防災コラム
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ペットの防災対策を把握しておこう!家族だからこそ備えが必要
2024/06/14
コロナ禍における行動制限を受けて自宅で過ごす時間が増えたことで、ペットブームが加速し、犬や猫を家族として迎え入れた家庭が増加しました。
私たちに癒しを与えてくれるペットですが、大きな災害が起きて避難所に避難する際には、どうなるのか不安に感じる方も多いはず。
そこで今回はペットの同行避難や、避難所での過ごし方、災害を想定した普段からのしつけの方法を解説します。
目次
【2023年の飼育数】犬・猫合計1,591万3,000頭
「ペットの暮らしを平等に」をミッションに掲げて、さまざまなペットに関する情報を発信している「equall(イコール)」が発表した2024年最新版の情報によると、2023年のペット飼育数は以下のように公表されています。
●犬の飼育頭数:684万4,000頭
●猫の飼育頭数:906万9,000頭
●犬と猫の合計:1,591万3,000頭
※一般社団法人ペットフード協会2023年全国犬猫飼育実態調査より
2023年の新規飼育頭数は新生児の出生数より多い
先の頭数を見れば、多くの家庭でペットが暮らしているのがよく分かります。
そして2023年新規にペットを家族として迎え入れた数は次のようになり、厚生労働省が2023年12月分の「人口動態統計速報」で公表した出生数を上回っています。
●犬の新規飼育頭数:39万7,000頭
●猫の新規飼育頭数:36万9,000頭
●犬猫合計の頭数:76万6,000頭
●2023年の新生児出生数:75万8,631人
特に2023年の新生児の出生数は過去最低でしたが、2022年の出生数「79万9,728人」と比較しても、大きな差がありません。
この数字から読み取れることは、2024年現在では多くの家庭で犬や猫が暮らしているということです。
どんなペットも家族同然!災害時の同行避難とは
ペットとして飼育しているのは犬と猫だけではなく、ウサギやハムスターなどのげっ歯類、インコやフクロウなどの鳥類、カメやヘビ・イグアナなどの爬虫類、メダカや金魚などの魚類もペットに入ります。
ただ、これらは犬や猫よりも少数であることから「一緒に避難できるのか分からない」ケースの方が多いです。ここでは全てのペットとの同行避難について解説しましょう。
全てのペットが同行避難の対象!ただし自治体によって異なるので注意
犬や猫だけでなく、げっ歯類や鳥類や爬虫類も同行避難が可能です。ただし、水槽が必要な魚類についてはポンプや温度管理に電気を使うため、同行避難は不可能な場合が多いです。
避難所ではペットは指定の場所に避難することとなり、家庭のように同じ空間で過ごすことはできません。また、自治体によって「避難所運営方法」が異なるため、爬虫類などの保管は断られるケースもあります。
そのため、災害が起きる前に自分のペットが避難できるのか、各自治体の防災担当課に問い合わせることをおすすめします。
同行避難とは避難所まで一緒に避難すること
ペットとの同行避難とは避難所までペットと一緒に避難できる意味であり、避難所内で一緒に生活が可能な訳ではありません。
このことをしっかり理解していないと、避難所に到着してから運営側とのトラブルに発展します。ご自身が避難する避難所が分かっているなら、以下の項目を予め確認しておくとよいです。
- 犬や猫以外のペットが避難可能であるか
- 犬の場合ペット専用係留所があるか
- 猫の場合自分でケージを持参する必要があるか
- ペットと同居避難できるテントを張ってよいか
- 大型犬の受入れは可能か
このような内容を自治体の防災担当課に確認しておくと、避難時に何が必要か分かります。特に秋田犬や土佐犬、シェパード、ドーベルマン、セント・バーナードなどの大型犬は、同行避難ができない自治体もあるので要注意です。
災害に飼い主が備えておく5つの対策
災害時にペットと同行避難するなら、普段から飼い主は家族として以下のことを備えておくべきです。
- ペットのしつけ
- ペットの迷子対策
- ペット用の防災用品や食料の備蓄
- 避難所までのルートの確認
- 避難先の検討
次からそれぞれの備えについて詳しく解説します。
ペットのしつけは普段から大切
災害時には人間だけでなくペットも緊張状態にあり、特に慣れない避難所ではパニックになるペットもいます。ある程度は仕方ないのですが、普段から避難所生活を意識したしつけが重要です。
ここでは、犬と猫のケースに分けて解説しましょう。
犬の場合
- 「待て・お座り・伏せ」などの基本的なしつけを身に付けさせる
- ケージやキャリーバッグを嫌がらないよう慣らしておく
- ほえないしつけを行う
- 人や動物に対して攻撃的にならないようしつける
- 排せつは決められた場所でできるようにしておく
- 狂犬病予防接種など法的なワクチン接種は必ず行う
- 寄生虫の予防や定期的な検査、駆除を受ける
- 去勢・不妊手術を行う
猫の場合
- ケージやキャリーバッグを嫌がらないよう慣らしておく
- 人や他の動物を怖がらないようにしておく
- 排せつは決められた場所でできるようにしておく
- 各種ワクチン接種を行う
- 寄生虫の予防や定期的な検査、駆除を受ける
- 去勢・不妊手術を行う
ペットの迷子対策・マイクロチップや名札など
同行避難中に、ペットがパニックになって逃げ出すことも珍しくありません。また、災害時に家を飛び出して行方不明になるケースもあります。
万が一そのような状況になった際に、飼い犬や飼い猫であることが分かるよう首輪や名札を付けるだけでなく、半永久的に識別可能なマイクロチップを装着しましょう。マイクロチップの装着や所有者情報の登録は2022年に義務化されています。
ペット用の防災用品や食料の備蓄
避難先でのペットの食料は原則として、飼い主が準備する必要があります。避難所では水は提供される可能性は高いですが、長期的な断水が起きるとペット用の飲み水は提供されないかもしれません。
また、食事はそれぞれのペットで異なるため、普段から食べている食料と同じものを備蓄しておきましょう。5日~7日分の食料と水を、ペット分として備蓄しておくようにします。そのほかにも、以下の物も備蓄しておきましょう。
- 予備の首輪やリード
- 食器
- ガムテープ(ケージの補修などに便利)
- ペットシーツ
- トイレ用品
- おもちゃ
- ペット専用のタオル
避難所までのルートの確認
ペットとの同行避難は予想以上に大変です。小型犬や猫はキャリーバッグに入れて避難しますが、結構重たいので避難所まで体力が持たないこともあります。その場合は、手さげタイプでなくリュックタイプのキャリーバッグを選ぶようにします。
自分たち家族の避難用品もあるため、実際にペットを連れて避難所までのルートを歩いて状況を確認しておきましょう。自宅から避難所までのルート上に、ブロック塀に囲まれた道などの危険な箇所があれば避ける必要があります。
また、キャリーバッグに入れて歩いているとペットが暴れることもあるので、慣らすためにも月に1回ほど避難訓練を実施することをおすすめします。
避難先の検討
全ての避難所で、ペットとの同行避難が可能ではありません。収容人員が少ない避難所では、ペットを受け入れるスペースがないこともあります。そのため、ペットと一緒に避難できる避難先の検討も重要です。
- 被災地外の親戚や知り合いの家に避難
- マイカーでの車中泊
- テントを張ってペットと一緒に避難
万が一の災害が起きた際に、普段からペットと一緒に避難する方法を検討しておきましょう。
避難所では動物がNGな人がいることも知っておこう
ペットと一緒に暮らしている方は、犬や猫、ウサギ、カメ、爬虫類など全て家族として認識している方が多いです。しかし、避難所はさまざまな人が集まる場所なので、アレルギーがある人や、動物が苦手な人もたくさんいます。
これまでの被災地でも「ペットを人間と同様に扱って欲しい」など、運営側に希望する家族も多くいました。しかし、あくまでも避難所内は「人間が暮らす場所」として設定されているため、ペットは専用スペースで暮らすこととなります。
他人に迷惑をかけないように飼い主同士が協力する
飼い主にとってペットは我が子ですが、同じ避難スペースにいるペットも同様に見てあげるのがよいそうです。中には避難時にペットフードを少しだけ持ち出して、既に食べつくしたペットもいるでしょう。
そうなると空腹でストレスが溜まり、吠えたり他のペットとケンカをしたりすることもあります。騒動が大きくなれば全てのペットを、避難所から離れた場所に隔離することになりかねません。
そうならないためにも飼い主同士がコミュニケーションを密にして、お互いに助け合うことが重要であり、避難所では次のようなことが有効です。
- ペットの会など飼い主同士が協力する組織をつくる
- ペットフードなど支援物資の情報共有を行う
- 災害ボランティアの支援を利用する
- ペット同士がケンカしないよう配置を考える
排せつ物は飼い主が責任をもって素早く処理する
ペットの避難所生活で最もトラブルになりやすいのが、ペットの排せつ物の処理です。排せつ物はペットの飼い主が処理することが原則で、放置することはルール違反になります。
長時間放置していると悪臭や衛生上の問題も発生するため、そのペットだけ隔離される可能性もあります。飼い主はできるだけペットに寄り添って、排せつ物の処理は素早く行うようにしましょう。
ヘビやイグアナなど特殊なペットは同行避難できない可能性が高い
基本的に同行避難できるペットは、犬や猫、鳥類など一般家庭で飼育される愛玩動物です。ただし、ヘビやイグアナなど特殊なペットは、同行避難の対象にならない可能性が高いです。
かといって、そのまま倒壊しかけの自宅に放置すれば餓死してしまうでしょう。また、飼育していた水槽などが破壊され、自力で逃げ出すことも考えられます。そうなればヘビなどが野生化して、人間への被害や周囲の生態系に影響を与えることも考えられます。
飼い主として災害時に同行避難ができないペットは、飼育しないか避難先を確保してから飼育を開始することが望ましいです。
まとめ
今回は災害時のペットとの同行避難や、普段からのしつけなどを詳しく解説しました。ペットは家族同然なので災害時には一緒に避難したいでしょう。しかし、避難所でのルールに従うため、普段通りのように一緒に生活はできません。
避難所では他人に迷惑をかけないように、普段からのしつけが重要です。ペット用の備蓄も必要であり、避難所では飼い主同士の協力も必要になります。最も重要なのは避難所がペットの同行避難が可能であるか、自治体の防災担当課に確認しておくことです。
災害が起きてからでは間に合わないため、記事を参考にペットとの避難をさまざまな角度からシミュレーションしておきましょう。