災コラム

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「地震発生時にやってはいけないこと」10のNGパターンを解説!

2023/03/10

近い将来、必ず起きるといわれている巨大地震をご存じでしょうか。南海トラフ巨大地震や首都直下型地震は、高い確率で30年以内に起きるといわれていて、よくテレビ番組でも特集されています。

しかし、これらの巨大地震だけでなく地震大国と呼ばれている日本では、全国各地どの地域でも「地震に対する備え」が必要です。

いつ起きるか分からない地震の備えはさまざまありますが、今回は「地震発生時にやってはいけないこと」について詳しく解説します。

1年で地震は何回起きている?気象庁の震度データベースで調べてみた

冒頭で日本は地震大国とお伝えしましたが「聞いたことはあるけれど、何回くらい地震が起きているの?」と、疑問に思う方も少なくないでしょう。

テレビを見ていると地震速報が報じられますが、自分や知り合いなどが住んでいる地域でなければ「また、地震かぁ」程度で、あまり記憶に残りませんよね。

そこで、2022年の1年間でどのくらい地震が起きていたのか、気象庁の「震度データベース検索」を使って調べてみました。

2022年1月1日~12月31日まで合計1,964回地震が起きている

今回は、次の条件で地震を検索してみました。

  • 期間:2022年1月1日00:00~12月31日23:59
  • 震度1以上の地震
期間 震度1 震度2 震度3 震度4 震度5
震度5
震度6
震度6
震度7 合計
1月 108 43 14 0 0 2 0 0 0 167
2月 85 51 8 1 0 0 0 0 0 145
3月 172 71 19 8 1 1 0 1 0 273
4月 113 45 9 7 1 0 0 0 0 175
5月 97 31 17 3 1 0 0 0 0 149
6月 121 44 13 3 1 1 1 0 0 184
7月 89 35 9 2 0 0 0 0 0 135
8月 106 30 14 5 1 1 0 0 0 157
9月 102 35 13 2 0 0 0 0 0 152
10月 96 29 12 0 2 0 0 0 0 139
11月 104 23 17 2 0 1 0 0 0 147
12月 89 38 11 3 0 0 0 0 0 141
合計 1,282 475 156 36 7 6 1 1 0 1964

2022年月ごとの震度別地震発生数のグラフ

出典:気象庁 震度データベース検査による調査
https://www.data.jma.go.jp/svd/eqdb/data/shindo/index.html


震度6強が発生した3月を詳しく調査

先の2022年1年間における地震の一覧とグラフを見ると、3月に震度6強の地震が起きているのが分かります。

そこで、この3月の地震状況をさらに詳しく調べて見ました。すると、3月16日に震度6強の地震が起きていて、さらにその他にも震度1・2・3・5弱の地震を含め、この日だけで9回の地震が発生していたことが分かりました。

期間 震度1 震度2 震度3 震度4 震度5
震度5
震度6
震度6
震度7 合計
3月16日 4 1 2 0 1 0 0 1 0 9

出典:気象庁 震度データベース検査による調査
https://www.data.jma.go.jp/svd/eqdb/data/shindo/index.html

検索結果を地図に表示して見ることもできる

気象庁震度データベース検査を編集加工した画像

出典:気象庁 震度データベース検査による調査
https://www.data.jma.go.jp/svd/eqdb/data/shindo/index.html


今度は、3月16日にどこで9回も地震が起きていたのかを調べてみましょう。ここまで絞り込めば、震度データベースでは地図での表示が可能となります

地図を見ればお分かり頂けると思いますが、震度1の地震は、島根県西部で11:25に1回起きています。そして、震度6強を含む8回の地震は、福島県沖で発生していることが分かります。

この画像は、気象庁の「震度データベース検索」で表示された地震分布図と、表示情報を独自で編集加工したものです。

震度データベース検索ではこのように、過去に起きた地震情報を確認することが可能です。誰でも利用可能ですから、一度試してみるといいですよ。

震度階級は現在10階級が存在している

ここまでで日本国内では、多くの地震が発生していることが分かりましたが、どのくらいの震度になると被害が起きるのでしょう。

気象庁では、震度0・1・2・3・4・5弱・5強・6弱・6強・7の、10階級の震度を定めています。ご存じの方も多いかも知れませんが、ここでは地震階級について改めて把握しておきましょう。

震度0~3まではほぼ被害が発生しない

震度0~震度3までの被害 図解

出典:気象庁 震度データベース検査による調査
出典:気象庁 震度について


震度0というのは、人が揺れを感じることはまずありませんが、地震計には記録される震度です。したがって、被害が起きることはありません。

震度1では揺れに敏感な人であれば地震だと気づきますが、全く気づかない方もいます。震度2だと流石に多くの方が揺れを認識しますが、高架下などにいると地震だと分からないケースもあります。震度3になると棚などの家具も少し揺れるので、かなり緊張する状況になるはずです。

震度4から地震被害が起きてしまう!

震度と揺れの状況の図解 震度4~震度7
出典:気象庁 震度について


震度4になると揺れも大きくなり、食器などが棚から落ちたり、本棚が倒れたりするなど被害が発生してきます。先の2022年1年間でも、震度4の地震は36回発生しています。いつ自宅のある地域で起きてもおかしくありません。

また、震度5以上になると大きな被害となるので、普段から家具の転倒防止措置などを、おこなっておくことをおすすめします。

どうして震度5と6には「弱・強」があるのか?

みなさんは、震度の表現に「震度5弱・5強」「震度6弱・6強」と、震度5と6に「強・弱」が、なぜあるのかご存じですか?じつはこの震度表示は、1996年(平成8年)4月1日の震度階級改正によって定められたものなのです。

この改正によって、震度は地震計による数字によって発表されるようになりました。それまでは、気象台の職員などの観測員と呼ばれる人が、地震の揺れを感じた体感や、建物の被害状況によって次のように発表していたのです。

  • 震度0:無感
  • 震度1:微震
  • 震度2:軽震
  • 震度3:弱震
  • 震度4:中震
  • 震度5:強震
  • 震度6:烈震
  • 震度7:激震

阪神淡路大震災を契機に震度計による「強弱」がはじまる

1995年(平成7年)1月17日に起きた阪神淡路大震災では、震度5や震度6とされた場所にて被害の違いが確認されました。

1995年(平成7年)1月17日に起きた阪神淡路大震災では、震度5や震度6とされた場所にて被害の違いが確認されました。

たとえば、震度6と発表された神戸と淡路島にある洲本(すもと)市とでは、建物の倒壊の程度、家具の転倒の程度など、被害の程度に違いがあることが分かり、次のように震度計の数値で「強弱」と分けるようにしたのです。

  • 震度計4.5以上5.0未満=震度5弱
  • 震度計5.0以上5.5未満=震度5強
  • 震度計5.5以上6.0未満=震度6弱
  • 震度計6.0以上6.5未満=震度6強

1996年(平成8年)4月1日の震度階級改正から、震度5と6に関してはこのような分類となりました。

しかし、28年前までは人が感じた体感で、地震の震度を公表していたことに、驚いた方も多いのではないでしょうか。

現在では気象庁直轄の地震計が約690個所、国立研究開発法人 防災科学技術研究所の地震観測網が、約1,000個所あり、これらの観測点の地震計のデータから震度がスピーディに公表されています。

地震発生時にやってはいけないこと10のNGパターン!

さてここからは、地震発生時にやってはいけないことを10パターン解説します。基本的にここまでで解説してきた、震度4以上の地震が起きた際でのNGな行動となります。

なかには「エッ、なんで!?」と思うこともありますが、人命が優先であることが前提です。

パターン1:車をドアロックしてキーを持って逃げる

まずは、運転中に大きな地震に遭遇した際のNGな行動で「車をドアロックしてキー持って逃げる」ことは、やってはいけません。

正解は『車にキーを付けたまま、ドアロックしないで避難する』です。この時には車内の貴重品と、車検証を持って逃げることが重要です。

これは緊急車両が通行できるように、誰もが車を動かせる状態にしておくためです。しかし、盗難に遭ったら誰が責任をとってくれるのか、道路の端に寄せておけばドアロックしても問題ないのでは、など講演会などでよく責められる行動です。

「絶対にしてください!」とは言い切れないので、こればかりは個人の判断に任せるしかないですね。

パターン2:車で避難する

これも地震時の車によるNGな行動で、今度は避難所へ車で避難することです。

正解は『車では避難せず、徒歩で避難する』となります。大きな地震では、道路が陥没したり倒壊した建物などのガレキで、道路が塞がれたりすることが多いです。

ただ、地域によっては「津波警報が発表された際には、高齢者などは車で避難もやむなし」と、独自ルールを設けている地域もあります。そうでない場合は、車で避難所に向かうのは逆に危険なので止めましょう。

パターン3:エレベーターを使って避難する

高層階に住んでいる方は、揺れが収まったら地上階に降りて避難所に逃げますが、その際に「エレベーターを使用する」のはNGな行動です。

正解は『階段を使って避難する』です。最近のエレベーターは地震を感知すると近くの階に止まって、点検が済むまで作動しないエレベーターが増えています。そうでないエレベーターは年式も古いはずなので、余計に危険です。

パターン4:ガスコンロの火はすぐに消す

ガスコンロで火を使って料理をしている時に、大きな地震が起きたら「ガスコンロの火をすぐに消す」のは、NGな行動です。

ガスコンロの火を消さなければ火事になると、イメージしますよね。しかし現在のガスメーターはマイコン式メーターと呼ばれていて、都市ガスでもプロパンガスでも地震の大きな揺れを感じたら、自動でガスを遮断する機能が搭載されています。

したがって、自分で火を消さなくてもガスが止まるので火も消えます。それよりも、揺れによってガスコンロに乗っていた、油やお湯がかかり大けがをする危険が大きいので『ガスコンロの火はそのままにして、安全な場所に逃げる』のが正解です。

パターン5:散らかった部屋を素足で歩いて逃げる

地震時は慌てているのでやってしまいがちなのが「素足で散らかった部屋を歩いて逃げる」ことです。

裸足でも靴下を履いていても、素足で散らかった部屋を歩くのは危険です。その理由は、ガラス製品などが割れて散乱していると、高い確率で大けがを負ってしまうからです。

『最低でも底が固いスリッパや、運動靴を履いて歩く』ことが正解です。運動靴は大抵玄関にあるので、そこに辿り着くまでにケガをしないよう、底が厚手のスリッパを普段から利用するか、ベッドや布団の近くに置いておくことがおすすめです。

できれば、防災グッズとしてスニーカーをベッド付近に置いておくのがベストです。

パターン6:ブレーカーをそのままにして避難する

自宅から避難所へ避難する際には、冷蔵庫の中の食材が腐らないように「ブレーカーをそのままにして避難する」方も多いです。しかし正解は『メインのブレーカーのスイッチを下げて避難する』です。

食材はそのまま腐っても廃棄すれば済みますが、ブレーカーをそのままにしておくことで、通電火災を起こすリスクが高まります。

もしも避難所にいる間に自宅が火災で全焼すると、帰る場所がなくなります。普段から自宅のブレーカーの場所を確認して、避難する際にはスイッチを下げておくことをお忘れなく。

パターン7:川や海の様子を確認しに行く

自宅が大きな河川や海のそばにある方は、大きな地震の後に川や海の様子を見に行く方もいます。しかし、大きな地震の後に「川や海の様子を見に行く」のはNGな行動です。

最近では地震時にはテレビやラジオなどで、地震後すぐに津波注意報や津波警報が発表されます。そしてすぐに高い場所に避難することが望まれますが、注意報や警報を知らない方が様子を見に行くこともあります。

正解は『大きな地震後に川や海に近づかない』ことです。たとえ津波の心配がなくても、地震によるさまざまな被害が予想されるので、安全が確認できるまでは近づくのは止めましょう。

パターン8:被災地の知り合いに電話をかける

大きな地震が起きた地域に、家族や知り合いがいる方は心配でなりませんよね。早急に安否確認するために電話をかけますが「被災地の家族や知り合いに電話をかける」のはNG行動です。

一度に多くの方が被災地へ電話をかけると、回線がパンクしてしまいます。そのような場合には、災害用伝言ダイヤル(171)や、災害用伝言板(WEB171)を利用しましょう。

普段から家族間や知り合い同士で、災害時の連絡方法を決めておくといいですよ。

パターン9:SNSの情報のみを信じる

最近はテレビ離れや新聞離れが進み、情報源はニュース番組ではなくSNSで発信される情報である若者が多いです。

特にTwitterは、大変多くの方が利用する情報ツールです。大臣や専門家の発信もありますが、「Twitterの情報のみを信じる」のはNG行動です。

特に大きな地震が起きた際には、ローカルな情報を得ようと利用する人が多くいますが、フェイクニュースも必ず存在します。最近ではトルコの地震の際にも、津波が襲った、原発が爆発したなど、デマが拡散されています。

大きな地震が起きた際には『公式の信用できる情報を得ること』が必要です。Twitter内でも個人ユーザーからの情報でなく、官邸や信頼できるメディアの情報を収集して判断することが重要です。

パターン10:帰宅後すぐに電気を付ける

避難所に避難していて、安全が確保されたからと帰宅した際に「すぐに電気のスイッチを入れる」のはNG行動です。

もしかすると、ガス漏れを起こしてガスが充満しているケースもあります。スイッチを入れた際の少しの火花が、爆発を起こす原因になりかねません。

正解は『自宅に戻ったら、まずは窓を全開にして十分に空気を入れ替えてから、電気のスイッチを入れる』です。自宅に帰れた安心感からやりがちな行動ですが、危険があることを覚えておいてくださいね。

まとめ

今回は、地震発生時にやってはいけないこと、10のNGパターンをお届けしました。また、気象庁が提供する、震度データベースの紹介もしています。

実際に大きな地震が起きたら、パニックになり何をすればいいか分からない方がほとんどです。私も阪神淡路大震災を経験したからか揺れにはとても敏感で、震度1の揺れでも「また、揺れがくるのか?」と身構えてしまいます。

ただ「やってはいけないこと」を知っておくことで、少しでも危険を回避することはできるはずです。いわれて見れば当たり前のことばかりですが、改めて把握してもらえると幸いです。

栗栖 成之

1963年広島県呉市生まれ。現在は兵庫県に在住し、1995年阪神淡路大震災を経験。
2014年からWEBライターを開始して、執筆した記事は3,000以上。
2017年に防災士を取得し、現在防災関連の記事も多数執筆中!