災コラム

防災士や編集スタッフによる
お役立ちコラムや皆様の体験談など

地震災害における断水対策は重要!
7つの対策とトイレの使い方を紹介

2024/02/16

2024年1月1日に発生した、令和6年能登半島地震で被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。

被害を受けられた皆様の安全と、1日でも早く平穏な生活に戻られますことを心よりお祈り申し上げます。

2024年は波乱の幕開けとなりました。元旦に起きた能登半島地震は、みなさんも驚いたことでしょう。発災から1か月を過ぎようとする現在も、広範囲の地域で断水が続いています。

本記事ではなぜ地震後の断水が長期化するのか、地震が起きる前にやっておきたい個人レベルでの断水対策と、地震後のトイレの使い方について解説します。

地震災害で断水が起きる理由!地中の水道管が破損するから

今回の能登半島地震のように断水が起きる原因は、地震の揺れによって地中の水道管が破損するからです。

日本全国の水道普及率は約98%(2022年3月末時点)であり、住宅地であれば全国どこでも水道水を自由に使えます。

しかし、数年前から全国で水道関連の事故が相次ぎました。中でも2021年10月に起きた和歌山市の紀の川に架かる「水管橋」の崩落事故は記憶に新しいところです。

全国各地で水道管の更新時期を迎えている

水道管の総延長は、約74万km(2020年時点)で約地球18.5周分もあるため、全てをメンテナンスすることはむずかしいのは理解できます。

少し古い資料ですが、厚生労働省は2015年(平成27年)度の水道管の更新率から計算した場合、全ての管路を更新するには130年以上を要すると公表しています。

約9年経過した2024年現在でも、この状況は改善されていません。

出典:厚生労働省

大きな地震が起きると必ず断水が発生している

出典:厚生労働省

上記も厚生労働省が公開している資料ですが、これまで日本各地で震度6強~7の強い地震が発生すれば、必ず断水が起こっています。

東日本大震災では復旧まで約5か月、熊本地震でも復旧まで約3か月半の期間を要しています。

この現状から、今後起こりうる南海トラフ地震や首都直下地震では、同様に水道管が破損して長期間の断水になることは、容易に想像できるでしょう。

水道管の破損による断水は復旧工事が難航する

地震の揺れによって、地中に埋設された水道管が破損し断水すると復旧工事が難航します。

その理由は道路を掘削して水道管を修理する必要があるからで、今回の能登半島地震のように道路上に倒壊した家屋があると、まずは家屋の撤去が必要になります。

さらに、水道管の破損個所が多岐に渡ると、掘削個所が増えるため工事期間が長くなります。

水道管から各家庭に配水される給水管が破損しているケースも多く、どの給水管が破損しているかは、音聴棒(おんちょうぼう)と呼ばれる調査機器を使って、人間の耳で確認を行うため、経験者でないと判断できません。

1件ごとの調査になるので断水範囲が広いと断水個所の特定だけでも相当な期間が必要なのです。

出典:神戸市水道局
音聴棒(おんちょうぼう)による調査風景、熟練調査員の耳が頼り!

地震で起こる断水対策は個人レベルでは不可能!

地震で起こる断水対策は個人レベル(家庭レベル)で可能なのかを考えると、地震後の完全な断水対策は不可能といえるでしょう。

地中に埋設されている水道管や給水管が破損するので、個人で修復はできませんしどこが破損するか予想もつきません。

残念ながら、地震災害時の断水については、行政レベルで対策しないとどうすることもできないのです。

家庭で貯水できる量は限られる

一般的に断水すれば飲料水・水洗トイレ・お風呂など、日常で必要となる水が使えません。飲料水はある程度の備蓄は可能ですが、1週間以上の断水に耐えられる量を備蓄することはむずかしいでしょう。

大量の水を備蓄していたとしても、断水期間が2~3週間、1か月にもなれば、確実に飲料水は底をつきます。

お風呂で使用する水は備蓄で用意できるものではありませんから、断水すればお風呂は諦めるしかありません。

地震で水道管が破損するほどであれば、下水管も同様に破損していると考えた方がよいでしょう。そのため、トイレに水を流すと逆流する可能性が高くなるので、水洗トイレも使用不可能になります。

緊急遮断弁設置配水池や大容量貯水槽が整備されている

出典:神戸市水道局

地震時の水の確保として自治体も対策は行っており、緊急遮断弁設置配水池や大容量貯水槽が整備されています。

緊急遮断弁設置配水池とは、地震などの災害や事故で給水管が破損・破裂した際に流量の異常を検知し、自動的に作動して配水池から水道水が流出するのを防ぎ、給水タンク内に水道水を確保する仕組みです。

大容量貯水槽は文字どおり、大容量の水道水を貯水できるタンクです。阪神淡路大震災を教訓に神戸市では、災害発生時に神戸市民全員が1日3リットルの水を12日間使えるほどの水を貯水できる、大容量貯水槽が整備されています。

ただし、これらの整備については各自治体で進捗度が異なるため、お住いの地域の整備状況を確認してみてください。

地震で断水が起きる前にやっておきたい7つの対策

地震で起こる断水対策は個人レベルでは不可能であることをお伝えしましたが、地震による断水が起こる前にやっておきたい対策は7つあります。

  1. 災害時の給水ステーションを知っておく
  2. 自宅から最も近い給水ステーションまでの道順を把握
  3. 給水所でもらう飲料水を入れるウォーターバッグなどの備蓄
  4. 水なしシャンプーを備蓄
  5. からだ拭きタオルを備蓄
  6. 最低3日分の飲料水と食料を備蓄
  7. 携帯トイレや簡易トイレの準備

これらの必要性について、次から詳しく解説します。

災害時の給水ステーションを知っておく

みなさんは地震災害で断水した際に、どこで飲料水を給水してもらえるか知っていますか?

実は多くの方が、災害時の給水場所を知らないのが現状です。避難所にいれば給水車が巡回してきますが、常に給水している訳ではなく避難所によっては時間が限られるケースもあります。

そのため自治体では「災害時の給水ステーション(給水拠点)」を公開しています。「○○市 災害時 給水拠点」で検索すれば、自宅のある自治体の給水ステーションが分かります。

誰もが避難所に行けるとは限りませんし、自宅避難を余儀なくされるケースもあるでしょう。そのため、地震で断水が起きる前に、給水ステーションの場所を確認するのは重要な対策です。

例えば広島市の給水ステーションは36箇所あり、このサイトから確認可能です!
https://www.water.city.hiroshima.lg.jp/soshiki/7/381.html

自宅から最も近い給水ステーションまでの道順を把握

次には、自宅から最も近い給水ステーションまでの道順を調べておくことが重要です。

水は重たいですから必要な量を、ポリタンクなどに入れて持って帰るのは無理があります。1人1日3リットル必要として4人家族なら、12リットルが必要となり運ぶ時の重さは12kgにもなります。

そのため、給水ステーションには自動車で向かうこととなるでしょう。地震で道路が破損したり家屋が倒壊して通れなかったりすることを予測して、給水ステーションまでの複数のルートを把握しておく必要があります。

給水所でもらう飲料水を入れるポリタンクなどの備蓄

給水ステーションで飲料水をもらうには、ポリタンクなどきれいな容器が必要です。

最近では非常用のウォーターバッグが便利で、普段は折りたたんでペッタンコ状態なので、ポリタンクのようにかさばらず備蓄場所に困りません。

ウォーターバッグの容量は約10リットルサイズがメインですから、最低でも2つは備蓄しておきたいアイテムです。

水なしシャンプーを備蓄

断水が起きるとお風呂は諦めるしかないため、頭を洗える水なしシャンプーの備蓄が必要です。

サバイバルともいえる避難生活で、頭を洗ってスッキリできるとストレスの溜まり方も違います。少しでも快適な避難生活を送るためにも、水なしシャンプーの備蓄がおすすめです。

からだ拭きタオルを備蓄

先の水なしシャンプーと同様にお風呂に入れないため、からだ拭きタオルは重要なアイテムになってきます。

これがあれば、汗や汚れも取り敢えず拭き取ることができて、清潔な体を保つことが可能です。当然ながら、お風呂に入った時の快適さはありませんが、水がなくても清潔な体を保つことができるので、持っていて損はないでしょう。

最低3日分の飲料水と食料を備蓄

最低3日分の飲料水を備蓄することは以前からおすすめしていますが、まだ備蓄をしていない方もいらっしゃると思います。

1日3リットル必要なのかなど、必要な備蓄量は個人差があるとしても備蓄が重要であるのは変わりません。地震発生後すぐに給水車が駆けつけるとは限らないため、自己防衛として最低3日分の飲料水と食料の備蓄は必須です。

携帯トイレや簡易トイレの準備

地震による断水が起きた際には、トイレは使わない方が無難です。

自宅のトイレが無事でも下水管が破損している可能性が高く、下手に用を足してお風呂の残り湯を流すと逆流したり、マンションでは下の階に汚水が溢れたりするケースもあります。

基本的に地震で断水が起きたなら、水洗トイレは使わないようにしましょう。そうなると、携帯トイレや簡易トイレが必要です。

備蓄できる数に限りがありますが、自治体による簡易トイレやトイレトレーラーが設置されるまでのつなぎとして、多めに備蓄しておくことをおすすめします。

地震10秒診断!現在地で地震が起きる確率が分かる

ここで「地震10秒診断!もしも、あなたの街で地震が起きると」を紹介しましょう。

このサイトは、検索した地域で30年以内に起こる地震予測と、地震が起きた際の発災後から5日目までに必要な行動などが分かります。

ぜひ、ご自身でシミュレーションして地震災害時の予防にお役立てください。

地震10秒診断は、コチラからアクセスできます!
https://nied-weblabo.bosai.go.jp/10sec-sim/

地震の後にトイレを使うとどうなるか?動画とマンガをご紹介

出典:国土交通省 マンガ

地震が起きた後に水洗トイレを使わない方がよいことは、文字で伝えるよりも動画や漫画の方が分かりやすいでしょう。

そこでここでは、国土交通省が公開しているYouTube動画と、マンガを紹介しておきます。

【YouTube動画】災害時のトイレ、どうする?

https://youtu.be/QibdGdP8_oA

【マンガ】災害時のトイレ、どうする?

https://www.mlit.go.jp/common/001180224.pdf

まとめ

今回は地震が起きた際の、断水対策について解説してきました。基本的に地震が起きた際の断水対策は、個人レベルではどうすることもできず自治体による復旧を待つしかありません。

その間には給水車による飲料水の給水を受けることと、自宅にある備蓄に頼ることになります。

個人による断水対策は、地震が起きる前に行うことが効果的です。災害が発生してから慌てても遅いので、記事内で解説している「地震で断水が起きる前にやっておきたい7つの対策」を、実践することをおすすめします。

また、記事の最後に紹介している「災害時のトイレ、どうする?」の動画や漫画を見て、災害時におけるトイレの使い方に気をつけましょう。

栗栖 成之

1963年広島県呉市生まれ。現在は兵庫県に在住し、1995年阪神淡路大震災を経験。
2014年からWEBライターを開始して、執筆した記事は3,000以上。
2017年に防災士を取得し、現在防災関連の記事も多数執筆中!