災コラム

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引っ越しで新生活がスタートする方へ!気にしておきたい防災情報をご紹介

2024/03/15

春は引っ越しなどにて、新生活がスタートする季節です。住み慣れた実家や地域を離れての新しい生活には、ワクワクする期待感と同時に、不安を感じる方もいるでしょう。

はじめての場所で迎える生活では、防災も意識したいものです。そこで今回は、引っ越しにて新生活を迎える方に、気にして欲しい防災情報をお伝えします。

引っ越し先のハザードマップを入手しておこう!

防災マニュアルのイラスト

引っ越し先が賃貸の場合は、不動産屋など仲介業者からハザードマップの提示がされているはずです。

これは2020年(令和2年)8月に改正された宅地建物取引業法によって、ハザードマップを用いて取引対象物件の所在地について、説明することが義務化されたからです。

不動産取引時に置いて、水害ハザードマップにおける対象物件の所在地の説明を義務化~宅地建物取引業法施工規則の一部を改正する命令の交付等について~

国土交通省の報道資料
https://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo16_hh_000205.html

必ずハザードマップがもらえるとは限らない

宅地建物取引業法にて、ハザードマップを用いて物件の所在地リスクの説明が義務化されていますが、不動産屋で必ずハザードマップがもらえるとは限りません。

説明はされますが、所在地部分のみをカラーコピーした資料の場合もありますし、ハザードマップを使用しても説明のみで終わって、マップをもらえないケースもあります。

自治体への転入届の際に「ハザードマップください」とアピールしよう

自治体はハザードマップを作成した際には各家庭に配布する義務があります。そのため、転入届を提出する際に原則として配布されます。

しかし、担当者が忘れることもありますし、もらえなかったら「ハザードマップください!」とアピールしましょう。

新生活を送る自宅のリスクを確認しておく

揺れている家のイメージ

ハザードマップをもらっても、棚に置いたままでは意味がありません。新生活を送る自宅のリスクを把握することが重要です。

ここではハザードマップを使った、自宅のリスク確認方法を紹介しましょう。

土砂災害危険区域に含まれていないか

土砂災害ハザードマップにて新しい自宅が、土砂災害危険区域に含まれていないか必ず確認しておきましょう。

土砂災害ハザードマップはさまざまな色が使われていて、次のように危険個所の種類も多いです。

  • 急傾斜地の崩壊(警戒区域・特別警戒区域)
  • 土石流(警戒区域・特別警戒区域)
  • 地すべり(警戒区域・特別警戒区域)
  • 土石流危険渓流
  • 急傾斜地崩壊危険個所
  • 地すべり危険個所

警戒区域・特別警戒区域・危険個所を合わせると9種類にもなります。では、どの箇所が危険なのかといえばすべてです。

つまり、以下のハザードマップのように着色されている区域は、すべて危険な場所になります。そのため、新生活を送る自宅が着色されている範囲内なら、大雨時には必ず避難しないといけません。

重ねるハザードマップの画像

出典:重ねるハザードマップ


洪水ハザードマップは0.5m以上が要注意個所

出典:重ねるハザードマップ


洪水ハザードマップでのリスク判定は、自宅が0.5m以上の浸水ランクに存在するかになります。

ランク リスク
0.0~0.5m 基礎が0.5m以上ある1階住居や2階以上の住居は浸水被害がない
0.5m~3.0m 2階以上の住居なら浸水被害はない。ただし、1階住居の場合は浸水するリスクがあるため避難が必要
3.0m~5.0m 3階以上の住居なら浸水被害はない。1~2階の住居なら避難が必要
5.0~10.0m 4階以上の住居なら浸水被害はないが、全員避難が推奨される

上記のような判断が必要で、5.0m以上の浸水のある場所は4階以上のマンションでも避難が推奨されます。

その理由は、エレベーターなどが停止して孤立してしまうからです。浸水している水が引くまでは救助に向かうことも難しく、備蓄がなければ自宅避難は叶いません。また、下水も雨水で満杯になるのでトイレを使うと逆流します。

これらのことから、自宅が0.5m以上の浸水が想定されているなら、何階に住んでいても避難所へ避難することをおすすめします。

津波ハザードマップで着色があるなら必ず避難しよう

出典:重ねるハザードマップ


これは津波ハザードマップの浸水想定ですが、見てお分かりのように0.5m~3.0mの浸水ランクが多いです。しかし、津波の浸水被害は深刻であり、0.5m以下のランクであっても避難することが重要です。

万が一、逃げ遅れると津波が住宅内に侵入して大変なことに成りかねません。また、当然ですが津波時の避難は早期避難が鉄則です。

高潮ハザードマップは見落としがち!でも津波よりも怖い災害

出典:重ねるハザードマップ


高潮ハザードマップは意外に見落としがちで、どうしても「津波」を注視する傾向にあります。しかし、上記の高潮ハザードマップを見ればお分かりのとおり、同じ地域でも津波よりも浸水深が高くなっています。

また、津波では浸水しない地域でも3.0m~5.0mの浸水が予想されています。津波は主に大きな海溝型地震によって発生しますが、高潮は台風や低気圧などで発生するため津波よりも頻度が高い災害です。

見落としがちですが、高潮ハザードマップもしっかり確認して、着色範囲に自宅が入っているなら必ず避難するようにしてください。

避難所は災害別に確認が必要!避難所までのルートも確認しておこう

避難所の看板の画像

ここまでで、新生活を送る地域でのハザードマップのもらい方と、各種ハザードマップによる自宅リスクの把握方法を紹介しました。

ここからは、命を守るための避難所についてさまざまなことを解説します。

災害別に避難所を把握することが重要

洪水・高潮に対応した避難所の位置を示す地図

出典:重ねるハザードマップ


全ての災害に対応している避難所は多くありません。上記のように多くの避難所が存在していても、例に挙げた避難所は「高潮と洪水」の2つの災害には対応していますが、それ以外の災害時には利用できません。

また、次のように「洪水・崖崩れ・土砂災害および地すべり・高潮」に対応していても、洪水は2階以上のみが利用可能などの条件が付く避難所もあります。そのため、災害別に避難所を確認しておくことが重要です。

洪水・崖崩れ・土砂災害および地すべり・高潮」に対応した避難所の位置を示す地図

出典:重ねるハザードマップ


各避難所までのルートを実際に歩いて確認する

災害別の避難所が特定できたら、実際に避難所までのルートを歩いて確認します。もしかすると、最短ルートにはアンダーパスがあり、大雨時には通行できないルートかも知れません。

また、自動車が通れない細い道を利用すれば、避難所までのショートカットに使えることもあります。避難所までのルートは、次の点に注意することが大切です。

  • 道路脇に大きな水路がない(大雨時には道路が冠水する)
  • 避難ルート上に土砂災害危険個所がない(土砂災害に巻き込まれる可能性がある)
  • アンダーパスなど水の溜まる場所がない(通行できないため)

学校や勤務先と自宅との間の避難所も確認しておこう

新生活で職場が新しくなったり、大学に進学したりする場合には、学校や新しい職場から自宅までの通勤・通学ルートも確認しておくと安心です。

学校や職場で災害が起きた場合に、帰宅困難者にならないためです。

公共交通機関が使えない場合、宿泊可能な安い施設を探しておく

学校や職場から徒歩で帰宅できるなら、何とか自宅にたどり着けるでしょう。しかし、電車やバスなど公共交通機関を利用する場合は、災害時には利用できないことが多いです。

その場合、無理に帰宅しようとすれば帰宅困難者になりかねません。そのため良い方法は、学校や職場の近くで安く泊まれる施設を見つけておくことです。

とはいっても、災害時にはみんなが同じことを考えるため、予約できないケースもあります。そのような事態も想定して、学校や職場にブランケットや寝袋を準備していれば、学校や職場に泊まることが可能です。

また、帰宅困難者を一時的に受け入れるために、体育館や市民会館などを無料開放する自治体もあります。学校や職場のある自治体では、帰宅困難者向けにどのような支援があるか確認しておきましょう。

万が一、帰宅困難者になった際のアドバイス

万が一、外出時に災害が起きて帰宅困難者になってしまった際のアドバイスをお伝えしましょう。

  • むやみに移動しない(単に疲れるだけ)
  • 家族との連絡方法を決めておく
  • 交通機関の情報や道路の被害状況などを確認
  • 安全を確保できる施設などを探しておく
  • 寝袋などを学校や職場に用意しておく

新しい住まいへの防災対策は行いやすい

今度は新しい住まいへの防災対策についてですが、新生活ほど防災対策がとりやすくなります。

家具などは新しく配置するため、安全を考慮した家具を選べますし、レイアウトも取りやすいです。ここでは、新生活だからこそ実践しておきたい防災対策を紹介します。

寝室には大型家具は置かない

地震が起きた際に重要なのは、「何も倒れてこない・何も落ちてこない・何も飛び散ってこない」安全な場所を作っておくことです。そしてその安全な場所は、ベッドルームがベストです。

筆者のベッドルームには腰より高い家具はないため、地震で自宅が揺れた際にはすぐにベッドにダイブします。

ベッドルームを自宅で最も安全な場所にしておきましょう。そうすれば、就寝中に突然大きな地震がきても心配しなくて済みます。

冷蔵庫や食器棚には転倒防止グッズを使う

引っ越しの際には人手があるため、冷蔵庫や食器棚に転倒防止グッズを取り付けやすくなります。また、住み始める前から転倒防止対策をしていれば、毎日を安心して暮らせます。

最近の引っ越し屋さんでは、引っ越し完了後に「10分お手伝いサービス」などを提供している会社も多いです。もしも、利用した引っ越し屋さんでこのようなサービスがあるなら、転倒防止グッズを取り付けてもらえるため助かります。

まとめ

今回は、引っ越しを伴う新生活における防災についてお伝えしてきました。新生活では新しい住所での各種ハザードマップの確認が重要です。

そして、自宅の災害リスクを把握して、適切な避難所に避難することが命を守る手段となります。また、帰宅困難者になった際のアドバイスもぜひ参考にしてください。

新生活は防災を見直すいい機会ですから、よきタイミングを利用して安心して暮らせる防災対策を実行しましょう。

栗栖 成之

1963年広島県呉市生まれ。現在は兵庫県に在住し、1995年阪神淡路大震災を経験。
2014年からWEBライターを開始して、執筆した記事は3,000以上。
2017年に防災士を取得し、現在防災関連の記事も多数執筆中!