防災コラム
防災士や編集スタッフによる
お役立ちコラムや皆様の体験談など
防災リュックは備蓄と同じ!家庭にあったスタイルで準備しよう
2023/12/15
本記事では避難時に重要なアイテムである「防災リュック」について、基本的な考え方を紹介します。
家庭のスタイルに合ったカスタマイズをしておきましょう。
目次
防災リュックの考え方!避難場所で困らない装備であること
防災リュックとは災害が起きた時、自宅から避難所などに向かう際に持ち出すアイテムです。
防災リュックに入れるものは、基本的には1~2日間生き残るために必要な水や食料、その他生活用品になります。だからといって、大量の水や食料を入れると重たくて移動に困ります。
ただ、普段から本格的な登山をしているなど、重い荷物を持ち慣れている方は、50kgのリュックでも問題なく背負って移動できるでしょう。つまり、自分の体力に合わせた中身(重量)にすることが重要となります。
政府が推奨している防災リュックの中身とは
政府が公開している「首相官邸 防災特集」サイトでは、防災リュックの中身について、次のようなものを推奨しています。
カテゴリ | リュックの中身 |
---|---|
飲料水&食料品 | カップめん・缶詰・ビスケット・チョコレートなど |
貴重品 | 預金通帳・印鑑・現金・健康保険証など |
救急用品 | ばんそうこう・包帯・消毒液・常備薬など |
装備品 | ヘルメット・防災ずきん ・マスク ・軍手・懐中電灯 |
衣類など | 下着・毛布・タオル・携帯ラジオ・予備電池 |
その他 | 使い捨てカイロ・ウェットティッシュ・洗面用具 |
※乳児のいるご家庭は、ミルク・紙おむつ・ほ乳びんなども用意しておきましょう。
出典: 首相官邸 防災特集
ただ、サイトには「このページは、過去の特集ページを保存しているものであり、掲載情報は、更新されておりませんので、ご注意ください。」との注意書きがあるので、現状に合っていないかも知れません。
防災士がおすすめする防災リュックの中身
そこで現在の状況に合わせた、防災士がおすすめする防災リュックの中身を紹介します。
- 簡易トイレ
- 懐中電灯やランタン
- ラジオ
- 飲料水500㎖ペットボトル4本程度(2ℓ)
- 食料(レトルトなどの食品)
- ゴミ袋(黒色で45 ℓサイズ)
- テッシュペーパー(外側がビニールタイプ1パック)
- トイレットペーパー(1ロール)
- 除菌シート(アルコールタイプ)
- ウェットティッシュ(ノンアルコール)
- 絆創膏、テーピングなど(救急セットがあればOK)
- 園芸用の手袋や滑り止めのついた軍手(革手袋ならなおよし)
- タオルや下着
- アルミブランケット
- ホイッスル
- レインコート
- 夏なら冷却用グッズ、冬ならカイロなど
- メモ帳、油性マジック
- 養生テープ
- 公衆電話用の10円玉
- モバイルバッテリー
- 健康保険証
- 現金や貴重品
- 家族や知り合いの電話番号を記載したメモ
- その他、持病の薬や自身に必要なもの
防災リュックにこれらが入っていると、まずは困ることはないはずです。そして、ほとんどが100円ショップなどで手軽に購入できます。
全ての中身に意味がありますが、それぞれの内容を紹介していると非常に長くなってしまうため、重要なポイントだけ抑えておきますね。
停電時でも公衆電話は現金で使用が可能なので、万一のために公衆電話用に10円玉があると、親戚などに安否を知らせることができます。
特に必要なのは「家族や知り合いの電話番号を記載したメモ」で、スマホがバッテリー切れや故障などのトラブルで、使用不能になった際に役に立ちます。
養生テープはガムテープよりも使い勝手がよく、剥がした際にノリが残りにくいので、さまざまなシーンで活躍します。
軍手は手をケガしないためのアイテムですが、滑り止めが付いたタイプがよいでしょう。ただ軍手は、濡れてしまうと脱げやすくなるので、園芸用のゴム手袋や革手袋をおすすめします。
現金や貴重品は空き巣被害から守るため!避難所でも要注意
ここで言う現金や貴重品とは、自宅に保管してあるいわゆる「タンス貯金」と呼ばれるものです。普段使っている財布はもちろん避難の際に持っていきます。
災害時には残念ながらここぞとばかりに、空き巣を行う犯罪者もいます。このような犯罪者に大切な財産を盗まれないように避難の際に持ち出す方が良いのですが、リュックに入れるのではなく、腹巻タイプの貴重品入れなど肌身離さず移動できる手段が相応しいでしょう。
リュックの中に現金があると分かれば、避難所でも100%安全とはいえませんからね。
リュックは撥水性に優れた20リットル以上がおすすめ
防災リュックとして使うなら、丈夫で防水性能を持ち容量が20 ℓ以上のリュックがおすすめです。
防災リュックと銘打って販売されているものは、質はよいですが高額です。防災リュックとして販売されているものでなく、一般に市販されているリュックで十分です。
「防水リュック」で検索すれば、さまざまなリュックがあり2,000円~3,000円台で購入できます。
ただし、ナップサックのように、肩にかける部分がひもタイプのリュックは避けた方がよいです。ひもタイプだと肩に食い込んで痛みを感じるため、ベルトタイプのリュックを選びましょう。
女性には全身を隠せるポンチョタイプの上着や生理用品が必要
女性の防災リュックには、全身を隠せるポンチョタイプの上着と生理用品が必要です。生理用品の必要性は言わずもがなですが、避難所では意外に着替えに困ることも多いです。
避難所運営マニュアルでは、女性用の着替えスペースや授乳スペースの設置が記載されています。しかし、どの避難所でも外から完全に見えないスペースを確保できるとは限りません。
パーティションで遮っただけでは着替えはむずかしい
公的な避難所の多くは学校の体育館となり、完全に密室になる部屋がない避難所も多くあります。
このような場合は、体育館の一角をパーティションで囲んで、着替えスペースや授乳スペースにするしかありません。そうなると「こんなところで着替えはできない」と感じる方も必ずいます。
そんな時に役立つのが、全身を隠せるポンチョタイプの上着です。これがあればパーティションに囲われたスペースでも、体を隠して着替えができますし、数人で広げれば授乳をするママを隠すことも可能です。
最近では、このタイプの上着が備えられている避難所も増えていますが、1枚持っていると安心ですよ。
防災リュックに忘れがちな中身は普段使っているもの!
災害時に防災リュックに入れ忘れがちなものは、普段使用しているものが多いです。
意外と盲点なのがペット用品です。一緒に避難をすることに必死で、ペットフードなどを持っていくことは忘れてしまったということもあるようです。ペットが普段食べているフードを忘れると、避難所で食事がとれない可能性もあります。
注意したい忘れがちな防災リュックの中身とは!
これらが、避難する際に忘れてしまいがちなものです。確認してみるとどれも普段から利用しているものばかりなので、避難所について「あっ!忘れてしまった」と気づきます。
避難所に到着すれば、取り敢えずの避難生活では現金や通帳は必要ありませんが、自宅に置いたままだと盗難の心配があります。生理用品は、一定量は避難所で確保しているので、数日なら何とかなるでしょう。
ただし、これら以外の自分だけが使うものは避難所では用意されません。持病の薬は避難時に忘れないように、リュックに「薬持った??」と紙に書いて貼っておくとよいです。
また、ペットフードは避難所では用意されないため、忘れるとペットがいつも通りの食事をとれなくなるので要注意です。
防災リュックの数や置き場所は家庭で工夫しよう!
防災リュックに必要な中身は先に紹介したとおりですが、これらの中身を家族分リュックに詰めるか否かは、家庭で検討する必要があります。その理由は、それぞれの家庭で家族構成やスタイルが異なるからです。
ひとり暮らしならリュックひとつで済みますが、子どもや高齢者などが含まれる家族構成なら、リュックひとつでは済みませんからね。
子ども専用の防災リュックを作っておくのがベスト
幼稚園児以上の年齢層の子どもがいるなら、子ども専用の防災リュックを作っておくのがベストです。中学生以上であれば、大人と同様に用意しておかないといけません。
避難時はできるだけ荷物を分散させて、スムーズな避難を心がけるようにします。ただ、幼稚園児にペットボトルなどを持たせるとリュックが重くなるため、紙おむつや着替えなど「かさばるけれど重たくない」ものを入れておきましょう。
高齢者にはリュックでなくショッピングカートを用意する
高齢者のみの家庭や高齢者を含む家庭では、カートと鞄が一体化していて、荷物が楽に運べるショッピングカートを用意します。中身はほぼ同じですが、大人用のおむつや尿取りパッドが必要なケースが多くなります。
これらはかなりかさばるので、あらかじめショッピングカートに予備を保管しておくと便利です。
また、高齢者の避難は「警戒レベル3 高齢者等避難」が発令されたら、すぐに避難を開始します。これは、大雨時に氾濫警戒情報や洪水警報が発令された場合に市町村が発表します。
ショッピングカートなら杖代わりになりますし、リュックよりも安全に避難できます。
防災リュックの置き場所は玄関付近がベスト
防災リュックの置き場所は玄関付近がベストですが、これも住宅事情によって変わります。
戸建の住宅なら玄関に収納スペースがあったりしますが、マンションなどの共同住宅なら収納スペースがない場合が多いです。また、高齢者用のショッピングカートは、足は畳めますが収納には意外にスペースが必要です。
そのため、一様に「玄関付近に準備しておきましょう!」とはいえないのが現実です。あくまでも、避難時に持ち出しやすい場所に準備しておくのがベストですが、置き場所もそれぞれの家庭で工夫しないといけません。
まとめ
今回は、災害時に重要なアイテムである防災リュックについて、さまざま解説しました。記事内で紹介している防災リュックの中身は、あれば便利なものを選んでいます。
絶対にこれだけ必要というわけではないため、各人でアレンジするとよいでしょう。また、リュックに中身を入れた状態で背負ってみて、スムーズに避難できる重さであるかの確認も重要です。
防災リュックの中身には、消費期限のある食材などもあるため、定期的に確認して新しいものと交換することも忘れずに!
栗栖 成之
1963年広島県呉市生まれ。現在は兵庫県に在住し、1995年阪神淡路大震災を経験。
2014年からWEBライターを開始して、執筆した記事は3,000以上。
2017年に防災士を取得し、現在防災関連の記事も多数執筆中!