災コラム

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テント避難する際の備えは食料とトイレが重要!選び方を詳しく解説

2022/06/30

最近では災害時に、テント避難を選択する方も増えてきています。確かに、避難所よりもプライバシーは確保されますし、避難所内のルールなどに縛られることなく、自由な避難生活を送ることができるメリットは大きいです。

ただし、テント避難をするならそれなりの備えをしておかないと、自由どころか苦しい生活を送るかも知れないのです。

そこで、テント避難で必須となる備えについて詳しく解説します。

食料はレトルトや缶詰がおすすめ!キャンプ飯はNG

「テントで避難するってキャンプ気分でいいね!」と、軽く考えてはダメです。避難所への避難・自宅で避難・テントで避難。この3つの避難方法で最も過酷になるのが、テント避難なのです。

テント村には炊き出しがあるけど、そうでない場合は自炊が基本

2016年(平成28年)4月に発生した熊本地震でのテント避難では、陸上競技場が提供されテント村として開設。食事も炊き出しや配給があり、問題なく避難生活を送れています。

これは、行政がテント村を避難所として認めたことと、ボランティアのサポートがあったからこそ、安全で苦のないテント避難ができたのです。

一方で、個人でテント避難をする場合は、食事は基本自炊です。できるだけ簡単にできるレトルト食品や缶詰を主体にすると、手間もかからず栄養バランスが取れた食事ができます。

「テント=キャンプ」と思い、たき火でキャンプ飯!なんてことは災害時には不可能なので、諦めましょう。

備える食料は最低3日×家族分!できれば1週間分が理想

テント避難や自宅避難を選択した場合は、最低3日分の食料と飲料水を備蓄しておく必要があります。できれば、1週間分×家族が理想です。

ところでいきなり質問ですが、1週間分の備蓄が必要といわれている理由をご存じですか?

それは南海トラフ巨大地震で被災した際には、被災地域が広範囲となるため「支援物資が届くまでに1週間はかかるだろう」と、予測されているからです。

実際には起きてみないと分からないことですが、自宅避難なら多めに備えておくことはできるので、できるだけストックしておくことをおすすめします。

テント避難の場合は、設営地まで車で移動できるか、徒歩で移動するかによって運べる量が異なってきます。なので、テント避難を選んだ方は設営地までの移動手段によって、備蓄量を考慮する必要があります。

備えておくレトルトや缶詰は普段の買足しでOK

では、備えておく食料や飲料水の購入方法ですが、よくネットショップなどで販売されている「防災用備蓄品」などを購入しなくても大丈夫です。レトルト食品や缶詰は、いつも買い物するスーパーで購入できますから、日常の買い物で買い足しておくだけで十分なのです。

今ではカレーだけでも色んな種類がありますし、野菜のうま煮やひじき煮、切り干し大根やポトフなど、レトルトでもさまざまな野菜を摂取することが可能です。

肉類も、鶏肉や牛肉のレトルトや缶詰を購入できますし、魚はみなさんご存じのサバ缶があり、みそ味や水煮、オリーブオイル漬けなど色んな味を楽しめます。

備蓄のポイントは、好きな食べ物を購入しておくことです。避難生活では緊張状態にありますから、せめて好きなものを食べて精神的なストレスを和らげることが大切です。

飲料水は本当に3ℓ必要?純粋な飲み水は1ℓでも可能

防災士として講演した際によく聞かれるのが「大人1日3ℓが必要って本当ですか?」との質問です。いつも同じ回答をするのですが「純粋に飲み水だけなら1ℓでも大丈夫」です。

政府が推奨している「大人1人1日3ℓ」の根拠は、「飲料水としての目安」となっていて、レトルト食品を温める水も含まれているともいわれているのです。

実際に食事の時には、食品から水分を摂取していますし、普段から3ℓの水を飲んでいるか?と聞かれると「YES!」と、回答する人は少ないはずです。

なので、純粋に飲み水として備蓄するなら1日1ℓが目安で問題ないです。たくさんある分には困らないので、備蓄する場所があるなら多めの備蓄が好ましいですね。

ペットボトルは500㎖サイズが衛生的!野菜ジュースも併せて備蓄するとベスト

そして備蓄する水のペットボトルは、2ℓサイズでなく、500㎖サイズがいいですよ。

なぜかというと、一度に2ℓのペットボトルを飲み干すことは、普通はあり得ません。なので、余った水に菌が繁殖するケースも考えられます。また、コップで飲むには問題ないとして回し飲みをした際には、特に菌が繁殖しやすくなるのです。

500㎖サイズなら1人専用のペットボトルとなりますし、飲み干すまでの時間が短いので衛生的となります。

さらには、水だけでなくパックの野菜ジュースなども併せて備蓄しておくと、水分と栄養を一緒に取れるので有効です。inゼリーのようなビタミン飲料も、常温保存が可能なので備蓄しておくとよいですね。

【POINT】
  • 備蓄は最低3日分、できれば1週間分がベスト
  • レトルトや缶詰は普段の買い物の買い足しでOK
  • 備蓄には好きな食品を購入しよう
  • 純粋な飲料水は1日1ℓでも大丈夫
  • ペットボトルは500㎖サイズがベスト
  • 野菜ジュースやビタミン飲料も併せて備蓄すると有効

トイレの備えも万全に!小サイズでなく組み立て式が有効

避難所では一般のトイレが使えなくても、仮設トイレが設置されるので困ることはありません。

自宅避難の場合は、トイレの中に入れられる大型の携帯トイレや、ネコ砂を備えておけば当面の間しのぐことが可能です。

ただ、テント避難や車中泊を選ぶと、トイレの備えは確実でないと食事よりも困ってしまいますよ。

段ボールの組み立て式トイレで、汚物入れは多く用意しておく

100円ショップでも販売されている携帯トイレもありますが、大人では量が間に合いません。また、車の中で使用する小のみに対応した携帯トイレも実際には役立ちません。

テント避難でも車中泊でも、しっかりしたトイレを備えることが重要で、組み立て式の段ボールトイレなどがおすすめです。

汚物入れは付属していますが5回分ほどしかありませんので、45ℓの黒の厚手のビニール袋も用意しておきます。凝固剤はネコ砂があればいいのですが、結構重たいので市販の凝固剤を別途購入しておきましょう。

また、組み立て式の段ボールトイレも、約1週間使うなら3個は用意しておいた方が無難です。雨や湿気でふやけて強度がなくなるかもしれないので、用心のためにトイレ用品は多めの備えが安心につながります。

【POINT】
  • 大も小も兼ねる、容量が1,000㏄以上の携帯トイレを備えておく
  • 可燃物として廃棄できるタイプを選ぶ
  • 段ボールで組み立てるタイプがおすすめ
  • 汚物入れは45ℓの黒の厚手のビニール袋を使用
  • 凝固剤を別途購入しておく
  • 大きめのポンチョを被れば、囲いが無くても安心してトイレができる

出典:楽天市場
https://item.rakuten.co.jp/bestee1/51896/?iasid=07rpp_10095___eh-l45d7hoa-8p-2ab76a3e-53b5-488d-9a20-b9b75e62916c

テント避難でも救援物資や炊き出しの食料をもらうことはできる

テント避難を選んだ際でもハザードマップで、公的な避難所の確認をしておくことは重要です。

その理由は、避難所では救援物資の配給や炊き出しなどが行われるので、テント避難しながら食料を分けてもらうことができるからです。

避難所での救援物資の配給は誰でももらうことが可能

避難所で配られる救援物資は、そこの避難所に避難している方だけでなく、自宅避難している家庭や、テント避難、車中泊避難している全ての方がもらうことができます。

従って、開設されている避難所を知っているかどうかで、食料や飲料水の調達に大きく関わってくる重要な情報になってきます。

避難所に避難しない方も、普段から避難所の場所は確認しておくことが大切です。

避難所を確認する際の注意点!災害別に避難所の開設を確認すること

大雨の時には開設されない避難所が多くあるので、注意が必要です。公的な避難所は学校関係が最も多いのですが、歴史のある学校は山の近くに建てられていることが多いです。

大雨時には土砂災害の危険が高まるので、山に面した学校は避難所としては開設されません。

ハザードマップには災害別に避難所開設の有無が記載されていますから、災害種別ごとの開設有無を確認しておかないと、救援物資や炊き出しを分けてもらうことはできません。

危険な避難所にいくと災害に巻き込まれるリスクもあるので要注意

もしもハザードマップで土砂災害の危険個所を確認しないで、単に「そこに学校があるから避難所になっている」との考えで、学校にいくと土砂災害に巻き込まれる可能性があります。

避難所はどんな災害でも開いていると思われる方が多いですが、そうではないのです。地震・津波・浸水・土砂災害、それぞれの災害で避難所として機能しない施設も多くあるので、避難所の開設有無は確実に把握しておく必要があります。

【POINT】
  • 避難所の場所を普段からハザードマップで確認しておく
  • 避難所での救援物資の配給は誰でももらうことができる
  • テント避難しながら救援物資や炊き出しを分けてもらうことが可能
  • 避難所の開設は災害によって異なる
  • 災害別の避難所開設の有無を確認しておくことが重要

まとめ

今回は、テント避難する際の食料の備蓄方法と、トイレの必要性について解説してきました。

テント避難するなら、備蓄は1週間分あると精神的に余裕が生まれます。飲料水は多いに越したことはありませんが、重量があるので純粋に飲み水として使うなら「大人1人1日1ℓ」でも大丈夫です。

トイレは記事内で解説しているように、しっかり用意しておかないと苦しい生活になってしまいますよ。テント避難を選択するなら、ぜひ本記事を参考に食料とトイレを備えておきましょう。

栗栖 成之

1963年広島県呉市生まれ。現在は兵庫県に在住し、1995年阪神淡路大震災を経験。
2014年からWEBライターを開始して、執筆した記事は3,000以上。
2017年に防災士を取得し、現在防災関連の記事も多数執筆中!