防災コラム
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LPガス(プロパンガス)は災害時に強い!LPガス協会に在籍していた筆者が解説します。
2025/12/08

都市ガスの家庭にも関係ある「LPガス」の話
「うちは都市ガスだから関係ない」と思っていませんか?
実はLPガス(プロパンガス)は、都市ガスを使う家庭や企業にとっても、非常に身近で大切な存在です。
たとえば、家庭で備える「カセットコンロ」や「カセットボンベ」も、実はLPガスの仲間。
地震・台風・豪雨など、自然災害が頻発する日本では、電気や都市ガスが止まったときに“最後まで使えるエネルギー”がLPガスなのです。
本記事では、LPガス協会に在籍経験を持つ筆者が、
- LPガスの特徴と都市ガスとの違い
- 災害時に力を発揮する「中核充填所」
- 家庭でもできるLPガス(カセットガス)備え
を、実例を交えてわかりやすく解説します。
目次
LPガスとは?

LPガスの基本知識
LPガス(Liquefied Petroleum Gas:液化石油ガス)は、プロパンやブタンを主成分とする燃料です。
加圧や冷却によって液体化できるため、ボンベやタンクに詰めて運搬・貯蔵できます。家庭用ではコンロや給湯器、業務用では飲食店・工場・ホテルなどでも広く利用されています。
最大の特徴は「分散型エネルギー」であること。
都市ガスのように地中の配管網を使うのではなく、各家庭や事業所に設置されたボンベから個別に供給されます。この仕組みが、災害に強い理由でもあります。
LPガスと都市ガスの違い(メリット・デメリット)
| 比較項目 | LPガス(プロパン) | 都市ガス |
|---|---|---|
| 主成分 | プロパン・ブタン | メタン(天然ガス) |
| 供給方式 | ボンベやタンクによる個別供給 | 配管網による集中供給 |
| 発熱量 | 約24,000 kcal/㎥ | 約11,000 kcal/㎥ |
| 供給エリア | 全国どこでも可能 | 都市部中心 |
| 災害時の強さ | 配管不要で復旧が早い | 配管損傷で復旧が遅い |
| 料金 | 地域・事業者により変動あり | 一定で安定的 |
| デメリット | ボンベ交換や保管スペースが必要 | 災害時に脆弱 |
都市ガスは便利でコストも安定していますが、地中の配管に依存しているため、災害で配管や設備が被害を受けると復旧に時間がかかります。
一方LPガスは、個別供給なので災害に強く、特に被災地では“独立して動けるエネルギー”として力を発揮します。
LPガスは災害に強い!

LPガスが災害に強い理由
阪神・淡路大震災や東日本大震災では、都市ガスの復旧に数週間〜数か月を要しました。
一方LPガスは、ボンベの交換だけで即日再開でき、他地域からの支援供給も容易です。
災害時のLPガスの強み:
- 独立供給:配管が不要で、各家庭単位で使える。
- 機動性:配送車でボンベを被災地へ運べる。
- 復旧スピード:道路が通ればすぐに供給再開可能。
- 分散型構造:1か所の被害で全体が止まらない。
この柔軟さが、「LPガス=災害に強い」と言われる理由です。
中核充填所とは?LPガスの“最後の砦”

災害時にLPガスの供給を維持するために整備されたのが「中核充填所」です。
豆知識
中核充填所の整備が始まった背景には、1995年の阪神・淡路大震災があります。
当時、都市ガスは壊滅的な被害を受け復旧に長期間を要しましたが、LPガスも供給拠点自体が被災すれば十分に機能できないことが明らかになりました。そこで「災害時でも稼働できる特別な施設」が必要とされ、国と業界の協力により中核充填所の整備が進められたのです。
中核充填所の特徴
- 耐震・耐火構造:地震や火災に強い設計
- 自家発電設備:停電しても充填作業を継続
- 防災協定:自治体と連携し、避難所や医療施設に優先供給
- 緊急輸送体制:災害発生後、被災地へ迅速にボンベを運搬
中核充填所は全国に数百か所整備されており、災害時には“エネルギー供給の要”として稼働します。

出典:経済産業省資源エネルギー庁「災害に強い分散型エネルギー、LPガスの利活用」
実際の災害での活躍例

- 阪神・淡路大震災(1995年):都市ガスが長期停止する中、LPガスによる炊き出しや避難所支援が実施。
- 東日本大震災(2011年):避難所・仮設住宅にLPガスが供給され、生活インフラを支えた。
- 熊本地震(2016年):移動式LPガス発電機や炊き出し支援車が稼働し、被災地の復旧を後押し。
これらの事例は、LPガスが「災害に強い」だけでなく「人の生活を守るエネルギー」であることを証明しています。
自治体・企業の取り組み
- 防災協定締結:LPガス業界と自治体が連携し、災害時の供給を約束。
- 避難所常備設備:ガス発電機・炊き出し設備・暖房器具の導入。
- 移動式エネルギー拠点:被災地に即応できるガス車両を配備。
地域単位でLPガスを防災資源として活用する動きは、全国的に広がっています。
都市ガスの家庭でもLPガスは活躍!

カセットガスもLPガスの仲間
家庭で簡単に備えられる「カセットコンロ」や「カセットガス」は、LPガス(ブタン・プロパン)の一種です。
災害時だけでなく、キャンプやバーベキューなど普段のレジャーにも活用でき、手軽に“防災×日常”を両立できます。
災害時に役立つ使い方
- 調理:温かい食事を確保できる。
- 給湯:ガス式給湯器やポータブル湯沸かし器で入浴も可能。
- 暖房:ガスファンヒーターやストーブで寒さをしのぐ。
- 発電:ガス発電機でスマホ充電や照明確保。
おすすめ商品例
日常にも災害時にも活躍!カセットガスを使用する商品を紹介します。
・イワタニ「カセットフー」シリーズ:家庭用調理や防災向けに人気。

イワタニ カセットフー 達人スリムV カセットこんろ CB-TS-5
カセットフーシリーズの代表機種!
料理が見やすく取りやすい、シンプルなデザインのうす型こんろです。
・エネポ(ホンダ):カセットガスで動く発電機。

・イワタニ「デカ暖」カセットガス式暖房機。

イワタニ カセットガスストーブ ハイパワー デカ暖 セット CB-CGS-HPR-SET1 デカ暖+カセットガス3本セット
小型石油ストーブに匹敵する暖かさ。どこでも手に入るイワタニのカセットガスが燃料なので、非常時用としても備えておくと安心な一台です。
カセットガス備蓄と安全対策
- 備蓄量の目安:1人あたり1日1本を目安に、4人家族なら12本以上(3日分)の備蓄がおすすめ。
- 保管場所:直射日光を避け、風通しの良い屋外に。
- 使用期限:5〜7年を目安に確認。
- 使用時の換気:必ず換気を行い、一酸化炭素中毒を防ぐ。
「日常で使いながら備える」ことが、防災の第一歩です。
まとめ:多様なエネルギーが“強い社会”をつくる

もしも電気・水道・都市ガスが止まっても、LPガスがあればある程度の生活を維持できます。
中核充填所が全国に整備され、自治体・企業・家庭が連携して備えることで、地域全体の防災力は大きく向上します。
「エネルギーを一つに頼らないこと」――
それが、災害に強い社会をつくる現実的な方法なのです。
防災士kamio
前職をLPガス関連企業に所属し、防災の現場を見てきた経験から「災害に強い暮らし」をテーマに執筆・講演活動を行っている。身近な防災をわかりやすく伝えることを大切にしている。