災コラム

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2022年の夏は水不足になるのか?万一に備え節水方法について確認しておこう

2022/08/05

2022年の梅雨の期間はわずか14日間と、史上最速の梅雨明けとなりました。

当然ながら雨の量も少なく、四国の水がめとして知られる高知県・早明浦(さめうら)ダムでは、6月26日時点で貯水率が36%に減少し、取水制限が行われていました。

ところが7月に入って気候は一転し、各地で大雨に見舞われています。

そこで、2022年の夏は水不足になるのかを調査してみました。さらに、万一水不足になった場合の節水方法についても解説します。

目次

2022年の梅雨を振り返ると14日間と史上最短

雨に打たれる窓の写真

2022年の梅雨入りは沖縄地方で5月4日ごろ、九州地方で6月11日ごろ、東北南部においては6月15日ごろとなり、平年よりもやや遅い梅雨入りとなっています。

そして梅雨明けは、6月29日ごろになってしまい、なんと梅雨の期間が14日間しかない史上最短の梅雨になってしまいました。

各地方の梅雨入りと梅雨明けの一覧表

ここで各地方の梅雨入りと梅雨明けの時期を、一覧表で確認してみましょう。

因みに、梅雨には明確な定義がないので、気象庁からは「梅雨入りしたとみられる」「梅雨明けしたとみられる」とのいい方になります。なので、梅雨入り、梅雨明けの時期も「〇日ごろ」との表現になっているのです。

地方2022年梅雨入り2022年梅雨明け梅雨明けの昨年差
沖縄5月4日ごろ6月20日ごろ13日早い
奄美5月11日ごろ6月22日ごろ11日早い
九州南部6月11日ごろ6月27日ごろ14日早い
九州北部6月11日ごろ6月28日ごろ15日早い
四国6月13日ごろ6月28日ごろ21日早い
中国6月14日ごろ6月28日ごろ15日早い
近畿6月14日ごろ6月28日ごろ19日早い
東海6月14日ごろ6月27日ごろ20日早い
関東甲信6月6日ごろ6月27日ごろ19日早い
北陸6月14日ごろ6月28日ごろ16日早い
東北南部6月15日ごろ6月29日ごろ17日早い

6月末時点では西日本の降水量は、平年の半分以下だった

6月26日時点での矢木沢ダムの貯水率98.6% 早明浦ダムの貯水率36.0%

出典:ウエザーニュース 梅雨の雨が少なくダムの貯水率低下夏は水不足の懸念
https://weathernews.jp/s/topics/202206/260105/

6月26日のウエザーニュースでは、西日本のほぼ全域で6月の降水量が少なく、中には平年の50%に満たない地域があると伝えています。

特に四国の水がめとして知られる「早明浦ダム(高知県)」の貯水率は、6月26日12時の時点で、36%まで低下していました。

【5月27日~6月25日の降水量と平年比】

  • 和歌山(和歌山) 76.5mm(45%)
  • 松江(島根)   72.0mm(49%)
  • 多度津(香川)  52.5mm(36%)
  • 四国中央(愛媛) 57.5mm(36%)

梅雨が明けてから大雨が降る異常気象が発生

土砂降りの中アルク男性の写真

梅雨明けとは南からやってくる太平洋高気圧が、梅雨前線を押し上げて日本列島を覆うことで「梅雨明け」となります。今年は、6月26日ごろから太平洋高気圧が日本列島を覆い、連日夏日となる「猛暑」をもたらせました。

これによって「梅雨明け」となったのですが、7月3日ごろからぐずついたお天気となり、九州や東北地方では線状降水帯が発生して、大雨となる正に異常気象が発生しています。

7月の大雨で水不足は解消されたのか調査してみた

6月末時点では雨量が少なく水不足が懸念されていましたが、7月の雨によって水不足は解消されたのでしょうか?そこで、先にお伝えした高知県の早明浦ダムの、貯水率を確認してみました。

【6月26日 12時】

2022年6月26日 12時00分時点での早明浦ダムのダム横断図

出典:高知県水防情報システム ダム諸量状況図
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/saigai/yakudachi/house/lifeline/836797698321887232.html

【7月21日 12時】

2022年1月26日 12時00分時点での早明浦ダムのダム横断図

出典:高知県水防情報システム ダム諸量状況図
https://suibo-kouho.suibou.bousai.pref.kochi.lg.jp/suibou/main.html?no=4&no2=0&fnm=openMap

高知県水防情報システムで調べてみると、早明浦ダムの貯水率は6月26日12時時点では36%となっています。そして、7月21日12時時点の貯水率を確認すると、65.3%にまで回復していました。

それでも第二次制限の35%カットの取水制限が開始された

高知県長岡郡本山町吉野 左岸展望台からとった吉野川水系早明浦ダムの写真

出典:独立行政法人 水資源機構 池田総合管理所 各ダムのライブカメラ
https://www.water.go.jp/yoshino/ikeda/

高知県の早明浦ダムは、吉野川水系にあるダムです。貯水率が65.3%に回復しても、7月21日12時より香川用水の取水量について、第二次制限の35%カットとなる取水制限が再開されています。

確かに、貯水率が回復したとはいえ、早明浦ダムの写真を見るとまだまだ水が足りない感じがするのは否めませんね。

7月の大雨は地域限定!水不足に悩む地域も存在している

水が枯れたダムの写真

連日のニュースでは、九州や東北地方に大雨が降り浸水被害などの状況が報じられていますが、先の早明浦ダムにおいても完全な回復とはならず、再度取水制限が始まっています。

これらの状況を見ると、7月の大雨は限定的であり、水不足に悩む地域も存在していることとなります。そこで、各地域のダムの状況を調査してみました。

九州各地でも貯水率が少ない地域があることが判明

今回の大雨は九州各地に被害をもたらせていますが、九州各地のダムの貯水率を調べていくと、同じ九州でも貯水率が少ないダムがあることが分かりました。

県名ダム数貯水率%(利水容量)
熊本県694.05
福岡県2160.4
長崎県3590.3
佐賀県1389.3
大分県1088.4

※2022年7月11日以降の数値

独自調査によって沖縄を除く九州7県の内、鹿児島県と宮崎県を除く5県のダム情報を調査できました。

ご覧のとおり、熊本県では94%と高い貯水率となっていますが、福岡県では60%に留まっています。九州地方でも地域によっては、水不足が懸念される状況にあるといえることが分かりました

広島県では半数のダムで平年以上の貯水率となっている

2022年7月21日時点での広島県の各ダムの貯水率を表す図

出典:広島県河川防災情報システム
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/saigai/yakudachi/house/lifeline/836797698321887232.html

広島県の状況を見てみると7月21日時点では、12あるダムの内7つのダムが平年の貯水率を上回っています。

この状態が続くなら、広島県内では水不足の心配はいりませんが、今後雨が全く降らなくなれば水不足が心配されます。なにせ異常気象が起きているので、100%安心できない時代になっていますからね。

水不足になるとどうなる!日々の暮らしがガラリと変わる

水が出ない蛇口の写真

ここまでは、梅雨が短く水不足が懸念されていましたが、7月の大雨によって水不足が解消されたのか、調査してきました。

結果としては、水不足が解消された地域とそうでない地域があることが分かっています。

ただ、現時点で水不足が解消されていても、猛暑が続き、雨が降らなければ水不足に陥ってしまうことは考えられます。

そこでここからは、水不足になるとどうなるのかを、詳しく解説します。

農業への影響によって、野菜が高騰し家計にダメージを与える

水を溜めるダムの役割には、洪水調節、水資源の確保、発電、河川環境の保全の、4つの役割があります。

この内、水資源の確保では「水道用水、工業用水、農業用水」など、生活に必要な水以外に、工業・農業へ水を供給する役割を担っています。

まず、農業用水の供給ができなくなると野菜などの生育に悪影響を及ぼし、野菜の供給バランスが崩れてしまいます。その結果、野菜が高騰し家計にダメージを与えることとなります。

さらに、野菜が高騰するために十分な野菜を摂取できなくなり、ビタミン不足など身体への悪影響も考えられます。

工業用水が不足すると経済にダメージを与える

次に、水不足によって工業用水が不足してくると、工場の稼働時間を短縮するなどの措置がとられます。となれば、これまでどおりの生産量が確保できなくなり、製品の供給がストップする可能性もあります。

そうなると、製品の市場価格が高騰するばかりか労働賃金への影響も出てしまいます。つまり、工業用水が不足すると、経済にダメージを与えることとなってしまうのです。

生活用水が不足すると安全安心な暮らしができなくなる

生活用水とは私たちが毎日家庭で使う水道水のことで、水道水が不足すると「断水」になってしまいます。断水になれば、食事の用意やお風呂、トイレも使えなくなるので、とても困る状況に陥ります。

これまで当たり前のように安全で安心して過ごしていた生活が、一変して不便な生活を強いられることとなるのです。

飲料水は、ミネラルウォーターが販売されているので直ぐには問題にならないでしょう。ただ、みんなが多く購入するので、品薄になるのは間違いありません。

ミネラルウォーターも品切れ状態が続いてしまう

断水によるミネラルウォーターの購入では、コロナ禍当初のマスク不足や消毒液の不足と同様に、社会現象となる可能性が高いです。

ほとんどの家庭が、飲み水としてミネラルウォーターを購入しているなら、断水があっても消費量が急激に変化することはないはずです。ですが現実にはそうではなく、水道水を飲料水として使用している家庭がミネラルウォーターを購入することになるので、消費量が増えるのは確実です。

さらに、「たくさん購入しておかないと足りなくなるかも……」との心理的な原因によって、買占めも発生するので消費量は急激に増えて、品切れ状態が続くと予想されます。

飲食店は閉店が多くなり、外食ができない状態に!

では、外食すれば水が提供されるし食事を作れなくても困らない……と考えても、水道水が使えないと飲食店もお手上げです。

例えば、井戸水を100%使っている店舗では営業は可能ですが、井戸水100%の飲食店は限られてくるので、長蛇の列になることが予想されます。

そうでない飲食店では、作ることができたとしても、食器を洗うことができないので営業することができません。なので、ほとんどの飲食店は閉店となり、外食難民が多く発生していまいます。

そうでない飲食店では、作ることができたとしても、食器を洗うことができないので営業することができません。なので、ほとんどの飲食店は閉店となり、外食難民が多く発生していまいます。

取水制限は家庭に影響しない?給水制限は家庭に影響する

水門の写真

先のダムの情報でも、吉野川水系の香川用水の取水量について、第二次制限の35%カットとなる取水制限が行われています。この取水制限は川から汲み上げる水の量を制限することで、各家庭には影響はありません。

各家庭に影響があるのは、取水制限でなく給水制限となります。ではなぜ、取水制限について公表するのでしょう。

各家庭に影響があるのは、取水制限でなく給水制限となります。ではなぜ、取水制限について公表するのでしょう。

取水制限は節水を呼び掛けるPR方法

ダムの水が少なくなると、下流の川の水も少なくなっていきます。なので、川の水を取り過ぎないように取水制限が行われますが、雨が降らない日が続くとその内「給水制限」が始まり、各家庭へ送る水の量が少なくなってしまいます。

そうならないためにも、取水制限が行われることをPRして、節水を呼び掛けているのです。

給水制限が実施されると水道は使えない?

それでは各家庭に影響する給水制限が実施されると、どうなるのでしょう?

給水制限の方法としては減圧制限と、時間給水の2種類があります。減圧給水とは、水道水を供給する圧力を下げて、水の出る量を抑える方法です。高い水圧が求められる高台などでは、水道水が濁ったり水の出が悪くなったりします。

時間給水とは水道を送る時間を制限することで、24時間自由に水を使うことができなくなります。市役所や水道局の広報に気が付かないと、「あれっ?急に水が出なくなった!!」と、慌ててしまうばかりか、トイレを流すことができなくなるので困ってしまいます。渇水時には、水道局の広報には要注意です。

取水制限が始まったら行うべき節水方法

節水を呼び掛けるチラシと水を出しっぱなしの蛇口の写真

先ほどお伝えしたとおり、取水制限が始まったら渇水が起こり始めている証拠です。なので、みんなで節水に取り組まないと、次に給水制限が始まりそれでも水が足りなくなれば、最悪のケースでは断水になってしまいます。

なので、取水制限が始まったら次のような節水に取り組みましょう。

食事の際の食器は紙皿を使用する

節水時にはできるだけ水を使いたくありませんから、食事の際の食器は紙皿を使用します。そうすれば、洗い物をしなくて済むので水を節約できます。

調理も鍋やフライパンなど多くの調理器具を使わずに、鍋だけ、フライパンだけで済むメニューにするとよいです。

また、電子レンジを使用して調理器具を一切使わない調理も、節水にはおすすめです。

お風呂には入浴剤を入れない

できればお風呂でなくシャワーで済ませられればかなり節水できるのですが、湯船につかって体の疲れをとりたい場合もあると思います。そんなときには入浴剤の使用は控え、残り湯を洗濯に使えば節水に繋がります。入浴剤の使用は取水制限が解除されてからにしましょう。

洗濯は風呂の残り湯で行う

お風呂に入浴剤を使っていなければ、残り湯を洗濯に使うことができます。洗濯を洗いから全て水道水にすると意外に多くの水が必要となるので、せめて洗いは残り湯で行い、すすぎを水道水で行うようにすると節水できます。

水洗トイレは大・小のレバーをきちんと使い分ける

この時点で、お風呂の残り湯をトイレに使うには至りません。ただ、トイレの大・小のレバーの使い分けは意識した方がいいです。

小でトイレを利用した際に、大の方にレバーを動かす方も少なくありません。小には小レバーで、大には大レバーで対応すると節水につながります。

洗車はなるべく控えて、どうしても行う際にはバケツで洗車する

取水制限が実施されている間は、洗車はできるだけ控えた方が有難いのですが、鳥のフンがつくなどやむを得ない理由で洗車が必要になるケースもあります。

その時には、ホースで洗い流すのでなく、一旦バケツに水を溜めて洗車するとかなりの節水になります。

歯みがき・洗顔時には水を止める

歯みがきや洗顔の際に、洗面所の水を出しっぱなしにする方がいますが、必要な時だけ水を出してこまめに水を止めることで、かなりの水を節約できます。

蛇口からの勢いにもよりますが、30秒間水を出しっぱなしにすると、約6ℓの水を使うといわれています。

4人家族でそれぞれが水を出しっぱなしにすれば、年間で500㎖のペットボトル35,040本分に相当しますから、かなりの節約方法になりますね。

まとめ

今年は梅雨が史上最短の14日となり、6月下旬には水不足が各地で懸念されていました。その後、7月に入り梅雨のような大雨が続いたので、水不足が解消されたのかを調査してみました。

結果は、解消された地域と、そうでない地域があることが判明。また、現時点で水不足でなくとも、今後の異常気象によって水不足となる可能性は否めません。

そこで、水不足となり生活に悪影響を及ぼす前に、節水を行うことをおすすめしています。

今回は、取水制限が実施されてから行う節水方法を紹介していますが、普段から可能な節水方法もあります。

節水すれば当然ながら水道代も少なくて済むメリットがありますから、ぜひ普段の生活から節水を心がけてみましょう。

栗栖 成之

1963年広島県呉市生まれ。現在は兵庫県に在住し、1995年阪神淡路大震災を経験。
2014年からWEBライターを開始して、執筆した記事は3,000以上。
2017年に防災士を取得し、現在防災関連の記事も多数執筆中!