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海水浴やプール・川など、夏のレジャーのリスク!楽しく遊ぶためのポイントを解説
2024/07/19
夏本番を迎え、多くの人が海水浴やプール、川での水遊びを楽しみにしています。
しかしこれらの夏のレジャーには、さまざまなリスクが潜んでいることをご存知でしょうか?
本記事では、海とプール、川のそれぞれの魅力や危険性を比較しながら、安全に楽しむためのポイントを詳しく解説します。
さらに、SDGsの観点から見た海水浴とプールの比較まで、幅広く情報をお届けします。夏のレジャーを思う存分楽しむために、ぜひ参考にしてください。
目次
毎年夏には500人以上が水難事故に遭っている
まずは、夏場に起きる水難事故の実態を把握しておきましょう。
このグラフは「警察庁生活安全局生活安全企画課」が公開している「令和5年夏期における水難の概況」から抜粋したものです。
7~8月・2か月間の「海や河川」での水難事故の件数は、2019年(令和元年)~2023年(令和5年)までの5年間で、発生件数・水難者とも横ばいになっています。
しかしながら、発生件数はたった2か月で450件以上、水難者数に関しては560人以上と高い数値であることが分かります。
また、死者・行方不明者も毎年200人以上となっており、夏場の海水浴やプール、河川での水遊びには注意しないといけません。
海水浴の魅力とリスク
海水浴がもたらす素晴らしい体験と、同時に注意すべき危険性について詳しく見ていきましょう。
自然の中で楽しむレジャーだからこそ、その魅力を最大限に味わいつつ、安全に過ごすための知識が必要不可欠です。
海水浴の魅力を十分に理解し、潜在的なリスクに備えることで、より充実した夏のひとときを過ごすことが可能となります。
海水浴の魅力は自然との一体感
海水浴は、夏の代表的なレジャーの1つです。広大な砂浜、波の音、潮の香り、そして水平線まで続く青い海。これらの自然の要素が織りなす環境は、多くの人々を魅了します。
そこで海水浴の魅力を考えてみると、以下のようなものがあります
1.自然との一体感
海に浸かると、自然の一部となったような感覚を味わえます。
2.開放感
広い空間で思い切り遊べる開放感は、ストレス解消にも効果的です。
3.多様な遊び方
泳ぐだけでなく、サーフィンやシュノーケリングなど、さまざまな水上アクティビティを楽しめます。
4.健康増進
海水浴は全身運動となり、心身のリフレッシュにつながります。
5.思い出作り
家族や友人との楽しい思い出になります。
これらの魅力から、毎年多くの人が海水浴を楽しみにしています。しかし、その一方で注意すべきリスクも存在します。
海水浴のリスクと注意点
海水浴にはさまざまなリスクが潜んでいます。これらのリスクを認識し、適切な対策を取ることが重要です。
1.離岸流
海岸から沖に向かって流れる強い水流で、毎年多くの事故の原因となっています。
2.日射病・熱中症
強い日差しと高温多湿の環境は、体調不良のリスクを高めます。
3.海洋生物による危険
クラゲやウニなどによる刺傷や踏み抜きに注意が必要です。
4.水質汚染
海水の汚染により、皮膚トラブルや感染症のリスクがあります。
5.急な天候変化
突然の雷雨や強風は、海での事故につながる可能性があります。
6.遊泳能力の過信
自身の遊泳能力を過信し、深みに入ってしまうこともあります。
7.アルコール摂取
飲酒後の遊泳は判断力が低下し、重大な事故につながる可能性が高くなります。
海水浴でのこれらのリスクを軽減するためには、以下のような対策が効果的です。
- 遊泳禁止区域や注意事項を確認し必ず守る
- 監視員のいる海水浴場を選ぶ
- ライフジャケットの着用を検討する
- ラッシュガードやサーフハットなど、日射しから肌や頭を守るものを着用する
- 定期的に水分補給を行い、日陰で休憩を取る
- 海洋生物に注意し、必要に応じてマリンシューズを着用する
- 水質情報を事前に確認する
- 天気予報をチェックし、急な天候変化に備える
- 自身の泳ぐ力を過信せず、無理をしない
- 飲酒後の遊泳は絶対に避ける
これらの対策をしっかり守って、海水浴を満喫しましょう。
海水浴を楽しむための6つの知識
ここからは、海水浴を安全に楽しむための「海の特徴」を詳しく解説します。
先にお伝えしているリスクや注意点と重複する項目もありますが、それだけ重要なことだと捉えてくださいね。
離岸流
離岸流は予測できるとの情報もありますが、上空から海を見ることができる場合のみです。
海水浴場では海を上空から見ることはないため、離岸流を見つけることはできないといってよいでしょう。
また、年に数回しか海に訪れることがない人に、普通の波と離岸流を見分けることはむずかしいです。従って、海の中にいればいつ離岸流にはまるか分からないのが現状です。
離岸流は幅が約10~30メートルの狭い海域に発生する流れです。
もし沖に流された場合、落ち着いて岸と平行に泳いで離岸流から脱出しましょう。また、無理に泳がず楽な姿勢で浮かび、救助を待つのも有効な対策です。
戻り流れ
上の図のように、波打ち際が凹凸のある地形(カスプ地形と呼ばれます)では、波が陸上に遡上した後に海に戻る際に強い「戻り流れ」が発生することがあります。
そのため、波が高い時には海に近づかないように注意しましょう。
天気と潮の満ち引きなど
海に行く前には、天気や潮の満ち引きなどを事前に確認しておきましょう。遊泳中に天気が悪くなると、強風や落雷、高波などの危険が増すことがあります。
また、波が打ち寄せて通行できなくなる場所や、潮が引いているときは浅瀬でも、潮が満ちると歩いて帰れなくなる場所もあるため注意が必要です。
オフショア(陸風)とオンショア(海風)
海岸で吹く風には、オフショア(陸風)とオンショア(海風)の2種類があります。
オフショアは陸から海に向かって吹く風で、オンショアは海から陸に向かって吹く風です。昼間はオンショアが多いですが、気圧配置や地形によってはオフショアになることもあります。
オフショアが強いと、フロート遊具などが沖へ流されて岸に戻れなくなる可能性があるため、十分に注意が必要です。
このように、水に浮いている物は予想以上に風の影響を受けやすく、ちょっとした隙に流されることを理解しておきましょう。
海底の地形&波や潮の流れの変化
海底の地形では、突然深くなる場所や潮の満ち引きによって流れが速くなる場所があります。
足が届かなくなったり、戻れなくなったりして慌てることのないように、自分が泳いでいる場所の地形を把握しておきましょう。また、波や潮の流れは常に変化しているため、海の状況をよく観察することが大切です。
海水浴場でない場所では水質汚染が懸念される
海水浴場として認定されている遊泳場所は、開設前に自治体からの水質検査を受けて「適合」との認定を受けています。そのため、水質には問題なく誤って少し飲み込んでも健康面の心配はありません。
しかし、海水浴場でない海岸などで遊泳すると、もしかすると水質が汚染されている可能性があります。
海全体がきれいで問題ないとイメージされがちですが、残念ながら工場排水や赤潮など、さまざまな要因で海水が汚染されている地域もあります。そのため、立ち入り禁止区域や遊泳禁止区域はもちろん、水質検査が行われていない、海水浴場以外での水遊びは止めましょう。
プールの魅力とリスク
夏の暑さが厳しくなるにつれ、多くの人々がプールに足を運びます。清々しい水しぶきと爽やかな水の感触、そして管理された安全な環境。プールは年齢を問わず、多くの人々に愛される夏のレジャースポットです。
都市部でも気軽に訪れることができ、天候に左右されにくいプールは海水浴とはまた異なる魅力を持っています。しかし、一見安全に見えるプールにも、実はさまざまなリスクが潜んでいるのです。
多くの人が集まる場所だからこそ、知っておくべき注意点や危険性があります。ここでは、プールがもたらす楽しさとメリットを探りつつ、同時に認識しておくべきリスクについて詳しく解説します。
管理された環境であるプールの特性を理解し、その魅力を最大限に利用しながら、安全に楽しむための知識を身につけていきましょう。
海水浴とは異なるプールの魅力
プールは海水浴とは異なる魅力を持つ、夏のレジャースポットです。管理された環境で水遊びを楽しめるプールには、以下のような魅力があります。
1.安全性
監視員の配置や水深の管理など、安全面での配慮がされています。
2.アクセスのよさ
都市部にも多くあり、気軽に訪れることが可能です。
3.水質管理
塩素消毒などにより、衛生的な環境が保たれています。
4.多様な遊び方
ウォータースライダーやジャグジーなど、さまざまなアイテムを使って楽しめます。
5.天候に左右されにくい
屋内プールなら雨天時でも利用可能です。
6.水泳練習に適している
遊泳能力向上のための練習に適した環境です。
7.年齢を問わない
子供から高齢者まで、幅広い年齢層が楽しめます。
これらの特徴から、プールは海水浴とは異なる魅力を持つレジャースポットとして、高い人気を誇っています。
プールのリスクと注意点
プールは、海水浴で起きる離岸流や風力、波や海底の変化などのリスクがない管理された環境ではありますが、それでも以下のようなリスクが存在します。
1.溺水(できすい)事故
特に子供や泳ぎが得意でない人は注意が必要です。
2.転倒事故
プールサイドは滑りやすく、転倒のリスクがあります。
3.飛び込み事故
浅いプールでの飛び込みは、頭を怪我する危険があります。
4.感染症
多くの人が利用するため、感染症のリスクがあります。
5.日焼けや熱中症
屋外プールでは、強い日差しによる健康被害に注意が必要です。
6.水質トラブル
塩素濃度が高すぎると、目や皮膚への刺激となる可能性があります。
7.混雑によるストレス
繁忙期は非常に混雑し、ストレスを感じる場合があります。
プールで懸念されるこれらのリスクや注意点を軽減するためには、以下のような対策が効果的です。
- 子どもから目を離さない、泳げない人は浮き輪などを使用する
- プールサイドでは走らない、歩く際も注意する
- 飛び込み禁止の場所では絶対に飛び込まない
- シャワーを浴びてからプールに入る、他人の飛沫ができるだけ口に入らないよう気を付ける
- 焼け止めを塗る、定期的に日陰で休憩を取る
- ラッシュガードを着用する
- 目が痛くなったら、すぐにプールから上がる
- 混雑時は無理をせず、空いている時間帯を選ぶ
これらの注意点を守ることで、プールでの水遊びをより安全に楽しむことができます。
海水浴とプールとの比較を解説
ここでは、冒頭でもお伝えしているSDGsの観点から、安全面と環境への影響について、海水浴とプールを比較してみました。
安全面での比較
海水浴場 | プール | |
1. 監視体制 | ライフガードが配置されている海水浴場もあるが、広範囲をカバーするのは難しい | 常時監視員が配置されており、迅速な対応が可能 |
2. 水深管理 | 潮の満ち引きや地形により水深が変化し予測が難しい | 水深が一定 |
3. 水流 | 離岸流や潮流など、予測困難な水流がある | 人工的な水流はあっても、管理されている |
4. 天候の影響 | 天候変化の影響を直接受け、突然の荒天で危険になる可能性がある | 屋内プールなら天候の影響を受けにくい |
5. 海洋生物 | クラゲやウニなどの危険な生物がいる可能性がある | 海洋生物による危険はない |
これらの比較から、一般的にプールの方が安全面では優れているといえますが、それぞれの特性を理解し適切な注意を払うことが重要です。
環境への影響の比較
環境への影響という観点から、海水浴とプールを比較すると以下のような違いがあります。
海水浴場 | プール | |
1. エネルギー消費 | 自然環境を利用するため、エネルギー消費は少ない | 水の循環や温度管理に多くのエネルギーを使用する |
2. 水資源 | 海水を直接利用するため、淡水資源への負荷は少ない | 大量の淡水を使用し、定期的な水の入れ替えが必要 |
3. 化学物質の使用 | 基本的に化学物質は使用しない | 塩素などの消毒剤を使用する |
4. 生態系への影響 | 過剰な利用は海洋生態系に悪影響を与える可能性がある | 閉鎖環境のため、直接的な生態系への影響は少ない |
5. ゴミ問題 | 不適切な廃棄物処理が海洋汚染につながる可能性がある | 管理された環境でゴミ処理が行われる |
6. 交通による環境負荷 | 遠方の海水浴場へ行く場合、交通手段による環境負荷が大きい | 地域のプールなら、交通による環境負荷は比較的小さい |
環境への影響を考慮すると、海水浴は自然環境を直接利用するため、適切な利用であれば環境負荷は小さいといえます。
一方、プールは人工的な環境を維持するためのエネルギーや資源を必要としますが、利用者の環境意識次第で負荷を軽減することが可能です。
川での水遊びの魅力とリスク
海水浴やプール以外にも、川での水遊びも夏のレジャーの定番になっています。川ではテントを張ってのキャンプや、バーベキューを楽しむ人も多いです。
ここでは、川での水遊びの魅力とリスクについて解説します。
川での水遊びの魅力
1.自然との触れ合い
周囲の緑や生き物を観察したり触れ合うことができます。
2.水質のよさ
川には流れがあるため、海やプールと比べて水質が良好な場合が多いです。特に上流域では、きれいな水で遊ぶことができます。
3.涼しさ
山間部を流れる川は水温が低く、真夏の暑さをしのぐのに最適です。
4.多様な遊び方
川では水遊びだけでなく、魚釣りや川原でのバーベキューなど、さまざまなアクティビティを楽しめます。
5.混雑の少なさ
人気の海水浴場やプールと比べ、川は比較的空いていることが多くゆったりと過ごせます。
このように、ゆったりと自然の中でさまざまな遊び方を楽しめるのが、川での水遊びの魅力といえるでしょう。
川での水遊びのリスクや注意点
川での水遊びにも、以下のようなリスクや注意点が存在します。特に、バーベキューは禁止されている個所が多いため、予め可能であるか確認が必要です。
1.バーベキュー禁止区域が多い
川原でのバーベキューは禁止されている場所が多いため、条例によっては罰金を科せられる場合もあります。
また、地面への直火による「たき火」はマナー違反であり、食器などを川で洗うこともNGです。川原でバーベキューをするなら、許可された場所でルールをしっかり守りましょう。
2.急な増水
雨が降ると急激に水量が増え、水位が上昇する危険があります。特に上流で雨が降っている場合、下流では晴れていても突然増水することがあります。
3.強い流れ
川の流れは場所によって強くなることがあり、特に子供や泳ぎが得意でない人は流されるリスクがあります。
4.水中の障害物
川底には大きな石や流木などがあり、これらに足を取られたり、ぶつかったりする危険があります。
5.水深の変化
川の水深は、場所によって大きく変わります。突然深くなる場所もあり、注意が必要です。
6.低体温症
山間部の川は水温が低いため、長時間水に浸かっていると体温が奪われ、低体温症のリスクがあります。
7.感染症
川の水は完全に清潔とは限らず、時に有害な物質や微生物が含まれている可能性があります。傷口から感染したり、誤って飲み込んだりすることで、感染症にかかるリスクがあります。
8.監視員の不在
多くの川には、海水浴場やプールのような監視員がいません。そのため、緊急時の対応が遅れる可能性があります。
まとめ
今回は夏のレジャーの定番である「海水浴」と「プール」「川での水遊び」について、魅力やそれぞれに潜むリスクなどを、さまざまな角度から解説しました。それぞれ魅力があり、楽しみ方は人それぞれです。
しかし、どの水遊びにもリスクや注意点が存在します。冒頭にもお伝えしたとおり、毎年海や川での遭難事故が起きており、多くの人が死亡または行方不明となっています。
どの水遊びもリスクを把握しルールを守っていれば、楽しいものになるはずです。本記事を参考に、楽しい夏を過ごしましょう。