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停電でも寒さ知らずの防災対策!電気がなくても使える暖房器具と活用法

2025/02/14

ストーブ
出典:PhotoAC

突然起きる災害や思わぬ事故による真冬の停電は、命に関わる危険な状況を引き起こします。しかし、適切な準備と知識があれば、停電による寒さをしのぐことが可能です。

本記事では停電時でも利用可能な暖房器具や、効果的な暖房対策を紹介します。

カセット式のガスストーブや石油ストーブなど、電気を必要としない暖房器具や、キャンプ用の寝袋の活用、アルミシートを使用した保温テクニックなど、実践で役立つアイデアを紹介します。

災害や事故による突然の停電でも、寒さ知らずの防災対策をぜひ参考にしてください。

真冬に停電が起きる原因とは|主に自然災害による

雪景色
出典:PhotoAC

寒い冬に突然停電が起きると、日常生活に大きく影響することは間違いないでしょう。

特に今期のように最強の寒波の中で停電が起きれば、電気に頼った暖房器具は使用不可能となり、最悪のケースでは命に関わる状況に陥るかもしれません。

そのような真冬に起きる停電の原因はさまざまですが、多くが自然災害で中には電力設備のトラブルも含まれます。

そこでここでは、寒い冬に起きる停電の特徴や原因について解説します。

寒い冬に起きる自然災害が原因

寒い冬には大雪警報など災害級の豪雪によって、広範囲に停電が起きる可能性が高くなります。

実際に今期最大かつ最長の寒波による大雪が原因で、岐阜県では2月8日時点で約1,900戸が停電しており、解消に数日かかるとのこと。また、日本海側では冬場には雷が多く発生し、電力施設への落雷が原因で停電するケースも見られます。

大雪時の3つの停電パターン

ここでは、大雪時に起きる停電のパターンを3つ紹介します。

  • 「着雪」による電線の切断
  • スリートジャンプによるショート
  • ギャロッピング現象

「着雪」による電線の切断とは、湿った重たい雪が電線に付着し、雪の重みで切断される事故のことです。また、樹木に積もった雪の重みに耐えきれず、倒れた木によって電柱や電線を破壊して停電が起きるケースもあります。

スリートジャンプとは電線に付着した雪が集中して落ちる際に、反動で電線が跳ね上る状況のことです。このときに跳ね上った電線が近くの電線に接触し、ショートすることで停電が起こります。

ギャロッピングとは着雪した電線が、風の影響で大きく移動する現象です。ブラブラと揺れているため、電線同士が接触しショートして停電が起こります。

電力過多による漏電トラブル

寒さが厳しくなるとエアコンだけでなく電気ストーブやファンヒーターなど、電気を使用する暖房器具を多く使うこととなります。

そうなると電力消費量が急激に上昇し、安全装置であるブレーカーが落ちて家庭内が停電します。このような場合には、使用している暖房器具のコンセントを抜いてブレーカーをONにすれば停電は解消します。

また、結露による水滴がコンセントに浸み込みショートし、漏電するケースもあるので、室内で結露が発生したらこまめに拭き取りましょう。

冬の停電時には風邪や低体温症に要注意

重要ポイント
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寒い冬に起きる停電は、寒さに起因する健康被害や日常生活への影響が大きくなるため特に要注意です。

電気を利用する暖房器具が使用不能になると、大げさではなく低体温症などの健康被害が危惧されます。

実際にNHKニュースなどでは「低体温症」への注意喚起が報じられており、特に高齢者は要注意です。

風邪ひきなど疾病に注意

既にお伝えしているとおり、冬の停電は大雪や雷、強風などの自然現象が主な原因です。

電気を必要とする暖房器具が使用不能となり、停電が長引くと体力が奪われ免疫力も低下。その結果、風邪やその他の疾病にかかりやすくなるので注意が必要です。

低体温症注意とニュースも報じている

低体温症は、体温が35°C以下に低下した状態のことで「寒冷障害」とも呼ばれており、特に高齢者の方は冬季の停電は要注意です。

住宅内であっても暖房器具が使用できない寒い状況が続くと、低体温症へのリスクが高まり、最悪の場合死亡につながることもあります。

予防策としては後述する「停電時に利用できる暖房器具」の用意や「電気に頼らない暖房対策」を参考にしてください。

停電時に使える主な暖房器具3点

ストーブ
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停電時に使える暖房器具は、電気を使用しないで暖かさを確保できる重要な暖房アイテムです。

代表的なのは、カセット式のガスストーブ・石油ストーブ・電池式灯油ヒーターで、それぞれに特徴があります。これらの暖房器具は、災害時や突然起きる停電時に、暖かい快適な環境を提供します。

ここでは、各暖房器具の特徴と使用方法や注意点を、詳しく見ていきましょう。

カセット式のガスストーブの特徴と使用方法

カセット式のガスストーブは、持ち運びができて簡単に使用できる暖房器具です。電源が不要で屋内外での使用が可能で、スイッチを入れればすぐに暖かくなります。

また、100円ショップなどで手軽にカセットボンベを入手でき、コンパクトなため格納にも場所を取りません。ただし、使用時は換気が必須です。また、カセットボンベ1本あたりの使用時間が2、3時間程度なので、長時間の使用には適していません。

使用する際は部屋に応じた適切なサイズのタイプを選び、安全性の高いブランドを選択しましょう。

石油ストーブのメリットと注意点

石油ストーブは言わずもがな、高い暖房能力が特徴です。灯油があれば電源がなくとも使用可能で、停電時にも重宝します。

ただやはり使用時には換気が必要で、燃料の補給は室外で行い、定期的なメンテナンスが必要です。また、火災のリスクが高い器具であるため、周囲に可燃物がない状態で使用するよう注意しましょう。

選ぶ際には、安全装置の有無や使用する場所に合わせた暖房能力、燃料タンクの容量などを考慮するとよいです。

電池式灯油ヒーターの選び方

電池式灯油ヒーターは、灯油を燃焼させて温風を吹き出す石油ファンヒーターで、乾電池を使用する停電時に便利な暖房器具です。

先の石油ストーブよりも小型であり、安全性と使いやすさのバランスが取れたモデルを選ぶことが大切です。また、安全装置の有無や使いやすさも選択の基準となり、コンパクトで持ち運びしやすいモデルは、避難時にも便利です。

こちらも使用時は換気を忘れずに行い、灯油の補給は必ず消火してから行いましょう。電池の残量にも注意が必要で、予備の電池を用意しておくことをおすすめします。

電気を必要としない室内における4つの防寒対策

毛布をかぶる女性
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寒い季節における停電時の備えとして、電気を使わない防寒対策が有効です。

ここでは、電気を使わずに快適に過ごすための、以下の4つの防寒対策を紹介します。

1:暖かい素材の防寒着を選ぶ

防寒着を選ぶ際は保温性に優れた暖かい素材である、ダウンやフリース、ウールなどを選びます。

特に近年は、薄くても高い保温効果を持つ新しい素材も登場しており、重ね着しやすく風を通しにくい防寒着もあります。

スムーズな体の動きを実現するフィット感と、冷え対策に重要な3つの首と呼ばれている、首元や手首、足首などから熱が逃げないよう、しっかりカバーできる防寒着が最適です。

2:昔ながらの湯たんぽ&使い捨てカイロ

昔ながらの暖房器具である湯たんぽは、就寝時の足元や腰回りの保温に最適。湯たんぽをタオルや布などでカバーすることで、火傷を防ぎつつ長時間温かさを保てます。

一方、使い捨てカイロは携帯性に優れ外出時に重宝しますが、寒い冬の停電時にも活躍します。基本的に服の内側に貼った周囲を、効果的に温める便利アイテムです。

特に、首の後ろや腰、足のくるぶしなど、太い血管やツボのある部位に使用すると効果的です。

これら2つのアイテムを組み合わせることで、停電時でも比較的長い時間保温効果が得られます。ただし、低温火傷に注意する必要もあり、過剰な使用は控えることも大切です。

3:キャンプ用の寝袋で暖をとれる

防災グッズとしてキャンプ用の寝袋がおすすめで、特に寝袋から両手・両足が出せるタイプは寒い時期の停電時に効果的です。

例えば、Bears Rockが提供する「-15℃マミー型センタージッパー寝袋」は、オールシーズン利用可能で寝袋から両手・両足を出すことが可能。そのため、就寝用だけでなく停電中の最強の防寒着となります。

もちろん、キャンプ用なので、室内で利用すれば寒さに負けない暖房アイテムとして活躍します。

4:アルミシートを用いた暖房方法

アルミシート(エマージェンシーシート)は、軽量で保温性に優れさまざまな場面で活用でき便利です。例えば、寝具の下に敷くことで、体温を反射して熱を逃がさないようにできます。

また、室内から窓際に貼れば熱を逃がさず、外からの冷気もいくらか遮断できます。

災害などの緊急時には体全体を覆うように被ると、体温低下を防ぐことも可能。エマージェンシーシートとして100円ショップでも手に入る多用途なアルミシートは、防寒対策の強力な味方となります。

ただし、アルミシート特有の「ガサガサ」という音が発生するので、音に敏感な方には不向きになるかもしれません。

冬の節電テクニック

節電
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寒い冬季は暖房機器の使用が増え電気代が高くなりがちですが、適切な対策を講じることで、快適さを維持しながら電力消費を抑えることが可能です。

ここでは、家庭で簡単に実践できる冬の節電テクニックをいくつか紹介します。これらの方法を組み合わせることで、効果的に電気代を節約し、環境にも優しい生活を送ることができるでしょう。

エアコンの適切な温度設定と使用法

エアコンは冬の暖房に欠かせませんが、適切な使用法で大幅な節電が可能です。室温は20℃を目安に設定し、それ以上の暖房は控えましょう。

また、エアコンの風向きを下向きにすると、暖かい空気が効率よく循環します。さらに、定期的なフィルター清掃も重要で、汚れたフィルターは電力効率を低下させるため、2週間に1回程度の清掃がおすすめです。

寝る前は就寝モードを活用すれば、体感温度を保ちながら消費電力を抑えられます。

冷蔵庫の温度調整による省エネ

冷蔵庫は24時間稼働し続けるため、わずかな設定変更でも大きな節電効果が期待できます。

冷蔵室の温度設定は「中」または「弱」に調整し、冷凍室は「中」程度で十分です。また、詰め込みすぎは冷気の循環を妨げるので、7割程度の量を目安にしましょう。

ドアの開閉は素早く行い、熱い食品は冷ましてから入れることも大切です。さらに、冷蔵庫の背面や側面は壁から少し離して設置すると、放熱効率が上がり消費電力の削減につながります。

トイレの便座温度設定の見直し

温水洗浄便座は快適な反面、意外と電力を消費します。便座の温度設定を1~2度下げるだけでも、年間で大きな節電効果が得られます。

また、使用しない時間帯は温度設定を「切」にするか、タイマー機能を活用して自動でOFF/ONするように設定しましょう。

便座カバーを使用すると保温効果が高まり、さらなる節電につながります。洗浄水の温度も適度に下げることで、快適さを損なわずに電力消費を抑えられます。

窓の断熱対策と効果

窓からの熱損失は室内の温度低下の主な原因となるため、断熱カーテンや厚手のカーテンを使用することで暖房効率の大幅アップが可能。また、窓ガラスに断熱シートを貼ることも効果的です。

二重窓や内窓の設置はさらに高い断熱効果をもたらし、長期的には大きな節電につながります。夜間はカーテンを閉め、日中は日光を取り入れることで、自然の熱を効果的に利用できます。

日頃からの備えと心構え

防災
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災害はいつ起こるかわかりません!日頃からの備えと適切な心構えがイザという時の被害を最小限に抑え、迅速な対応を可能にします。

防災グッズの準備・地域との連携・そして定期的な訓練参加が重要です。

防災グッズの定期的な点検と更新

防災グッズは緊急時に命を守る重要なツールですが、準備しただけでは不十分です。

定期的な点検と更新が欠かせませんし、使い方が分からなければ本末転倒といえるでしょう。まずは、防災グッズの適切な使用方法を把握した上で、食料や飲料水の賞味期限チェック・電池の交換・医薬品の補充などを行いましょう。

また、季節に応じた衣類や必需品の見直しも重要です。家族構成や生活環境の変化に合わせて、グッズの内容を適宜調整することで、より効果的な防災準備が可能となります。

少なくとも年に2回は点検を行い、常に最新の状態を保つよう心がけることをおすすめします。

近隣コミュニティとの協力体制構築

災害時には近隣住民との協力が、生存率を大きく左右します。日頃から挨拶を交わすなどコミュニケーションを取ることで、緊急時にスムーズな協力体制を築くことが可能です。

地域の防災マップの作成や、避難経路の確認を共同で行うのも効果的です。また、高齢者や障がい者など、支援が必要な方々の把握と支援計画の策定も重要です。

自治会などによる定期的な防災会議や情報交換会に参加し、地域全体の防災意識を高めていくことで、より強固な協力体制が構築できるでしょう。互いに助け合える関係性を築くことが、地域の防災力向上につながります。

防災訓練への参加の重要性

防災訓練は実際の災害時に、冷静に行動するための重要な準備です。地域や職場で行われる訓練に積極的に参加すれば、避難経路の確認・消火器の使用方法・応急処置の技術など、実践的なスキルを身につけられます。

また、訓練を通じて地域住民や、同僚との連携を深めることも可能です。さらに、訓練後の反省会では改善点や新たな課題を見出すことができ、より効果的な防災対策の立案につながります。

定期的な参加により知識と経験を蓄積し、災害時の適切な判断力と行動力を養うことができるでしょう。

まとめ

冬の停電は寒さと暗闇が重なり特に厳しい状況をもたらしますが、適切な準備と知識があれば困難な状況を乗り越えることが可能です。

また、災害時には近隣住民との協力が必要なケースも多いため、普段からコミュニケーションをとれる環境であることが重要です。

本記事の内容を参考に、冬季に起きる災害や停電時の対応、電気を使わず暖をとる準備を行っておきましょう。

栗栖 成之

1963年広島県呉市生まれ。現在は兵庫県に在住し、1995年阪神淡路大震災を経験。
2014年からWEBライターを開始して、執筆した記事は3,000以上。
2017年に防災士を取得し、現在防災関連の記事も多数執筆中!