災コラム

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山や川でのレジャーは危険と隣り合わせ?その理由を分かりやすく解説します!

2023/07/22

夏のレジャーでは、川遊びをする方も多いですね。自然の中で涼しさを感じながら、木陰でバーベキュー!そして、冷たい川に入っての水遊びは、普段の生活の忙しさを忘れられる最高の時間となるでしょう。

しかし、川遊びを含めて山や海のレジャーは、危険と隣り合わせなのをご存じでしょうか?

知識を持たずに楽しんでいると、命を落とすことになるかも知れません。

今回は、山や川のレジャーが、危険と隣り合わせである理由を分かりやすく解説します。また、リスクの回避方法や、スマホに入れておくと便利なアプリも紹介します。

海水浴と川遊び!どちらが危険と思いますか?

夏の定番のレジャーと言えば、海水浴や川遊びでしょう。どちらも楽しむには注意が必要です。

いずれも水遊びとして考えられますが、どちらの危険度が高いか、お分かりでしょうか?

実は海水浴よりも、川での水遊びの方が断然危険度が高くなるのです。

海水浴場は監視員やライフセーバーがいる

まずは、海水浴場を利用するケースを確認してみましょう。利用料を支払うことが多い海水浴場では、監視員やライフセーバーがいるなど、安全対策がしっかりほどこされています。

最近では、海水浴でも「離岸流」の注意喚起が多いですが、ライフセーバーのいる海水浴場では、仮に離岸流に流されても助けてもらえることが多いです。

また、泳ぐ際にはライフジャケットの貸出がある海水浴場もあるので、現地で安全対策グッズの調達も可能です。

海水浴場以外の海辺で泳ぐのはNG!

海水浴場以外では泳がないように、海上保安庁からも注意喚起がなされています。 しかし、海水浴場以外の海辺をあえて選んで泳ぐ方も少なくありません。確かに、費用は無料ですし何より人がいないので、プライベートビーチ感覚で海水浴を楽しめます。
ここで知っておいて欲しいのは、海での遊泳中の事故のほとんどが海水浴場以外で起きているという事です。

理由としては、海水浴場のように監視員やライフセーバーのようなサポート役の方がいないので、何か起きた時に助けてもらうことができません。さらに、監視の目がないのでライフジャケットを着用しなかったり、飲酒をして海に入ってしまったりと、安全上のルールを守らず、自ら事故のリスクを高めてしまっている可能性もあります。

良識をもって海水浴場を利用すれば、事故のリスクを減らすことができますね。

川遊びでは思わぬ落とし穴がたくさん!

ここまでで、監視員やライフセーバーのいる海水浴場で楽しむには、安全に遊ぶことが可能なことがお分かり頂けたでしょう。海水浴場以外で泳ぐのはNGですので、よく覚えておいてくださいね。

ここからは、川遊びが海水浴よりも危険であることを解説しましょう。

川遊びをする場所はさまざまであり、人がいない川辺を見つけて遊ぶことが多くあると思います。そうなれば、海水浴場のような監視員やライフセーバーもいないため「海水浴場以外で泳ぐこと」と同じ状況になってしまい危険です。

川では離岸流は起きませんが、海とは違い川底の地形は複雑になっているため、一歩進むだけで深みにハマって溺れてしまうケースがあります。

川の事故では中学生以下の水難事故が多い

出典:警察庁 令和4年における水難の概況

https://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/r04suinan_gaikou.pdf

このグラフは警察庁が公開している「令和4年における水難の概況」に掲載されているもので、中学生以下の死者・行方不明者が発生した水難事故の場所別のグラフです。

見てのとおり、水難事故は50%以上が河川で起きており、他とくらべて多いことが分かります。

河川では水の流れが穏やかだと「これなら子どもでも大丈夫だろう!」と、安心してしまう親御さんが多いのが現実です。加えて子ども達も、流れが早ければ恐怖心を抱きますが、そうでない状況なら警戒心もなくなり水遊びに夢中になってしまいます。

その結果、深みにハマってしまい溺れたり、流されてしまったりするのです。そして、周囲の子ども達や親御さんが気づいたときには、既に手遅れになっているケースが多くあります。その結果が、先のグラフにも数字として現れています。

川遊びでの注意点!必ずライフジャケットを着用する

川で水遊びをするなら、ライフジャケットの着用は必須となります。

万一深みにハマったとしても、ライフジャケットを着用していれば、沈みません。

仮に流されても、浮いていれば生存率は高くなるため、川での水遊びではライフジャケットの着用は、命を守るために重要です。

川の中州でのバーベキューは正しい?絶対NGな方法です!

川遊びで楽しいのがバーベキューです。近年ではコロナ禍を通じて人のいない川で、グループでのバーベキューを楽しむ方が多かったのですが、マナー違反が多く見られます。

ゴミや炭を川辺に放置することは、不法投棄とみなされて「個人の場合は5年以下の懲役、もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方」の罰則を受けるので、絶対に止めましょう。

ここでは、このようなマナー違反がないことを前提に解説します。

山の天候は変わりやすい!上流のゲリラ雷雨で一気に増水する

まず、見出しにある「川の中州でのバーベキューは正しい?」ですが、これは絶対ダメな方法です。

その理由は、山の天気は変わりやすく、河川の上流でゲリラ豪雨が起きている可能性もあるからです。

バーベキューを楽しんでいる場所は晴天でも、川の上流では大雨が降っているケースも多々あります。すると、時間差で中州に鉄砲水が襲ってきて一気に飲み込まれてしまいます。

恐ろしいのは、少しずつ水位が高くなるのでなく一気に水位が上がってくることで、鉄砲水のように川の水が襲ってくるとどうしようもありません。

したがって、川の中州でのバーベキューを含む遊びは、絶対に行ってはダメです。

有名な「玄倉川水難事故」の教訓が薄れている!

みなさんは1999年(平成11年)8月14日に、神奈川県足柄上郡山北町の玄倉川(くろくらがわ)で発生した「玄倉川水難事故」をご存じでしょうか?

史上最悪の河川の水難事故と呼ばれ、この事故以降には川での水遊びには「増水」のリスクがあると周知されていたはずです。しかし、それでも毎年のように、川の増水を原因とした死亡事故が後を絶ちません。

ここでは「玄倉川(くろくらがわ)水難事故」がどのような事故であったか、簡単に整理しましたので、川での増水の怖さを再確認してみてください。

    ・8月13日:玄倉川(くろくらがわ)の中州に25名のグループがキャンプを行う
    ・15時ごろ:雨が降り始める
    ・15時20分ごろ:ダムの管理職員が巡回し、水位が増水するため退避を促す
    ・16時50分:神奈川県に大雨洪水注意報が発表される
    ・19時ごろ:日帰り予定の4名が帰宅 ⇒グループの人数は21名となる
    ・19時35分:5キロ上流の玄倉ダムから放水予告のサイレンが鳴る
    ・20時20分:ダムが放流開始
    ・21時10分:ダム管理職員と警察が退避勧告を行う
    ⇒グループの内3名が指示に応じて退避、残りは18名となる
    ・8月14日5時35:神奈川県に大雨洪水警報が発表される
    ・6時ごろ:前夜に退避したメンバーが退避するよう呼びかける ⇒無視!
    ・6時35分:豪雨による増水から玄倉ダムが本格的に放流を開始
    ・8時30分ごろ:完全に中州に18名が取り残される
    ⇒水流が増し救出が困難な状況
    ・11時38分:水深が2mにもなり18名全員が流される
    ・5名が救助されるも、13名が死亡

警察の避難勧告を無視してまで、なぜテントに残ることに固執したかは不明ですが、安易な判断にて多くの命が犠牲となった最悪の川の水難事故です。

山や川のレジャーを安全に楽しく過ごす方法!

せっかくの夏のレジャーですから、安全に楽しみたいですよね。記事内でお伝えしているとおり、海水浴場では安全に楽しむことが可能です。

しかしながら、山や川の水遊びではより注意が必要であることがお分かり頂けたでしょう。

インターネットが普及して、安易な行動はすぐ非難されますし、情報が簡単に得られるので、流石に「玄倉川水難事故」のような判断はしないと思います。

そこでここでは、山や川のレジャーでの注意点と、便利な車中泊について解説します。

川で遊ぶには天候や川の状態を確認

川に遊びに行くなら現地周辺の天気、特に上流側の天気に注意することが重要です。また、現地での川の状況も、十分にチェックしないといけません。

たとえば前日や、前々日に大雨が降っていたなら増水しているはずなので、川のなかに入るのはNGです。

また、しつこいようですが現在地よりも、上流の天候を常にチェックしておくことが重要です。

テントを張るなら土砂災害の危険性がない場所に張る

山や川でテントを張るなら、念のためハザードマップで土砂災害危険地域に入っていないか確認しましょう。

当日は雨が降っていなくても、前日や前々日に大雨が降っていたなら、土砂災害が起きる危険性は十分にあります。

そのため、テントを張る個所が土砂災害の危険性がないことを、確認して張ることが大切です。

必ずライフジャケットを着用すること!

川の水遊びでは、必ずライフジャケットを着用することが必須であり、川の中心に向かって泳いではいけません。

川の表面を見ただけでは水流も水深も不明ですから、川の中心に泳いで行くといきなり流れが速くなり流されるケースも多く見られます。

川では泳ぐのではなく、浅瀬で水遊び程度にしておくと安心です。

子どもからは目を離さない

先にお伝えしたとおり、川での水難事故は中学生以下の子どもが多くなっています。

したがって、小さな子供連れの親御さんは、決してお子さんから目を離してはいけません。子どもが水遊びをする際は必ずそばにいて、ひとりで水遊びさせないことが重要です。

山や川での宿泊は車中泊がベスト

山や川での宿泊なら、テントよりも車中泊がおすすめです。その理由は「テントを張る手間が不要・虫が入ってこない・安眠できる」などが、代表的な理由です。

キャンプ場でなく自然の中でテントを張るなら、ムカデやヘビ、その他の虫が侵入してくるリスクがあります。さらに、熊と猪などの危険な動物と遭遇するリスクもあります。

また、河川敷は地面がゴツゴツしているので、寝心地が悪く、熟睡できないかもしれません。しかし、車中泊ならそのような心配は不要になります。

楽しく楽に車中泊:

https://item.rakuten.co.jp/gorilla55/c/0000000412/#syatyuuhaku

スマホに入れておくと便利なアプリをご紹介

ここでは、山や川、海のレジャーに最適で、スマホにダウンロードしておくと便利なアプリの紹介をしておきましょう。

危険個所が分かる「全国の水難事故マップ」

リンク: http://www.kasen.or.jp/mizube/tabid118.html


これは公益財団法人 河川財団が提供している「全国の水難事故マップ」です。

これまで水難事故が起きた個所が、マップで表示されますから、出かける際の参考にするとよいでしょう。

危険をプッシュ通知で教えてくれる「Yahoo!防災速報」

リンク: https://emg.yahoo.co.jp/


「Yahoo!防災速報」は、現在地の天候や速報などをプッシュ通知で知らせてくれます。

川遊びをしていても、現在地で「強い雨(24mm/h)」など、もう直ぐ雨が降るなどの通知で数分先の状況を把握できて、雨雲レーダも確認できるのでとても便利です。

ハザードマップが確認できる「全国避難所ガイド」

リンク: https://www.hinanjyo.jp/


このアプリは現在地から最も近い避難所を把握できるだけでなく、全国のハザードマップを確認することも可能です。

その他エリア情報から、現在地の危険度をあらゆる情報から把握できます。テントを張る位置や車中泊する位置が、土砂災害危険個所内であるかも簡単に把握可能です。

まとめ

今回は、海や山、川のレジャーについて、安全面や注意点などを解説してきました。

レジャーは安全で楽しいものであることが大前提ですから、マナーはもちろんリスクを十分把握しておくことが重要です。

リスク回避の方法については、本記事を参考にして頂き、夏のレジャーを思いっきり楽しんでくださいね。

栗栖 成之

1963年広島県呉市生まれ。現在は兵庫県に在住し、1995年阪神淡路大震災を経験。
2014年からWEBライターを開始して、執筆した記事は3,000以上。
2017年に防災士を取得し、現在防災関連の記事も多数執筆中!