防災コラム
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被災時でも快適な睡眠環境を整えるには?知っておきたい5つのポイント
2022/09/02
「被災して急に生活が変わった。ちゃんと眠れるかな……」
「これから先どうなるの?不安で毎日寝つけない」
睡眠は私たちの健康に欠かせない生活習慣です。
心や体を休めたり、生活リズムを整えたり、食事や運動と同じように健康に深く関わっています。
しっかりと睡眠をとることで、私たちの心や体は健康に保たれるのです。
被災時における睡眠環境には、心の状態、光や音などの刺激、体がリラックスしているかどうかなど、さまざまな要素が関係しています。
被災時でもしっかりと睡眠をとるには、どのようにして睡眠環境を整えるとよいのでしょうか。
快適な睡眠環境を整えるために必要なポイントを知り、被災時における不安やストレスから心と体の健康を守りましょう。
目次
被災時でも快適な睡眠環境を整える5つのポイント
睡眠をとるときに、ベッドが硬くて体が圧迫されたり、余計な光や音などの刺激があったりするとうまく眠れません。
不安や悩みがあると、睡眠が浅くなり、何度も起きてしまいます。
特に被災時は避難所や車の中など、普段と違う環境で睡眠をとらなければなりません。
快適な睡眠環境を整え質のよい睡眠をとるためには、5つのポイントがあります。
安心して横になれる空間の確保
快適な睡眠環境には、ある程度広さがありリラックスできるスペースが必要です。
腰や肩など、体が圧迫されないように下に毛布やバスタオルなどを敷きます。
体を痛めないためにも、柔らかいものの上で睡眠をとるようにしましょう。
車内などの狭い場所で睡眠をとるときには、エコノミークラス症候群に気をつけましょう。同じ体勢を6時間以上取り続けることで血液の流れが悪くなり、血栓(血の塊)ができます。
血栓ができると、血管の損傷や呼吸困難などを起こします。
簡易的な寝床をすぐ確保できるように、マットや寝袋などを車に積んでおくのもよいです。
キャンプやアウトドア用品は、災害時に必要な道具と共通する点が多いのです。
また、たくさんの人と生活空間をともにする避難所においては、プライバシーの確保も大切です。
段ボールや仕切りを利用して、人の視線を遮るようにしましょう。
気持ちが落ち着くアイテムをそばにおく
いつもと違う環境で睡眠をとるときは、気持ちが落ち着くアイテムをそばにおくのもポイントです。
スムーズな入眠には、物理的な睡眠環境が整っていることも大切ですが、精神状態が大きく関わっています。
強いストレスや不安で眠れないときほど、私たちは何かを抱きしめて安心感を得たり、精神的な心地よさを求めたりします。
ふわふわしていて肌ざわりの良いものや、触れていると落ち着くものがあると、気持ちが安定し入眠もスムーズになります。
肌に触れているものの心地よさが、不安な気持ちや漠然とした怖さを和らげてくれるのです。
マッサージやストレッチで緊張をほぐす
被災時は先の見えない不安や、避難所や車内での生活など、慣れない環境で過ごすことによって、心だけではなく体も緊張状態になってしまいます。
特に緊張状態が続くことによって起こる頭痛は、眠れない原因にもなります。
頭痛がひどくて眠れないときは、側頭筋のマッサージがおすすめです。
側頭筋とは咀嚼筋とも呼ばれるこめかみの上にある筋肉で、手を当ててグッと歯を食いしばると動きます。
側頭筋を指で押しながら、円を描くようにマッサージします。
気持ち良いと感じる強さで押すのがポイントです。
不安なことや緊張ばかりが続くと、気分が落ち込むのと同時に、背中も丸まって前かがみになってしまいます。
手を組んで上に伸びをして、背中の凝りをほぐすストレッチもおすすめです。
光や音などの刺激を減らす
眠るときの周りの明るさは、快適な睡眠環境を作るときには欠かせない要素です。
「オレンジの豆電球のほうが安心できる」「真っ暗にしないと光が気になって眠れない」など、人によって眠りやすい環境は違います。
また、睡眠をとるときの周りの静かさも関係しています。
まったく音がしない状態で眠りたい人もいれば、うっすらと人の話し声や生活音が聞こえると安心する人もいます。
避難所や、他の人と生活をともにする空間では、光や音の加減を自分で調整するのが難しいです。気になって眠れないときは、アイマスクや耳栓などを使って光や音の刺激を減らしましょう。
スマホやテレビなどの情報から離れる
被災時は、被災した各地域の映像や、被害状況に関する情報が頻繁に報道されます。地震や津波がおさまったあとも、その瞬間の映像や、被災地の状況が何度も放送されます。
メディアやSNSの書き込みなどから、事実と異なる情報や知らない人の心ない意見にさらされることも少なくありません。
スマホやテレビを見る時は、必要最低限の情報を得るときだけにしておきましょう。
気持ちがふさぎ込んでしまう情報や、心を乱してしまう情報はできる限り避けましょう。
被災時における不眠
質の良い睡眠は、規則正しい生活リズムを習慣づけ、食事や運動と同じように健康な心や体つくりの土台となります。
特に被災時には、慣れない睡眠環境や不安定な精神状態で睡眠をとらないといけません。眠れない日々が続くことは、糖尿病や心筋梗塞などのリスクを高め、心の健康を奪うことにもなりかねません。
しかし、避難所などの慣れない環境下で不眠になってしまうのは、体の正常な反応です。被災して精神的に強いストレスがかかると、心が興奮状態になってしまいます。「情動的過覚醒」といい睡眠を妨げてしまうのです。
被災時における子どもの不眠と睡眠環境
子どもは、大人以上に環境の変化や周りの大人の様子を敏感に感じ取ります。
特に被災時は、大人が思っている以上に強いストレスや不安を感じ、精神的なショックを受けています。
強いストレスや不安が頭痛や腹痛などの症状となって現れることがあります。また、感情のコントロールができず、突然泣き出したり、疲れを訴えず異常に活動的になったり(過活動)することもあります。
子どもは、「安心感」を与えることで眠りやすくなります。
子どもが安心して心や体を休めることができる睡眠環境を整えてあげましょう。
小学生でも、被災時はできる限り添い寝をして、保護者のそばで安心して眠れる環境を作ります。
どうしても眠れないときは
睡眠環境を整えて工夫をしても、どうしても眠れないことはあります。
「みんなと一緒に寝なきゃいけない」「消灯時間になったから寝ないといけない」と思い詰める必要はありません。
夜に睡眠をとることにこだわらず、今は体が睡眠を求めていないと受け止めましょう。
ゆっくりと呼吸し、リラックスできる体勢で体を休めます。
無理に眠ろうとすると、不眠恐怖になってしまうこともあります。
眠れないことに固執するのではなく、「少しでも眠れた経験」を積むことも大切です。
心や体を休めることが大切
被災すると、これまで自分が当たり前としてきた生活から突然切り離されてしまいます。
避難生活がいつまで続くのかも分かりません。
慣れない環境での睡眠は、自分が思っている以上に疲れが取れず、不眠の原因になりやすいです。
災害はいつ起きるか分かりません
被災時の生活においては、心や体を休めて回復することが大切です。
睡眠環境を整えて、心や体をしっかり休めましょう。
笠原ちよ
石川県出身、愛知県在住のwebライター。 大学で福祉を学び、社会福祉士の資格を取得。 2015年東日本大震災の被災地福島県南相馬市を訪れる。 福祉とまちづくりに関心を持ちながら、webライターとして活動中。
■笠原ちよnote : https://note.com/chiyokasahara/