を活かした訓練の指導や広報活動をサポートするほか、大規模災害時には積極的に対応する
機能別分団の具体的な取り組み
特定の役割に特化して活動する機能別分団には、以下のような取り組みがあります。
- 女性だけで構成された女性消防分団が、防火に関する広報活動を担当
- バイク隊は、その高い機動力を活かして、車両が入れない現場での状況確認や物資運搬を行う
- 水上バイク隊は、水害や水難事故の現場で迅速な救助活動を実施
- ドローン隊は、上空から被害状況を確認したり、行方不明者を捜索したりする活動を担う
- その他にも、大規模災害時のみ活動する分団など、状況に応じた活動に従事する分団も存在する
近年、機能別団員の制度を採用する自治体や、団員数が増加しています。こうした取り組みにより、自分の得意分野や興味を活かして地域に貢献でき、より多様な参加が可能となっています。
消防団の活動で得られる4つのメリット!
消防団に入団し活動すれば、地域への貢献以外にもさまざまなメリットがあります。ここでは、消防団の活動で得られる4つのメリットを紹介します。
防災力と災害対応スキルの向上
消防団員は、市町村が指定する訓練や研修を通じてスキルを高めます。
火災の原因や予防策、燃焼と消火の基本理論に加え、安全管理の実践的な手法や道路交通法の知識、交通事故の現状に関する講習を受けることで、災害や防災に関する幅広い知識を身につけることが可能。
これにより、災害発生時はもちろん、日常的な突発事故にも冷静に対応できます。また、応急手当や救命技術を学ぶ救命技能講習も含まれるため、緊急時に身近な人を救う力が備わります。
実際に、消防団員が街中で倒れている人を発見し、迅速な心肺蘇生措置によって命を救った事例も報告されているため、こうしたスキルは日常生活の安心感や自信にもつながるでしょう。
地域とのつながりを深める
消防団には幅広い年齢層やさまざまな職業の人々が参加しており「地域を自分たちの手で守る」という想いを共有しています。
そのため、団員同士のコミュニケーションが活発で、普段は接点が少ない人々と交流することで新たな視点が得られる点も魅力。さらに、広報活動や地域イベント、講習会に参加することで、住民との絆が深まり地域での一体感を高められます。
学生にとって就職活動のアピールポイントに
学生消防団員として1年以上活動し、さらに在学中または大学等を卒業後3年以内の方を対象に、市町村長が「学生消防団活動認証証明書」を交付する「学生消防団活動認証制度」があります。
この制度は、社会貢献や規律を持つ姿勢を企業にアピールするのに有効です。
企業にとっても、防災知識を持つ人材の確保は、危機管理能力の向上に役立つため、学生が「ガクチカ」(学生時代に注力した経験)として活用する場面が増えています。
消防団で培った経験は、就職活動でも大いに役立つでしょう。
企業がCSR活動として活用可能
現在、消防団員として活動している人の約7割は企業に勤務しています。
地域防災体制の強化には企業の協力が不可欠であり、これを推進するために総務省消防庁では「消防団協力事業所表示制度」を導入しています。
この制度は、消防団活動に積極的に協力している事業所を、市町村や消防庁が「消防団協力事業所」として認定するものです。
例えば、従業員が消防団活動のために勤務時間中に出動する場合、特別休暇を認めるなど、団員が活動しやすい環境を整備している事業所が対象となります。
認定を受けた事業所には「消防団協力事業所表示証」が交付され、地域貢献としてその取り組みが広く認められるほか、自社のCSR(企業の社会的責任)活動として公式ホームページや広報資料でアピールすることが可能です。
こうした取り組みは、地域社会との連携を強めるだけでなく、顧客や従業員との信頼関係の構築にも寄与します。
消防団員への報酬について
市町村によって異なりますが、消防団員へは年額報酬や災害等で出動した際の出動報酬などが支給されます。また、以下のような待遇もあるようです。
- 活動で死傷した場合には「公務災害補償」の対象となる
- 退職時には勤続年数に応じて「退職報償金」が支給される
- 入団時には活動に必要な被服が貸与される
- 市町村によっては、日頃の活動を称えるための表彰制度もある
報酬金額は各自治体で大きく異なります。
私たちが年末年始の火災予防で気をつける5つのポイント!
年末年始は、家族や友人と一緒に過ごす特別な季節ですが、同時に火災のリスクも高まります。ここでは、年末年始の火災予防で特に注意が必要な5つのポイントについて解説します。
ポイント1:電気器具の使用に注意
年末年始は、電気器具の使用が増える季節です。特に、電気式のヒーター・照明・オーブンなどが頻繁に使用されるため、過負荷を避けることが重要です。
以下のポイントを守ることで、電気器具関連の火災を防ぐことが可能です。
- 電気器具の過負荷を避ける:同じコンセントに、多くの電気器具を接続しないようにします。特に、ヒーターやオーブンなどの高電力消費器具は、別々のコンセントに接続するようにします。
- 使用後は必ずプラグを抜く:使用が終わった電気器具は、必ずプラグを抜いておきます。特に、子供やペットが触れない場所に保管するようにします。
- 古い電気器具の点検:古くなった電気器具は定期的に点検し、異常が見つかった場合はすぐに交換することが大切です。古い器具は、火災のリスクが高いため要注意です。
ポイント2:照明や装飾の安全対策
年末年始は、家の中や外にさまざまな照明や装飾品を飾る季節です。しかし、これらの装飾品も、火災の原因となる可能性があります。
以下のポイントを守ることで、安全に装飾を楽しめるでしょう。
- 電気式の照明や装飾品の使用に注意:電気式の照明や装飾品は、火災のリスクが高いため使用に注意しましょう。特に、熱を発する照明は、可燃物から離して使用することが重要です。
- 熱源との距離を確保する:ロウソクや電気式の照明は、カーテン・布・木材などの可燃物から、十分な距離を保つ必要があります。熱源が近づかないようにすることで、火災のリスクを減らせます。
- 使用期間を短くする:照明や装飾品の使用期間を短くすることで、火災のリスクを減らすことが可能です。特に、長時間使用する場合は、定期的に点検しておきましょう。
ポイント3:キッチンでの火災防止
年末年始は、家族や友人と一緒に食事を楽しむことが増えますが、キッチンでの火災も多く発生しています。
以下のポイントを守ることで、キッチンでの火災を未然に防げます。
- 油やガスを使用する際の注意点:油やガスを使用する際は、コンロから離れてはいけません。特に、油を熱する際は火の強さを調整し、油が過熱しないよう注意する必要があります。
- 調理時間の管理:調理中は食材の状態を確認し、調理時間を管理することが重要です。これは、加熱によって食材からの発火を防ぐためです。特に、オーブンやフライパンを使用する際は、タイマー機能の利用が有効です。
- キッチン周辺の清掃:キッチン周辺は、油や食材のこぼれカスなどが原因で、火災のリスクが高まります。定期的に清掃し可燃物をなくすことで、火災のリスクを減らせます。
ポイント4:タバコや火の使用の注意
タバコや火の使用も火災の原因となる可能性があり、特にタバコが原因の火災は多く発生しています。
以下のポイントを守ることで、安全にタバコや火の使用が可能です。
- タバコの完全な消火:タバコを吸う際は、完全に消火することが重要です。特に、ゴミ箱や乾いた葉などに、タバコを捨てる行為は絶対に行ってはいけません。さらに、家庭内での寝タバコもNG行為です。
- ロウソクやキャンドルの安全な使用方法:ロウソクやキャンドルは、火災のリスクが高いため使用には細心の注意を払いましょう。特に、子供やペットが触れない場所に置き、目を離さないことが重要です。
- 可燃物の多い部屋では火気厳禁:特に、ベッドルームやリビングなどの可燃物が多い場所では、火の使用を避けることで火災リスクを減らせます。
ポイント5:家族全員での火災予防の協力
火災予防は、家族全員の協力が必要です。以下のポイントを守ることで、家族全員で安全に過ごせるでしょう。
- 火災予防のルールを家族全員で理解する:火災予防のルールを家族全員で理解し、共有しておきましょう。特に、子どもや高齢者に対しては、特別な注意が必要です。
- 緊急時の避難計画を確認する:緊急時の避難計画を確認し、家族全員が理解することも大切です。特に、避難ルートや集合場所を事前に決めておくことを、おすすめします。
- 定期的な火災予防訓練の実施:定期的な火災予防訓練を実施することで、家族全員が火災時の対応を理解し安全に避難できます。
これらのことを心がけるだけでも、防火に対する意識が向上し火災リスクを減らすことが可能となります。
まとめ
今回は、地域に根差した活動を行う消防団について、入団資格や活動内容、報酬など詳しく紹介しました。
地域に在住する18歳以上の健康な人であれば、男性だけでなく女性でも入団が可能です。ただし、各地域の分団の状況によって異なるため、入団を検討しているなら地元の消防団に、問い合わせすることをおすすめします。
消防団員でなくても火災予防に努め、自宅から火災を起こさないことが、地域への大きな貢献につながります。
記事内では、年末に火災を起こさないためのポイントを解説しています。ぜひ参考にして頂き、安全に新しい年を迎えましょう。
栗栖 成之
1963年広島県呉市生まれ。現在は兵庫県に在住し、1995年阪神淡路大震災を経験。
2014年からWEBライターを開始して、執筆した記事は3,000以上。
2017年に防災士を取得し、現在防災関連の記事も多数執筆中!