防災コラム
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オフィスの防災!防災士も実践する効果的な対策を徹底解説
2022/08/19
防災グッズを揃えたり備蓄をしたり、家庭での防災対策は万全でも、オフィスでの防災対策ができていない方は意外に多くいます。
オフィスには同僚もいますし、なによりも会社であることが安心感につながり、防災対策を忘れてしまう一因になっています。
ですが、やはりオフィスであっても防災対策を行うことが、万一の災害時には役に立つのは間違いありません。そこで今回は、防災士も行っているオフィスでの効果的な防災対策を徹底解説します。
目次
オフィスで地震が起きた場合!対応の手順を解説
仕事中に災害が起きた場合に、帰宅すべきか会社に留まるべきか悩むケースがあります。
台風の接近による大雨被害についてはあらかじめ予測できるので、大雨の状況を確認しながら早退したり、会社や近くのホテルに泊まったりと準備が可能です。
最も困るのは突然襲ってくる地震で、どのように対応すべきかを解説しましょう。
社内の防災基準がどうなっているのかが重要
以前に防災の講演会で「仕事中に地震が起きても、家には帰れないです」このようにいわれたことがあります。
会社によっては、勤務時間中に地震が起きても仕事ができる状況であれば、仕事を継続しなければならない会社もあるようです。
一方で、防災マニュアルを策定している会社もあり、勤務中に震度5弱以上の地震が起きれば自己判断で、帰宅してもかまわないと定めているケースもあります。また、少人数の会社ではその時の状況で、経営者の判断で帰宅が許可されることもあります。
なので、万一地震が起きた時には、自分の職場ではどのような対応となっているのかを確認しておく必要があります。それによってその後の行動が変わってきますからね。
地震避難は震度が重要!目安は緊急地震速報の発表
地震が発生した際の避難には震度が重要で、目安としては緊急地震速報が発表されるかどうかです。
緊急地震速報は、最大震度5弱以上の揺れが予想されるときに、震度4以上の揺れが予想される地域に対して発表されます。オフィスにいるときに緊急地震速報が発表されたら、次の行動をとりましょう。
- まずは自分の命を守る
- 同僚の安全を確認する
- 負傷者がいれば手当する
- 避難を開始
- 家族の安否を確認する
自宅・会社・避難所、どこに避難をするのか?その判断基準を解説
地震の揺れが収まってから、自分がどこに避難するのか分からない状況になることもあります。自宅に帰るのか、会社に留まるのか、それとも避難所に避難するのか、ここではそれぞれの判断基準を解説します。
ここまでは地震に特化して解説してきましたが、ここからは浸水被害も含めて解説していきます。
【地震・浸水】公共交通機関を利用する際は帰宅難民にならないことが重要
地震でも浸水でも会社への通勤手段として公共交通機関を利用している場合は、帰宅するための電車やバスなどが正常に運行しているかを確認することが重要です。
誰もが自宅に帰宅したいと思っていますが、バスや電車、地下鉄などがストップしている場合は、会社に留まって様子を見た方が無難です。特に通勤距離の長い方は、帰宅困難者(帰宅難民)に陥りやすくなるので無理な帰宅は諦めた方がよいでしょう。
さらに、頑張れば歩いて帰宅できる距離でも、夕方から夜間にかけて帰宅する場合は停電の範囲を確認するようにします。
自宅までの間で停電している地域があるなら夜間の徒歩帰宅は止めた方がいいです。帰宅困難者を狙った犯罪も起きているので、身の安全を確保するなら無理な移動はやめましょう。
【浸水】マイカーでの通勤ではアンダーパスは絶対に通らない
大雨による浸水被害の場合、マイカー通勤の場合はいつもより多くの時間が必要となりますが、多くのケースで帰宅することができます。
ただし、帰宅途中にアンダーパス(立体交差でくぐり抜ける道路部分)には、絶対に侵入してはいけません。
「これくらい大丈夫だろう」と侵入すると、車体が動かなくなり水没してしまいます。毎年のように大雨時にアンダーパスで命を落とす方がいるのも事実なので、大雨時の車の運転ではアンダーパスの通行は絶対にNGです。また、できるだけ雨が収まってからの移動をおすすめします。
【地震・浸水】会社に危険があるなら避難所への避難が有効
地震によって会社自体が被害を受けて倒壊の危険があるなど、会社に留まることができない場合は近くの避難所に避難します。浸水による被害時も同様で、床上浸水ほどの水が押し寄せて来ているなら、避難所への避難が有効です。
ただ、この時に注意して欲しいことは、地震時に避難できる避難所であるか、浸水時に避難できる避難所であるかをしっかりハザードマップで確認しておくことです。
避難所でも浸水する建物もありますし、土砂災害の危険があるので大雨時には使えない避難所もあります。また、地震時には避難所自体も被害を受けている可能性があり、グラウンドなどの広場への避難となるケースが多いことも知っておきましょう。
【地震&津波】とにかく高台へ避難!津波避難ビルを普段から確認しておく
大きな地震が発生した際に津波被害が予想されている地域では、とにかく避難が優先です。
地震が発生してから直ぐに津波警報が発表されたなら、津波が襲ってくるまでに高台へ避難します。また、津波が予想される地域では津波避難ビルも指定されていますから、オフィスから最も近い高台、もしくは津波避難ビルを普段から確認しておく必要があります。
自宅付近の避難場所は把握していても、オフィス付近の避難場所を確認していない方は意外に多いです。オフィス付近の避難場所も確認しておきましょう。
オフィスでも備蓄は必要!社員の1日分の食料を備蓄しておこう
ここからは、オフィスでの備蓄について解説します。災害が発生した時にオフィスに何日も留まることはほとんどないといえます。
街が孤立して帰宅も移動もできない、映画並みのストーリーを考えるなら、全社員7日分の食料の備蓄が有効でしょう。ただ、そこまで考えないのであれば社員1日分の食料の備蓄で大丈夫です。
社員1日分の食料で十分な理由
「備蓄は最低3日分、できれば7日分といわれているのに、どうして1日分でいいのですか?」と、質問されたことがあります。
先にお伝えしているとおり、最悪のケースを考えれば7日分の備蓄があったほうがよいです。できる余裕があるなら、7日分の備蓄を推奨します。ですが、どの会社でもできるのか?というとそうもいかないのが現実です。
なので、交通機関が麻痺して帰宅できない時に、会社に泊まらないといけない状態を想定して、せめて1日分の備蓄があれば翌日までしのぐことができます。
1人当たり500㎖ペットボトル3本+おにぎり3個
出典:楽天市場 https://item.rakuten.co.jp/bousaikan/422393/
ではどのような備蓄が有効なのかですが、1人当たり500㎖ペットボトル3本とおにぎり3個あれば大丈夫です。
ここでおすすめする「おにぎり」は、水を使わずに袋から取り出してそのまま食べることができる、5年の長期保存ができる備蓄用のおにぎりになります。
オフィスでの避難は完全に非常時となるので、断水も考慮しないといけません。断水時でも水を利用できるならカップ麺でも大丈夫ですが、水が使えないとカップ麺を作ることができません。
その他のお湯を必要とするレトルト食品も、断水時には食べることができなくなります。なので、水を必要としない「おにぎり」がおすすめとなります。その他、水やお湯を必要としない缶詰なども有用です。
会社の経費で備蓄が可能
これらの備蓄品は、会社の経費で購入が可能です。価格が若干高くても経費で処理できるので、従業員のために会社が用意してくれると安心できます。
また、定期的に防災訓練を行ってその時に試食会を開催し、どのような味なのか試しておくとローリングストックもできるのでいいですね。
オフィスにおける個人で行う防災対策
先の備蓄は会社が行っておくべき対策になりますが、個人レベルでも防災対策は必要です。
会社の規模や営業状態などがさまざまなので全てのオフィスに対応するとはいえませんが、用意しておくとイザという時に役に立ちますので、参考にしてください。
スニーカーを用意しておく
通常のスニーカーで仕事ができる方は大丈夫なのですが、革靴やハイヒールを使用している方はオフィスにスニーカーを用意しておくと便利です。
例えば、会社に泊まることとなった場合に、革靴やハイヒールのままだと疲れてしまいます。スニーカーに履き替えることで、足が楽になりストレスを感じにくくなります。
また、帰宅時に歩いて帰らなければならない時には、確実に役に立ちます。
少し大きめのブランケットを1枚用意しておく
災害はいつ起きるか分かりませんから、少し大きめのブランケットを1枚用意しておきましょう。女性の方であれば、オフィスに常備している方も多いですが男性は少ないはずです。
ブランケットがあれば、寒さ対策になりますし、机で寝る時のクッション替わりにもなります。
着替え(下着など)を用意しておく
下着などの着替えもロッカーに用意しておくと便利です。特に女性の方は、スパッツやジャージなどの手軽なズボンも用意しておくと、周囲の目を気にしなくてもラクにオフィスで過ごすことが可能となります。
スマホの充電用バッテリーはいつもカバンに入れておく
災害時の情報収集は、現代ではスマホがベストアイテムとなります。ラジオもいいのですが、耳で聞くだけでは覚えきれない情報もあります。
スマホならニュース動画を繰返し見ることができて、ニュース記事を文字で確認できます。また、SNSで地域限定の情報の入手も可能なので、情報収集アイテムとしては万能なのです。
「基地局が破壊されて、通信できないと使えないので意味がない」といわれる方も少なくありませんが、それをいうとラジオもテレビも同じリスクを持っています。
一人一人が欲しい情報は違うので、スマホにて自分に合った情報を収集できるのは大きなメリットです。
ですから、災害時に限らず普段からスマホの電源が切れないように、充電用のモバイルバッテリーは持ち歩くようにしておくことをおすすめします。
家族との連絡はLINEと、災害用伝言ダイヤル・災害用伝言板を利用
出典:NTT東日本 災害用伝言板(web171)を加工
https://www.ntt-east.co.jp/saigai/web171/
仕事中に震度5弱以上の地震が起きたなら、家族の安否を確認する必要があります。その時には発生した震度によって、確認方法を変えると早く安否を確認できるのでその方法を解説しましょう。
災害発生時にはLINEで家族に連絡するのがベスト
まず、震度5弱または5強の地震の場合はNTTの災害用伝言版(web171)や、災害用伝言ダイヤル(171)は開設されないかも知れません。
なので、電話やLINEで安否を確認することをおすすめします。家族が複数人いる場合は、電話よりもLINEの方が効率的です。
震度6弱以上の地震の時も、まずはLINEで安否を確認した後に、詳しいことはNTTが開設する災害用伝言版(web171)や、災害用伝言ダイヤル(171)を利用するとよいです。
ただし、これらの171やweb171は震度6弱の地震を確認してから概ね30分を目途に開設されるので、地震直後は利用できません。なので、まずはLINEを使うことをおすすめします。
時間が経つにつれ、被災地域では通信制限がかかってしまうので、その後はNTTの災害用伝言版(web171)や、災害用伝言ダイヤル(171)を利用すると連絡がスムーズにとれます。
【POINT】
- 災害発生直後はLINEで家族と連絡をとる
- 震度6弱以上の地震ならその後、災害用伝言ダイヤル・伝言板を利用して連絡をとる
- 災害用伝言ダイヤル・伝言板は、地震発生から概ね30分後から利用できる
緊急時に有効なLINEの活用方法はグループLINE
ではなぜ、災害時には電話でなくLINEが有効なのかを解説しておきましょう。電話や災害用伝言板・伝言ダイヤルよりも、優位性があることは先にお伝えしているとおりです。
そこで、地震に限らず緊急時に家族と素早く連絡をとるなら、家族間でのグループを作っておきます。そうすれば、家族に素早く一斉送信が可能です。さらに、LINEにはスタンプにて気持ちを表現できるので、返信もタイピングの必要がないスタンプで素早い返信が可能です。
その他にも災害を含めた緊急時のメリットをまとめると、次のようになってきます。
- 家族間でグループLINEを作っていると素早く全員に連絡が取れる
- 返信はスタンプでOK
- 自分がいる場所の位置情報を共有できる
- 写真や動画も家族間での共有が可能
LINEグループの作成方法については、こちらから確認できますので、ぜひ家族グループは作っておきましょう。 |
https://line-howtouse.net/group.php |
災害用伝言版(web171)や、災害用伝言ダイヤル(171)はどうやって使うの?
出典:NTT東日本 災害用伝言ダイヤル(171)概要とご提供のしくみ
https://www.ntt-east.co.jp/saigai/voice171s/intro.html
災害用伝言版(web171)や災害用伝言ダイヤル(171)が有用ですよ、といっても、普段使うことのないものなので使い方が分からないのは当然です。
しかも、伝言板も伝言ダイヤルも平常時には使えないので「使い方が分からない!」との声が多く聞かれます。ただ、NTTでは次のタイミングで体験利用ができるようになっているので、家族全員で体験しておくと使い方をマスターできますよ。
- 毎月1日、15日 00:00~24:00
- 正月三が日(1月1日00:00~1月3日24:00)
- 防災週間(8月30日9:00~9月5日17:00)
- 防災とボランティア週間(1月15日9:00~1月21日17:00)
また、YouTubeでも災害用伝言版(web171)の登録方法と確認方法を公開しています。せっかくなので本ページでお知らせしておきますね。
災害用伝言板(web171)伝言の登録 |
https://www.ntt-east.co.jp/saigai/movie/w171rec.html |
災害用伝言板(web171)伝言の確認 |
https://www.ntt-east.co.jp/saigai/movie/w171play.html |
各携帯会社でも災害用伝言板が開設されるので知っておこう
NTTだけでなく、docomo・au(KDDI)・Softbankの各携帯会社でも、それぞれで災害用伝言板が開設されます。ここでは、それぞれの伝言板を説明しているサイトの案内をしておきましょう。
家族の安否が分からないと不安が増してしまうので、災害用伝言板は家族全員が利用できるようにしておくことをおすすめします。
docomo |
https://www.docomo.ne.jp/info/disaster/disaster_board/ |
au(KDDI) |
https://www.au.com/mobile/anti-disaster/saigai-dengon/ |
Softbank |
https://www.softbank.jp/mobile/service/dengon/boards/ |
まとめ
今回は、オフィスにおける防災について解説してきました。オフィスで災害が起きた状況によって、帰宅するのか会社に留まるのかを選択します。
公共交通機関がストップしているなら、その日はオフィスで過ごした方が無難です。また、マイカーでも夕刻から夜間にかけての帰宅は避けた方がよいでしょう。さらに、大雨の時には絶対にアンダーパスを通ってはいけません。
無理な帰宅を決行すると、帰宅困難者(帰宅難民)となり犯罪に巻き込まれるリスクも高くなります。オフィスに留まれるように、記事を参考にスニーカーやブランケットを用意しておくことをおすすめします。
家庭で防災について話をするのと同じように、オフィスでも防災について検討することが重要ですね。
栗栖 成之
1963年広島県呉市生まれ。現在は兵庫県に在住し、1995年阪神淡路大震災を経験。
2014年からWEBライターを開始して、執筆した記事は3,000以上。
2017年に防災士を取得し、現在防災関連の記事も多数執筆中!