防災コラム
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防災シェルターってなに?知っておいて損はない、その意味を防災士が解説
2023/11/17
今回は、防災シェルターの意味や役割、どんなシェルターがあるのかをお伝えします。
日本人のほとんどの方がシェルターと聞くと、戦闘時にミサイルや銃弾から身を守る大規模な隠れ場所をイメージするようです。しかし、シェルターは戦闘などの攻撃から身を守る施設だけではありません。
暑熱(しょねつ)や風雨、地震、津波など、あらゆる自然災害から身をまもる防災シェルターも存在します。
今回は、自然災害から身を守る目的で使われる「防災シェルター」についてお伝えします。※今回は、刺激的な表現を使っているためご注意ください。
目次
最も身近な防災シェルターは地震から身を守る
私達の暮らしのなかで最も身近な防災シェルターは、地震から身を守るためのシェルターです。
阪神淡路大震災では、亡くなった方の死因のほとんどが、倒壊した建物や家具の下敷きになったことでした。この震災を機にして、家具の固定などが推奨されるようになりました。
近年では、住宅内に地震時に有効な耐震シェルターを設置する家庭も増えています。
地震はいつ起きるか分からない!就寝中が最も危険
阪神淡路大震災が起きたのは、平成7年(1995年)1月17日午前5時46分と早朝であり、ほとんどの家庭でまだ眠りについている時間でした。
そのため、全く無防備な所にタンスなどの大型家具が倒れ、さらには倒壊した家屋の建材などが一気に襲い掛かっています。震災後の検証では、死亡した方の約9割以上が地震発生直後に亡くなっていたと推定されています。
このことから、就寝中に大きな地震が発生すると大変危険なので「何も倒れてこない、何も落ちてこない場所」での就寝が必要だと、お分かり頂けるでしょう。
地震時に直ぐに逃げられる場所を確保しておく
防災シェルターのひとつである「耐震シェルター」が家庭内にあれば、地震時にすぐに逃げ込めます。家屋が倒壊するほどの大地震をイメージすると、次のようになるでしょう。
- 緊急地震速報が流れる
- 数秒後に「ドン」と、強い揺れがくる
- 家具や冷蔵庫が倒れ、天井の照明が落ちてくる
- ダイニングテーブルや椅子が揺れに合わせて大きく移動する
- 一旦揺れが収まっても揺り返しが起きる
このような状態なら「テーブルなどの下に身を隠しましょう」との避難行動は意味を成しません。また、食器棚などに転倒防止措置を取っていても、収めてある食器類はほとんどがとびだしてしまいます。
自宅での大地震に備えて、寝室などを耐震シェルターにしておくと安心です。とにかくその部屋に逃げ込めば、他の部屋で家具が倒れたり、食器がとびだしたりしても身を守れます。
震度7レベルの揺れなら、ほとんどの家具は倒れる
1981年(昭和56年)年6月1日以降の建物は建築基準法が改正されて、震度6~7の大規模地震でも倒壊しない強度が必要となりました。さらに「2000年基準」と呼ばれる改正により、震度7の地震にも耐えられる「新耐震基準」が定められています。
そのため基本的に、2000年6月1日以降の建物は、震度7の地震でも倒壊しない強度を誇ります。しかしながら、建物自体が倒壊しなくても内部では激しい揺れとなり、震度7レベルならどんなに補強していても、ほとんどの家具は転倒します。
また、高層マンションは耐震や免震が施されているため、倒壊はしないかもしれませんが、しかし、高い建物は大きく横揺れするため震度以上の揺れになり、あらゆる物がとんできます。
作り付けの家具などは別ですが、補助装置で転倒防止対策をしていても、天井や壁の石膏ボードや合板などが割れてしまうと簡単に倒れます。
そのため「食器棚の転倒防止は完璧だから大丈夫」と安心してはいけません。震度5クラスの揺れなら大丈夫でも、震度7クラスは揺れのケタが違います。最悪のケースを考えるなら耐震シェルターは必要でしょう。
耐震シェルターは簡単に作れる!
耐震シェルターを設置するなら、高額な費用が必要と思われる方も多いはず。実は費用をかけることなく、簡単に耐震シェルター代わりになる部屋を作れます。
ここでは、我が家の耐震シェルターの作り方を紹介しましょう。まず必要な条件を紹介すると、次のようになります。
- 倒れるような大型の家具がない
- ベッドよりも高い位置にモノがない
- ベッドは照明器具の真下でない
- 1981年6月1日以降に建築された住宅であること
我が家では、筆者のベッドルーム兼ワークルームと、家族の寝室は上記の仕様にしています。建築年は2005年なので、新耐震基準を満たしています。
従って建物自体は倒壊しないため「何も倒れてこない、落ちてこない部屋」にしてあり、地震の際にはいつも部屋のベッドに逃げ込んでいます。
自宅に1部屋、上記の1~3の条件を満たした部屋を用意しておくと、大きな地震でも安心できるでしょう。
もっと安心したい方には耐震シェルターの施行がおすすめ<
出典:一条工務店
「どんな地震が起きても、潰れることのない耐震シェルターが欲しい」と希望されるなら、現在の住宅の1部屋を完全な耐震シェルターに改造できます。
これまで筆者もさまざまな耐震シェルターを調査してきましたが、一条工務店さんが提供する「木質耐震シェルター」がおすすめです。
この耐震シェルターは既存の住宅をリフォームすることなく、部屋のなかにシェルターを組み立てる仕組みです。価格もスタンダードシリーズなら税込・施工費込みで27万5,000円と割とリーズナブル。手の届く範囲で確実な安全を確保できます。
- 原則4.5畳以上の部屋なら対応可能
- 一条工務店以外の建物全てに対応
- 内部で組み立てるので大きな工事は不要
- 約2日間で設置が完了
- 常時居住できる違和感のないクロス仕上げ
- 仮に建物が倒壊しても耐震シェルターは残る
一条工務店の「木質耐震シェルター」は、コチラからサイトにアクセスできます。
https://www.ichijo.co.jp/news/shelter/
1981年(昭和56年)5月31日以前の建物は補助金で補強できる
先の耐震シェルターを作るには、建物が1981年6月1日以降の建築基準法に適していないと建物の強度が弱くなります。そうなると「簡単に耐震シェルターが作れない」と、残念に思われるかも知れません。
しかし、ご安心ください。実は1981年(昭和56年)5月31日以前の建物であれば、自治体の補助金で耐震シェルターを作ることが可能なのです。
条件は各自治体で異なるが、数十万円の補助金が使える
1981年(昭和56年)5月31日以前の建物の耐震補強を目的に、各自治体で耐震シェルター等の設置に対する補助金が受けられます。
補助額や条件などが異なりますが、数十万円の補助がされるケースが多いです。自宅に耐震シェルターを設置したいと考えているなら「○○市(町) 耐震シェルター 補助金」で検索すると、該当の自治体の詳細が分かります。
火山への登山!火山シェルターの位置を把握しておこう
出典: 朝日新聞デジタル
日本には活火山が多くあり、活火山への登山の際には、火山シェルター(退避壕)の設置個所を把握しておく必要があります。火山シェルターは火山が噴火した際に、登山客が一時的に噴石から身を守るために退避する施設です。
火山の爆発で降り注ぐ噴石の威力は凄まじく、平成26年(2014年)9月27日に起きた御岳山の噴火では、主に噴石によって死者58名、行方不明者5名、負傷者61名もの戦後最悪の火山災害になっています。
日本100名山の3分の1が活火山
日本100名山と呼ばれる有名な山の約3分の1が活火山であり、いつ噴火してもおかしくないスタンバイ状態なのです。日本一高い富士山も活火山であり、噴火を予測した「富士山ハザードマップ」もあります。
そんな活火山に登山するなら「火山シェルター」の位置を把握しておかねばなりません。特に、現段階で噴火を繰り返している桜島や阿蘇山などには、火山シェルターが多く設置されています。
桜島は島民が火山と共に生活している地域であり、噴火時に退避できる火山シェルターは島内の道路沿いに32箇所設置。1箇所で約20~100人が退避できます。
そして、特に警戒が必要な地域では、家の敷地に火山シェルターが設置されているほどなので、やはり活火山に登るならそれなりの知識は必要ですね。
地震や火災時には近くの防災公園がシェルターになる
外出中に地震や火災などに遭遇すると、自宅へ帰宅できないケースも多いです。「近くまで帰ってきているのに、自宅に辿りつかない」と慌ててしまうでしょう。
しかしそんなときには、防災公園がシェルターになるので安心です。もちろん「公園」なので、洪水や大雨時には有効ではありませんが、地震や大規模火災では、安全に避難できる場所として覚えておきましょう。
防災公園は災害時に活躍する
防災公園は、普段は文字どおり公園として使われています。しかし、災害が起きた場合は、大勢の方の避難先として活躍するシェルターと変化します。
停電時でも灯が使えるソーラーライトや、マンホール型の災害用トイレなど、災害に役立つ施設が完備されています。
- 非常用公園灯
- マンホール型防災トイレ
- 常設型防災トイレ
- 断水でも使用できる応急給水槽
- 火を扱える、かまどベンチ
- 簡易的な部屋が作れる、防災パーゴラや防災あずまや
このような施設が防災公園には常設されていて、防災倉庫には備蓄品の確保もされています。地震災害で、自宅に帰れなくなったら近くの防災公園を目指しましょう。
運営マニュアルに沿って、専門家が避難所として開設しているので安心できます。また、上・下水道管の破損にて自宅のトイレが使用できないケースでも、近くに防災公園があると助かります。
防災公園がシェルターに変わるタイミング
防災公園が災害時に防災シェルターになるタイミングは、地震災害が発生しその地域で避難所の開設が行われた時です。また、地域内で大規模な火災が発生した際も、防災公園が防災シェルターとして活躍します。
ただし、大雨による災害時には一時的な集合場所として利用できますが、避難所としては開設されないのでご注意ください。
防災公園での長期的な避難はできず、利用できるのは1~2日程度です。その後は、指示者の誘導に従って、学校や公民館などの指定避難所に移動します。
防災公園は災害自体が収まるまで避難所として運営されるので設備などを使用することはできます。
まとめ
今回は防災シェルターについて、詳しくお伝えしました。家庭内における簡易の地震時に有効なシェルターは、記事内を参考にして頂くと簡単に作ることが可能です。
また、ハウスメーカーが手掛ける本格的なシェルターも、リーズナブルに手に入ります。
そのほか、登山で知っておきたい火山シェルターや、自宅近くで利用可能な防災公園などがあります。いずれも、知っているのといないのとでは、イザというときに身の安全に大きな差が出てしまいます。
本記事を参考にして頂き、災害から身を守る知識を身に着けて頂けると幸いです。
栗栖 成之
1963年広島県呉市生まれ。現在は兵庫県に在住し、1995年阪神淡路大震災を経験。
2014年からWEBライターを開始して、執筆した記事は3,000以上。
2017年に防災士を取得し、現在防災関連の記事も多数執筆中!