災コラム

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お役立ちコラムや皆様の体験談など

豪雨だけじゃない落雷にも要注意!状況別の雷対策を徹底解説

2024/08/09

雷
出典:PhotoAC

近年では大雨だけでなく、落雷にも注意が必要な時代になってきました。

2024年4月3日には宮崎県宮崎市の大学のグラウンドに落雷があり、高校生18人が救急搬送されています。

雷の予兆がない場合はどうすることもできない事故といえますが、最近では「雷注意報」の発表がされるため、雨が降っていなくても警戒することができます。

今回は、さまざまなシーンによる雷対策を解説しますので、ぜひ参考にして安全を確保してください。

そもそも落雷はなぜ起きるのか?

積乱雲 「あられ」や「氷晶(小さな氷の粒)」が、この中で衝突している
出典:気象庁 防災啓発ビデオ「急な大雨・雷・竜巻から身を守ろう!」の動画を一部加工

まず、落雷が発生するメカニズムを説明します。積乱雲の中で「あられ」や「氷晶(小さな氷の粒)」が互いに衝突することで静電気が生じ、雲内にプラスとマイナスの電気が蓄積されます。

この電気が一定の量を超えると、雲の内部や地面に向けて放電が起こり、それが雷となります。つまり、積乱雲が発生すると落雷が起きる確率が高くなります。

人間の身体は雷の電流を通しやすい

雷に打たれる人
出典:イラストAC

落雷に注意しないといけない理由は、私たち人間の身体は雷の電流を通しやすい性質を持っているからです。

人体に雷が直撃または間接的に電流が流れると、以下のような症状が起きてしまい、最悪の場合は死に至るケースもあります。

  • 心肺停止(心臓の停止と呼吸の停止)
  • 熱傷(やけど)
  • 意識障害
  • 鼓膜穿孔(こまくせんこう)
  • その他、神経痛や知覚異常など

熱傷(やけど)の場合の多くは軽症で早期に治癒するといわれており、電流が流れたショックで一時的な意識障害も多く見られます。

ただ、近くに落雷があった場合は、爆風などによる鼓膜穿孔(こまくせんこう/鼓膜が破れたといわれる状態)に陥ります。

最も怖いのは、雷の直撃や木などからの側撃によって、大電流が体内を流れることで、多くは心肺停止となり、命を落としてしまいます。

人からの側撃 木からの側撃
出典:雷(らい)ぶらり

グラウンドやゴルフ場など、開けた場所では確実に退避すること!

出典:PhotoAC

冒頭にお伝えした宮崎市の落雷事故では、10kmほど離れた雷雲から雷が落ちたようです。

専門家によると、数キロ~10キロほど離れた場所で雷雲が発生している場合でも、グラウンドやゴルフ場、砂浜など、開けた場所にいるなら確実に退避するようにいわれています。

雨上がりや雨が降っていなくても大丈夫と思わない

重要なのは「雷=雨」または「ゴロゴロ音=雷」と思い込まないことです。雨が降っているから雷が起こるのではなく、大雨が止んだ後でも落雷が起きることは珍しくありません。

また、一般的には落雷は、ゴロゴロと独特の音が空から聞こえたら要注意と思われがちですが、ゴロゴロと雷鳴が聞こえる前に1発で雷が直撃した事例もあります。グラウンドやゴルフ場など開けた場所で、雨が降りそうな天候や雷注意報が発表されたら、鉄筋コンクリートの建物やクラブハウスに避難しましょう。

避難する場所がない場合!低い体勢をとる

避難できる場所がないときは 頭をなるべく低くしてしゃがむ 耳をふさぐ 爪先立ちでかかとをつけた姿勢を保つ
出典:tenki.jp 雷の危険から避難するときは

「雷に遭遇したら避難しましょう!」といわれても、グラウンドが広く周囲に避難できる場所がないケースも多いです。また、ゴルフ場でもホールによっては、クラブハウスまで遠いこともあり得ます。

そんな場所で急な雨やゴロゴロと雷が鳴っている場合は、なるべく低い姿勢をとるなど次の行動が有効です。

  • 頭をなるべく低くしてしゃがみこむ
  • 耳をふさぐ
  • 靴の両かかと同士を接触させ、つま先立ちで姿勢を保つ
  • 地面に寝ころばない(特に腹ばい)

キャンプ中の雷はテントから素早く脱出

NG!
出典:イラストAC

夏のレジャーの定番といえばキャンプですが、できるだけ施設の整ったキャンプ場で楽しみましょう。誰もいない河原などは、火を使うこと自体がNGの場所が多く、上流でゲリラ雷雨が起きると一気に増水して流される危険が高くなります。

では、設備の整ったキャンプ場で落雷から身を守るためには、どうすればよいでしょう。

テントの中は安全ではない

急な大雨に見舞われたりゴロゴロと雷鳴が聞えたりした場合は、急いでテントから脱出しましょう。ポール式のテントの場合は雷がポールに直撃する可能性が高くなります。

最近ではポールが必要ないテントもありますが、キャンプ場の多くは周辺に高い木があることが多く、木に直撃した落雷からそばのテント内に放電する「側撃雷」に襲われるケースもあります。

避難先は車や管理棟

近くに車があれば、車の中に逃げ込めば雷から身を守れます。もしも、車がない場合は管理棟の中に避難しましょう。

雷に対しての間違った知識

これはキャンプに限ったことではありませんが、昔からの都市伝説のような雷時に対する間違った知識がまだ存在しています。

  • 雷が鳴ったら身に着けている金属類を外す
  • 長靴やゴム製のレインコートをまとえば大丈夫
  • 傘の先や持ち手がプラスチック製なら使っても大丈夫

これらは全く根拠のない知識です。まず貴金属は身に着けていても、それをめがけて雷は落ちてきませんから外す必要はありません。

また、ゴム製品で体中をカバーすれば大丈夫との情報もありますが、条件が揃えばどんな格好をしていても雷は落ちてきます。最後に傘ですが、どんな傘でも先端は頭上より高い位置になるため雷落の危険がある時にはさしてはいけません。

家のなかも完全に安全ではない

嵐

雨が降り続き、雷が鳴り響く日でも、多くの方は家の中にいれば安全だと考えがちです。しかし、実際には屋内でも雷の脅威から完全に逃れることはできません。

近くに落雷があった場合、建物や家電製品に深刻な被害がおよぶ可能性があります。雷のエネルギーは想像を超える威力を持つため、家に直撃しなくても電線や通信線を通じて家庭内に侵入する危険性があります。

屋内での雷被害の状況

雷が近くに落ちた場合、以下のような被害が発生する可能性があります。

  • 屋根への直撃による損傷や火災
  • 落雷の衝撃による窓ガラスの破損
  • 電化製品の故障
  • 感電事故

このような被害は、直接の落雷だけでなく近隣への落雷でも起こり得ます。

家電製品が被害を受けるメカニズム

雷の影響で家電製品が故障する主な原因は「誘導雷」と「逆流雷」です。

  • 誘導雷:送電線や通信線を通じて雷サージが流入
  • 逆流雷:地面の電位上昇によりアースを通じて雷サージが侵入

雷サージとは、雷によって通信線や電源線などに発生する、パルス状の過電流や過電圧のことです。以上の現象により、通常の家庭用電圧をはるかに超える電流が家電製品に流れ込み、故障の原因となります。

屋内での雷対策

家の中での雷被害を防ぐために、以下の対策が効果的です。

避雷器の設置・分電盤や電源タップに取り付け、異常高圧電流を遮断
・各流入経路(電源、アース、通信線など)に対応した製品を選択
電化製品の電源管理・雷が近づいた際はコンセントを抜く
・使用していない機器は普段からコンセントを抜いておく
データのバックアップ・パソコンなどの重要データは定期的にバックアップを取る
火災保険や火災共済への加入・万が一の被害に備え、適切な保険や共済に加入する

これらの対策を組み合わせることで、屋内での雷被害リスクを大幅に軽減できます。避雷器の設置は費用がかかりますが、そのほかの方法は問題なく行えるはずです。

特に火災保険については、雷だけでなく浸水被害や土砂災害などにも有効なので、必ず加入しておきましょう。念のため、全ての電気器具・天井・壁から1m以上離れれば更に安全です。

外出中の雷から身を守る「保護範囲」を知っておこう!

雷を見る人
出典:イラストAC

これまで解説してきたグラウンドやゴルフ場、砂浜、キャンプ場は、目的を持って出かける場所です。また、自宅の中では電流が侵入してきても、適切な対策をしていれば人体への影響はほぼないといってよいでしょう。

しかし、買い物や通勤通学の途中など一般的な外出中に、雷鳴が聞えたり遠くで稲光を見かけたりした場合も、安全な場所に避難しないといけません。ここでは、外出中に身を守る「保護範囲」について解説します。

ベストは頑丈なビルなどに逃げること

買い物中などに雷に遭遇したなら、ビルなど頑丈な建物内に避難するのがベストです。商業施設や銀行、郵便局、コンビニなどに迷わず逃げ込みましょう。

保護範囲とは電柱や電柱間の中央にある

保護範囲 4m以上離れる
出典:気象庁 雷から身を守るには

帰宅途中や通勤通学途中で、近くにビルなどがないシーンも多くあります。近くに安全な施設がない場合は、電柱・煙突・鉄塔・建築物などの高い物体のてっぺんを、45度以上の角度で見上げる範囲で、その物体から4m以上離れたところが「保護範囲」となりここに退避します。

ただし、高い木は電流を通しにくく、近くにいる人間には側撃がくる可能性が高いため利用不可です。逆に最低でも木の幹・枝・葉全てから2m以上離れることが重要です。

電柱と電柱の間

高さ30m以下の電線(主に配電線)の保護範囲
出典:雷(らい)ぶらり

このように一般的な電柱間の電線の中央部分は、雷から身を守る保護範囲になります。上図では高さを20mとしていますが、一般的に電柱の高さは8m~10mなので、保護範囲の幅は16m~20mとなります。

鉄塔と鉄塔の間

高さ30m以上の電線(主に送電線)の保護範囲
出典:雷(らい)ぶらり

このパターンの保護範囲は鉄塔間になるため、建物などの障害物が多くなります。しかし、覚えておくとイザという時に便利です。

急に発生する雷から身を守るタイムライン

(例)14時から16時に戸外で行動する場合
出典:気象庁 急な大雨や雷・竜巻から身を守るために

ここでは、気象庁が推奨する「急に発生する雷から身を守るタイムライン」を紹介します。どのタイミングでどんな気象情報を確認したらよいか、翌日の午後に屋外で行動する場合は、上記の行動が有効とされています。

前日の天気予報で「雷を伴う」や「大気の状態が不安定」などの予報があれば、その時間の外出は控えた方がよいでしょう。前日の天気予報では異常がなかったので外出した際に、ゲリラ雷雨や雷鳴が聞えたなら「雷ナウキャスト」で状況を確認しましょう。

最新の雷ナウキャストはここから確認可能です。
https://www.jma.go.jp/bosai/nowc/#colordepth:deep/elements:thns/zoom:5/lat:34.560859/lon:138.999023

まとめ

今回は、雷のメカニズムやシーンごとの雷対策を解説しました。近年では昔のような「たまに起きる落雷」ではなく「頻繁に起きる落雷」に変わってきています。

ゲリラ雷雨や前線を伴う大雨時には、局地的に1日で数千回もの落雷が発生しています。具体的にはフランクリン・ジャパンが提供する全国雷観測ネットワークによると、7月6日の関東地方の落雷総数は約8,300回にものぼっています。

これだけ多くの落雷が発生すれば、油断していると直撃もしくは側撃に遭う確率がアップします。命に関わる落雷を防ぐためにも、本記事の情報を参考に雷への対策を行いましょう。