災コラム

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災害時の自宅避難を快適に過ごす方法!防災士がおすすめするグッズもご紹介

2023/09/16

毎年発生する台風ですが、今年も8月30日時点で既に12号が発生しつつあるなど、例年並みの発生件数となっています。「今年は台風が多い!」と感じるかも知れませんが、そうではなく実は8月時点での発生率は昨年と変わっていません。

ただ「地球が沸騰する時代が来た」と、国連のアントニオ・グテーレス事務総長が発言するなど、酷暑によって今後は多くの台風が発生するかも知れません。

台風が接近したり直撃したりすると、大雨による浸水や土砂災害が発生し、避難を余儀なくされます。そこで今回は、自宅避難をする際の基準と、自宅避難を快適に過ごすための防災グッズもご紹介します。

2023年の台風は実は平年並み?

台風の日の様子

台風9号から12号まで連続して発生しており、また、お盆休みを直撃した台風7号が大きな被害を出したため、「今年は台風が多いよね」という印象をお持ちの方が多いと思います。
まずは、実は8月までの台風発生数は例年並みであることを説明しましょう。

8月までの過去の台風発生数を比較

2018年~2023年の、各年8月までの台風発生件数を一覧にしてみました。

2023年8月の件数は、8月30日時点で台風になるであろう12号も含んでの件数ですが、それでもほぼ例年と同じ発生件数であることが分かります。

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 合計
2023年 1 1 1 3 6 12
2022年 2 2 2 5 11
2021年 1 1 1 2 3 4 12
2020年 1 1 8 10
2019年 1 1 1 4 5 12
2018年 1 1 1 4 5 9 21

出典: 気象庁 台風の発生数から集計



9月以降も例年より気温が高く、多くの台風発生が予想される

出典:ウェザーニュース

https://weathernews.jp/s/topics/202308/220135/

気象庁が発表した3か月予報では、9月~11月も関東から西の地域では平年より気温が高く、東日本から北海道にかけても高いまたは平年並みと、全国的に厳しい残暑になると予想されています。

また、フィリピンの東の海上では対流活動が活発なため、台風が発生しやすいことも予想されており、9月以降は例年を上回る台風が発生するかも知れません。

災害への備えは万全にしておこう!

台風が接近すると大雨や強風にて、大きな災害を引き起こす可能性が高くなります。ましてや台風が上陸して自宅地域を直撃すれば、浸水や土砂災害、強風、高潮など、さまざまな災害が複合して起きるケースも珍しくありません。

したがって、備蓄など災害の備えは万全にしておくことが大切です。

災害時の避難の判断!自宅避難できるケース

大切な命を守るためには災害が起きる前に、安全な場所に避難しなければなりません。

そして避難方法には2種類あり、自治体が開設する避難所への避難と、自宅に残る自宅避難に分かれます。ここでは、自宅避難ができるケースを解説しておきましょう。

洪水ハザードマップで浸水深を確認

出典:国土交通省 重ねるハザードマップを編集



自宅避難が可能であるかは、洪水ハザードマップにて自宅の浸水深を確認しないといけません。この画像は国交省が提供している「重ねるハザードマップ」 にて、広島駅付近の浸水深を表示しています。

凡例にあるとおり、ピンクの地域は浸水が3.0~5.0メートルと予想されており、2階建ての住居なら2階部分も浸水するため自宅避難は不可能です。

3階建て以上の住居やビルであれば、3階もしくはそれ以上の階に垂直避難が可能ですが、基本的には早期に避難所への避難が必要です。

一方で、薄橙色部分の地域では浸水深が0.5~3.0メートルとなるため、自宅2階への垂直避難が可能となります。また、凡例の黄色部分0.0~0.5メートルまでの地域も自宅避難ができます。

このように、自宅がどれだけ浸水するのかを、洪水ハザードマップで確認することが重要です。

【ポイント】
・黄色0.0~0.5メートルの地域は自宅避難が可能
・肌色0.5~3.0メートルの地域は自宅2階への垂直避難が可能

なぜ0.5~3.0メートルと幅が大きいのか?

なぜ「0.5~3.0メートルと幅が広いのか?」と、防災士である筆者もよく質問されます。確かに1.0メートル未満なら1階住居であっても、基礎が高ければ自宅避難が可能です。

しかし、最大3.0メートルとなれば平屋や、マンションの1階の住民は自宅避難ができません。

実はこれは洪水ハザードマップが100年に1度の想定から、1,000年に1度の想定に変わったことから「より安全な対策を実施できる」ようにしているからです。

よって、変に安心して自宅に残り浸水被害を受けるよりも、より確実に身の安全を確保できるよう、避難を促す意味を含んで設定されているのです。

土砂災害ハザードマップで危険個所でないか確認

出典:国土交通省 重ねるハザードマップを編集



次に土砂災害ハザードマップにて、危険個所に含まれていないか確認します。赤色部分はレッドゾーンと呼ばれて、危険度がマックスのエリアです。

そのほか黄色部分には、濃い薄いはありますが、とにかく着色されている範囲に自宅が含まれているなら、先の洪水ハザードマップで大丈夫であっても自宅避難はできません。

必ず避難所への早期避難が求められます。また、着色の境に位置する住宅も念のため、避難所への避難をおすすめします。したがって、自宅避難できるのは土砂災害ハザードマップで着色されていない地域のみとなります。

土砂災害ハザードマップの精度の高さは、2014年(平成26年)8月20日に起きた、豪雨による広島の土砂災害などで証明されています。

【ポイント】
・自宅避難が可能な地域は、土砂災害ハザードマップで未着色の地域のみ

自宅避難を快適に過ごすための方法!


ここまでで自宅避難が可能であるかは、洪水&土砂災害ハザードマップの確認で、判断できることはお分かり頂けたでしょう。

筆者の自宅は自宅避難できる条件が揃っていて、災害時には自宅避難することに決めています。

ここからは自宅避難が可能な場合、避難生活を快適に過ごすための方法を、我が家で行っている手段を交えながら紹介していきましょう。

平常時からの備蓄が大切

台風は接近したり上陸したりするタイミングを、あらかじめ知ることができますから、対策しやすいといわれています。

確かに、最近ではJRなどの交通機関も台風の接近を予測して「計画運休」などの対策を講じています。しかし「台風がくるから自宅避難用に買い出しをしておこう」とスーパーへ行くと、カップ麺やレトルトカレー、パン、パックのご飯など、多くの商品が売り切れ状態になるケースが多いです。実際に記事をご覧の方の中にも、買い物に行ったら売り切れだったケースに遭遇したことがある方もいらっしゃるでしょう。

考えることはみんな同じなので、一度に多くの方が買い物すると品切れになってしまうのは仕方ありません。そこで、カップ麺やレトルト食品などは、普段の買い物で買い足しして備蓄する方法が有効です。

特に「災害用セット」などの高価な非常食を購入しなくても、普段のスーパーで購入できるカップ麺やレトルト食品など、日持ちのする好きな商品をついで買いしておけばよいだけです。

保存期間は1年あれば十分

非常食のなかには備蓄用として保存期間が5年以上の商品もありますが、備蓄食品はローリングストックが基本なので保存期間は1年あれば十分です。ただし、保存期間内に消費して、補充することは忘れないようにしましょう。

我が家ではレトルト食品とカップ麺をついで買いして、夫婦で10食分を備蓄しています。まぁ大抵は私が2~3か月以内に食べてしまうので、1か月に1回補充するようになっています(笑)

飲料水も一律でなく自分たちに合わせた備蓄で

飲料水の備蓄について防災士としては、国が推奨する「大人1人1日3リットル」が必要。といいたいところですが、一律に3リットルでなくても大丈夫です。

南海トラフでは1週間分の備蓄が推奨されているため、4人家族では84リットルの飲料水が必要となり、2リットルのペットボトルで42本もの水を確保することとなります。

これを伝えると流石に「どこに保管するんだよ」と、よくいわれてしまいます。重量を計算しても84kgとなるため、一旦保管したら移動させるのも一苦労です。

多く備蓄できればそれに越したことはありませんので、自分たちの普段の消費ペースを計算するとよいでしょう。また、水だけでなくパックの野菜ジュースなどを、備蓄するのもありです。栄養分を補充しながら水分補給もできますからね。

また、備蓄用のペットボトルは、2リットルサイズでなく500ミリリットルサイズがおすすめです。2リットルサイズを一気に飲み切れる家庭なら問題ありませんが、数日に分けて飲むこととなれば衛生面が気になります。

また、コップなどが必要となり、水道水が使えないとコップを洗えませんし紙コップを多く用意するのも大変です。その点、500ミリリットルサイズなら自分用としてそのまま飲めるので、コップも不要で面倒もなく安全です。

我が家では、ひとり1日3本の計算で3日分18本を備蓄して、2か月目には飲んで交換しています。

トイレは猫砂と45リットルのビニール袋を準備


自宅避難で一番困るのがトイレであり、断水時には非常用のトイレを作る必要があります。市販の携帯トイレも有効ですが、自宅避難時には数が必要になりますし処理に困ることも少なくありません。

そこでおすすめなのが、ビニール袋に猫砂を入れて作る非常用トイレです。我が家ではこの12リットルの猫砂を備蓄していて、断水した際にはこれで簡易トイレを作ります。

もしも、猫砂の購入がめんどうな場合は、新聞紙でも代用可能です。非常用の簡易トイレの作り方は、こちらで紹介しています。「簡易トイレの作り方」イザという災害時のために覚えておこう!

キャンプ用のLEDランタンが超便利


自宅避難で停電した際にはキャンプ用のLEDランタンが超便利です。アルコールタイプのものもありますが、地震時には余震で床に落ちてしまい、火災になる可能性があるのでおすすめしません。

最近では100円ショップでも、550円(税込)でLEDランタンが販売されています。(写真のランタンがその現物です)意外に便利で、我が家では普段から欠かせないアイテムであり、ローリングストック目的で行う定期的なお家キャンプでも大活躍しています。もちろん、予備の電池もしっかり備蓄してありますよ。

モバイルバッテリーとラジオも用意

災害時にはライフラインがどこまで破壊されるかによって、断水・停電・ガス供給の停止などが起きてしまいます。それは単独であったり複合したりと、状況によってさまざまです。

停電した場合には先に紹介したLEDランタンがあれば、部屋が明るくなるので安心感を得られます。さらに、スマホにて情報収集をするケースが多いので、モバイルバッテリーも重要です。また、バッテリー残量がなくなると困るので、ラジオでの情報収集もおすすめです。

カセットコンロはマストアイテム

自宅避難では、カセットコンロはマストアイテムになります。オール電化の家庭ではIHコンロが使えなくなりますし、ガスの供給もストップするかも知れません。

そんな時に活躍するのがカセットコンロで、普段と同じ食材を煮る、焼く、蒸すなど火を使った調理ができます。

まとめ

記事内のポイントを改めてまとめると、次のようになります。

  • いつもの買い物のついでに保存食を買い足しておく
  • 飲料水は500ミリリットルのペットボトルがおすすめ
  • キャンプ用のLEDランタンが活躍する
  • 非常用の簡易トイレには猫砂がおすすめ
  • カセットコンロは必須アイテム
  • モバイルバッテリーとラジオも準備しておこう

自宅避難を快適に過ごすには焦らずに冷静に過ごすことが重要であり、そのためには普段からの備蓄が大切ですね。

栗栖 成之

1963年広島県呉市生まれ。現在は兵庫県に在住し、1995年阪神淡路大震災を経験。
2014年からWEBライターを開始して、執筆した記事は3,000以上。
2017年に防災士を取得し、現在防災関連の記事も多数執筆中!