災コラム

防災士や編集スタッフによる
お役立ちコラムや皆様の体験談など

【防災の日特集】防災士がおすすめする『地震に備えて今やるべきこと10選!』

2024/09/01

Photo AC

2024年1月1日16時10分、全国でお正月を楽しんでいた夕刻に、石川県の能登半島で最大震度7の地震が起こりました。あれから約7か月が経過、まだみなさんの記憶に新しいところでしょう。

さらに今年は、千葉県東方沖や豊後水道を震源する地震が多発。8月8日に発生した日向灘を震源とする震度6弱の地震では、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)がはじめて発表され大騒ぎになりましたね。

そこで今回は、9月1日の防災の日特集として、「防災士がおすすめする!地震に備えて今やるべきこと10選」を紹介します。

2024年の主な地震を再確認|震度5弱以上は27回発生

まずは、気象庁の地震データベースを使って、2024年1月1日~8月25日までに起きた、震度5弱以上の地震を確認してみましょう。

気象庁 震度データベース検索
出典:気象庁 震度データベース検索を加工

8月25日までに起きた震度5弱以上の震源を地図で表示すると、上記のようになります。

円の大きさがマグ二チュードを表しており、円が大きいほどマグ二チュードも大きくなります。また、円の色は震源の深さを示しており、赤いほど震源が浅くなるため揺れが大きくなります。

検索の結果、震度5弱以上の地震は約8か月間で27回発生。ただ、27回のうち18回が石川県能登半島での地震であり、さらに1月には震度7を含む17回もの大きな地震が起きていました。

このことは、次の一覧表を見るとよく分かります。

東日本大震災や熊本地震と同様に、震度7の地震が起きれば大きな揺れを伴う地震が同時期に多発することが証明されています。

今度は発生状況を一覧で確認

気象庁 震度データベース検索
出典:気象庁 震度データベース検索のデータを加工

上記の一覧表では、石川県能登半島の地震に関しては「黄色」で着色してあります。これによって、能登半島で大きな地震が繰返し発生していたことが、よくお分かりいただけるでしょう。

8月8日16:42発生の地震で南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が発表

気象庁 震度データベース検索
出典:気象庁 震度データベース検索を加工

8月8日16:42に発生した地震では、はじめて「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が発表されました。

この発表を受けてニュースでは特番が組まれるほどとなり、想定震源域内の地域では備蓄のため、水やカップ麺、カセットコンロ、各種防災グッズが売り切れる店舗が続出。

お盆と連休前の発表であったため、海水浴場の閉鎖やイベントの中止など、経済的な損失も大きくなっています。

南海トラフ地震で大きな被害が見込まれる地域

気象庁発行パンフ 南海トラフ地震 -その時の備え-
出典:気象庁発行パンフ 南海トラフ地震 -その時の備え-

南海トラフ巨大地震では上図の想定震源域内で地震が発生した際に、以下の地域に大きな被害が見込まれると予想されています。

気象庁発行パンフ 南海トラフ地震 -その時の備え-
出典:気象庁発行パンフ 南海トラフ地震 -その時の備え-

今回の「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」は、これだけの広範囲の住民に注意を促したので、大きな騒動になりました。

南海トラフ地震臨時情報とは

ここで南海トラフ臨時情報について少し触れておきましょう。南海トラフ地震臨時情報については、気象庁が次のような説明を公開しています。

「南海トラフ地震臨時情報」は、南海トラフ沿いで異常な現象を観測された場合や地震発生の可能性が相対的に高まっていると評価された場合等に、気象庁から発表される情報です。
情報名の後にキーワードが付記され「南海トラフ地震臨時情報(調査中)」等の形で情報発表されます。
引用元:内閣府 防災情報のページ 南海トラフ地震臨時情報とは?

また、今回は「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」でしたが、そのほかにも「調査中・巨大地震警戒・調査終了」の4つのキーワードがあります。

内閣府 防災情報のページ 南海トラフ地震臨時情報とは?
出典:内閣府 防災情報のページ 南海トラフ地震臨時情報とは?

今回の地震は、日向灘を震源とする南海トラフ監視領域内であり、モーメントマグニチュード(※)が7.0になったため「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が発表されています。

※モーメントマグニチュードとは

地震は地下の岩盤がずれて起こるものです。この岩盤のずれの規模をもとにして計算したマグニチュードを、モーメントマグニチュード(Mw)と言います。(出典:国土交通省 気象庁ホームページ)

また、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)の発表は「巨大地震が起こる可能性が高まっているため注意してください」という意味であり、巨大地震が必ず起きるという意味ではありません。

前述したとおり震度5弱以上の強い地震は、南海トラフ地震の想定震源域以外でも起きています。このことからも、南海トラフ巨大地震に限らず大きな地震は、いつどこで起きてもおかしくないので、常日頃から備えておくことが大切です。

防災士がおすすめする 地震に備えて今やるべきこと10選!

Photo AC

ここからは、地震があってから行動するのではなく、地震に備えて今やるべき10のことを紹介します。実践していれば、いつ地震が起きても慌てずに済みますよ。

その1:家具や電化製品の転倒防止

食器棚や冷蔵庫、テレビなど大型の家具や電化製品の転倒防止は必須です。

最近では、さまざまな転倒防止アイテムが販売されているので、自宅に合ったアイテムを使って固定しておきましょう。ただし、固定したから必ず転倒しないとは限りません。

そのため、緊急地震速報が届いたら、すぐに大型家具や電化製品から離れることが重要です。

その2:何も落ちてこない、倒れてこない安全地帯を作っておく

阪神淡路大震災では、死因の約80%が圧死・窒息死となっています。そのため、家具や家電の転倒防止は必須ですが、さらに自宅に「何も落ちてこない、倒れてこない、安全地帯」を作っておきましょう。

おすすめなのは、寝室を安全地帯にすることです。腰より高い家具や割れモノなど、転倒&ケガのリスクを排除すれば、就寝中に地震が起きても安心です。

その3:食料の備蓄は普段の買い物の買い足しで十分

食料の備蓄については、わざわざ5~10年の保存が可能な「防災用の備蓄食品」を購入しなくても大丈夫です。

一般的なレトルトカレーの賞味期限は約1年です。また、多くのレトルト食品の賞味期限も1年程度と長いため、好きな食材のレトルト食品を購入しておきましょう。

缶詰は賞味期限が2~3年と長いため、備蓄には最適です。ただし、そのまま放置して、備蓄していることを忘れるケースもあるので注意が必要ですね。

仮に賞味期限が半年であっても、備蓄の基本はローリングストックです。定期的に備蓄食品を再購入し古い食材を食べて、新しい食材に切り替える方法で、「購入⇒消費⇒購入」を繰り返すことで、長期保存の備蓄食品を購入しなくて済みます。

最低でも3日×家族人数の備蓄を行い、できるなら7~10日×家族分の備蓄があれば安心です。

その4:飲料水は500mlのペットボトルがおすすめ

飲料水も普段の買い物ついでに、500mlのペットボトルを数本購入して備蓄していきましょう。

現時点で全く飲料水の備蓄がない場合は、空いているペットボトルや水筒などに水道水を入れて冷蔵庫に入れておきます。そうすれば、約10日は持つため、その間にペットボトルのミネラルウォーターを購入すれば大丈夫です。

500mlサイズをおすすめする理由は飲み切りサイズであり、1人が1本を専用して使えるから。ペットボトルのミネラルウォーターは、フタを開けたときから劣化が始まります。

2リットルサイズのミネラルウォーターだと、早めに飲み切らないと雑菌が繁殖してしまいます。また、エレベーターのないマンションなどでは、重たい水を階段で運ぶのは一苦労です。

その点、500mlなら1回の買い物で2本程度なら問題なく運べる点も利点となります。因みに、大人が1日に必要な水は約3リットルといわれていますが、それぞれの状況に合わせて備蓄量を調整しておくと良いでしょう。

その5:モバイルバッテリーは2~3個普段からフル充電!冷暖房グッズも用意

モバイルバッテリーは今や、スマホだけのアイテムではありません。ラジオやランタンなどの電灯にも使えますし、夏場では卓上扇風機や冷風扇、ハンディファンに使えるため、停電時の暑さ対策に活躍します。

また、冬場ならカイロや湯たんぽ、ネックヒーターなど、停電時の暖房にも役立ちますよ。

もちろん、モバイルバッテリーだけでなく各種冷暖房グッズも必要なので、必要に応じて購入しておくとよいでしょう。そして、モバイルバッテリーは2~3個用意しておき、常にフル充電状態がベストです。

その6:避難所へ避難する際には非常用持ち出しバッグを用意

耐震等級1の住宅では倒壊しなくても、住むことができない状況になるケースも多くあります。

その際には、近くの避難所に避難することになります。避難時には最低限のグッズを持ち出す必要があるため、自宅避難の可否に関わらず最低限、次のモノを揃えて非常用持ち出しバッグに入れておくようにします。

飲料水・食料品・貴重品・救急用品・ヘルメットや防災ずきん・マスク・軍手・懐中電灯や携帯ラジオ・予備電池・携帯トイレ・タオル・ボディシート・マスク・アルコール消毒液・ウエットティッシュ・生理用品(女性)など

これらは、普段からバッグに入れて保管しておきます。当然ですが、賞味・消費期限を過ぎないように定期的に見直しを行います。また、避難する際には普段使いしている、次のモノも一緒に持ち出すようにします。

  • 現金・服用している薬や薬手帳・救急セット・その他個人的に必要なもの

その7:地震で利用できる避難所の確認

地震ハザードマップは「ゆれやすさマップ」など呼び方が変わりますが、自治体によってはマップ上に、避難所の表示がないケースも多く見られます。

そのような場合は洪水ハザードマップなどによって、避難所が地震に有効になっているか確認が必要です。その際には、以下のマークの違いを知っておきましょう。

避難所
避難場所

公園や学校のグラウンドなどでは、右側の「避難場所」となり建物がありません。そのため、長期に避難するなら建物のある「避難所」の、左側のマークの避難所を目指さないといけません。

また、避難所には定員があるため1ヶ所だけでなく、自宅近辺の複数の避難所をピックアップしておきましょう。

その8:地震で利用できる避難所までのルートを実際に歩いて確認

先の⑦で避難所が決まったら、実際に避難所まで歩いてルートを確認しておきます。

その際に必要なのは、近道として細い路地や道の両側がブロック塀になっているルートは避けることです。

地震によってブロック塀が倒壊して通れない可能性が高いですし、万が一通行できたとしても、避難途中に余震によってブロック塀が倒壊し、下敷きになる危険があります。

できるだけ広く障害物の無い道路を使った、避難所までのルート選定が重要です。

その9:地域の防災訓練には積極的に参加しておこう

地震が起きるとイメージがなければパニックになる方が多いのも現実です。

そのような状況にならないためには、地域の防災訓練には積極的に参加しておくことをおすすめします。

初期消火の手順や応急救護の方法、避難後にはどこに連絡すればよいかなど、地域で内容は異なりますが、参加することで対応時の知識は広がります。

その10:確実な情報を得る手段を持っておく

地震災害が起きると残念ながら、フェイクニュースを広める心無い方が現れるのも現実です。そのようなデマを信じてしまうと、最悪のケースでは命を落とすことに成り兼ねません。

そのため、確実な情報源を普段から確保しておくことが重要です。そこで、防災士としておすすめのスマホアプリを以下に紹介しておきましょう。

  1. Yahoo!防災速報
  2. 避難所ガイド
  3. NHKニュース防災
  4. ウェザーニュース
  5. 気象庁サイト

上記1~4は、いずれも「App Store」または「Google Play」から入手が可能です。「5.気象庁サイト」はココをタップでサイトにアクセスできるので、スマホでブックマークしておくと便利です。

まとめ

今回は、地震が起きる前の備えとして「地震に備えて今やるべきこと10選」を紹介しました。

特に飲料水や食料の備蓄は、地震が起きてからでは入手できないケースも多いです。また、スーパーやコンビニが営業していても、奪い合いに発展することが珍しくありません。

そのため、普段からの買い足しでストックしていくことをおすすめします。また、地震で使える避難所の確認は必ず行い、歩いて避難ルートを確認することも忘れてはいけません。

いつ起きるか分からない地震だからこそ、対策がまだの方は今日から備えをスタートさせましょう。

栗栖 成之

1963年広島県呉市生まれ。現在は兵庫県に在住し、1995年阪神淡路大震災を経験。
2014年からWEBライターを開始して、執筆した記事は3,000以上。
2017年に防災士を取得し、現在防災関連の記事も多数執筆中!