防災コラム
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日本の活火山は111個所!火山と共存するための情報を解説します
2022/08/12
2022年7月24日 午後8時過ぎに、鹿児島県にある桜島の南岳山頂火口で、爆発的な噴火が発生。気象庁は、火山活動が非常に活発化しているとして、噴火警報を発表して桜島では初めてとなる、噴火警戒レベルを最も高い「レベル5 避難」に引き上げました。
日本には全部で111個所の活火山があり、どの火山もいつ桜島のような噴火を起こしてもおかしくないのです。そのために、気象庁からはさまざまな火山情報が公開されています。
今回は、活火山の定義、火山との共存、そして命を守るための公開情報を詳しく解説します。
目次
111の活火山の定義とは!?概ね過去1万年以内に噴火した火山も含まれる
出典:気象庁 活火山とは
https://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/kaisetsu/katsukazan_toha/katsukazan_toha.html
まずは、活火山の定義を確認しておきましょう。昔は「活火山」「休火山」「死火山」の3つに分類されていました。
例えば、富士山は歴史的には噴火の記録があるものの、現在は火山活動が休止されているので「休火山」と呼んでいました。また、歴史的に噴火の記録のない火山を「死火山」と分類していたのです。
活火山の定義の歴史を振り返ってみる
火山の分類が変ってきたのは1960年代からで、それ以降、何度か見直しがされて現在の活火山111個所になっています。
それではここで、これまでの活火山の定義の歴史を確認してみます。
年代 | 内容 |
1960年以前 | 活火山:活動している噴火している火山 休火山または死火山:噴火していない火山 |
1960年代 | 活火山:噴火の記録のある火山全てが対象 |
1975年(昭和50年) | 火山噴火予知連絡会が「噴火の記録のある火山及び 現在活発な噴気活動のある火山」を活火山と定義(77火山) |
1991年(平成3年) | 火山噴火予知連絡会が活火山を「過去およそ2000年以内に噴火した火山 及び現在活発な噴気活動のある火山」と定める(83火山) |
1996年(平成8年) | さらに3火山追加し86火山となる |
2003年(平成15年) | 火山噴火予知連絡会は「概ね過去1万年以内に噴火した火山及び 現在活発な噴気活動のある火山」を活火山と定義し直す。(108火山) |
2011年(平成23年)6月 | 2火山を追加して110火山となる |
2017年(平成29年) 6月 | 1火山を追加して111火山となり現在に至る |
このように、2017年(平成29年)6月に火山噴火予知連絡会が111の火山を活火山として指定して以来、現在も日本国内には111の活火山が存在していることとなります。
活火山は概ね1万年以内に噴火した火山も含まれている
2003年(平成15年)に決定された活火山の定義では「概ね1万年以内に噴火した火山」も含まれるので、富士山も活火山となっています。
富士山が直近で噴火したのは、宝永四年(1707年)なので、約300年前になります。これでも相当な昔であるので、1万年前ともなると想像もつきません。
それだけ火山は長期間の周期で活動するということなので、111の火山全てが同時期に噴火することは、ほぼ「0」であるともいえますね。
火山噴火予知連絡会とは?
ここで、火山噴火予知連絡会とはどのような組織なのか、カンタンに説明しておきましょう。
昭和49年に設置された組織で、気象庁が事務局を担当し、委員は学識経験者および関係機関の専門家から構成されています。
連絡会は年2回開催され、全国の火山活動について総合的に検討を行う他、火山噴火などの異常時には、臨時的にも開催され、火山活動について検討し、必要な場合は統一見解を発表するなどして防災対応に資する活動を行っています。
連絡会の判断結果は、気象庁から「火山の状況に関する解説情報」として発表され、火山についての状況や対応を検討し政府に助言できる組織です。
火山防災のために監視・観測体制の充実等が必要な50火山
日本全国で111の火山が活火山として指定されていますが、その中でも「火山防災のために監視・観測体制の充実等が必要な火山」として、50火山が指定されています。
これらの50火山には、噴火の前兆を捉えて噴火警報等を適確に発表するために、気象庁によって「地震計・傾斜計・空振計・GNSS観測装置・監視カメラ等」を設置し、さらに、関係機関(大学等研究機関や自治体・防災機関)からのデータ提供も受けながら、火山活動を24時間体制で常時観測・監視しています。
活火山である桜島の歴史を確認してみよう
では、つい最近噴火した活火山である桜島の歴史を確認してみましょう。
桜島と呼ばれるだけに、昔は「島」であり陸続きではありませんでした。それが、1914年の大正噴火によって溶岩が流れ出して水深70~80mの海峡を埋めてしまい、大隅半島と桜島が陸続きになってしまったのです。
桜島の地形を確認しておこう
出典:国土交通省 九州地方整備局 大隅河川国道事務所
桜島の歴史 https://00m.in/Zlz35
桜島には北から南に向かって、北岳(標高1,117m)、中岳(標高1,060m)、南岳(標高1,040m)の三峰が連なっています。
桜島を南北に切断してみると、北岳から南岳までは約2kmの高地となっていて、そこから30度の急斜面で海に至っています。
今度は桜島を東西に切断してみると、標高400~500mまでは急斜面の山腹となっていますが、その後は緩い傾斜の台地が形成されています。
これらから、桜島には3つの火口が存在することが分かります。
桜島が現在の活火山となるまでの歴史
それでは、桜島が現在の活火山になるまでの歴史を振り返ってみましょう。最初は今から、約2万5,000年前までに遡ります。
その1:約2万5,000年前 姶良カルデラ(あいらカルデラ)の誕生
今から約2万5,000年前に、姶良火山(あいらかざん)が想像を絶するほどの大噴火を起こして、火山自体が吹き飛んでしまいます。
そして火山の跡に、大きな窪地(現在の鹿児島湾(錦江湾))ができて、姶良カルデラ(あいらカルデラ)が誕生します。
その2:約1万3,000年前 桜島が誕生
それから1万2,000年経過した、現在より約1万3,000年前に、姶良カルデラ(あいらカルデラ)の南側に子どもの火山が誕生します。これが現在の桜島となります。
その後も幾度となく噴火活動を繰返して成長を続け、現在から約6,000年前まで北岳の噴火活動が続いたのです。
約4,000年前に南岳が活動を開始し現在の形に成長
現在から約4,000年前に、噴火活動を休止した北岳に代わり、南岳が活動を開始して現在の桜島の形に成長しています。
※全ての画像の出典先:国土交通省 九州地方整備局 大隅河川国道事務所
桜島の歴史 https://00m.in/Zlz35
大正噴火によって陸続きとなる
出典:国土交通省 九州地方整備局 大隅河川国道事務所
桜島の歴史 https://00m.in/Zlz35
桜島は大きな噴火の度に流れ出す溶岩流で形状を変えてきました。
この1,000年以内に起きた代表的な噴火は、「文明噴火・安永噴火・大正噴火・昭和噴火」の4つです。中でも1914年に起きた大正噴火は大量の溶岩が流れ出す大噴火であり、当時の瀬戸海峡を埋め尽くして、大隅半島と桜島が陸続きになりました。
明治時代の写真と大正噴火後の写真を比べてみると、一目瞭然ですね。
火山と人々が共存する理由!?危険だけでなく恵みがあるから
なぜ危険な火山のふもとで人々は生活をしているのでしょう?平成12年10月1日の国勢調査によると、桜島には4,678人、1,788世帯が暮らしています。
島民の起源を辿ってみると、縄文時代から桜島に人が住んでいたといわれています。
火山がもたらす恩恵が大きい
「火山=危険」であることは確かで、噴火が起きれば土石流や火砕流、噴石、火山灰などにより、さまざまな被害を受けてしまいます。
ですが、危険ばかりではなく、人々への恩恵も火山はもたらせます。桜島についていえば、桜島大根や桜島小みかんなどを代表とする美味しい農作物、疲れを癒してくれる温泉、心を和ませる美しい景色などは、火山なくしては成立しません。
このような恩恵は観光資源としても利用され、多くの観光客が桜島に訪れています。
桜島だけでない伊豆諸島も活火山の集まり
東京都に属する伊豆諸島も全て活火山ですが、やはり多くの人々が火山と共に暮らしています。
平成25年10月1日の国勢調査によると、伊豆諸島9島の人口合計が23,469人、小笠原諸島2島の合計は3,022人、合計11島に26,491人が暮らしています。もちろん観光も盛んで、国内の観光ツアーも多く組まれています。
火山活動から人々の命を守る情報を解説
ここでは、火山と一緒に暮らす住民や観光客の命を守るための、火山活動による情報について解説します。
火山と一緒に暮らしている住民の方々には周知のことですが、観光の場合でも、知っておくべき情報です。
噴火警戒レベルは5段階ある
出典:首相官邸 火山噴火では、どのような災害がおきるのか
https://www.kantei.go.jp/jp/headline/bousai/funka.html
噴火警戒レベルは、火山活動の状況に応じて「警戒が必要な範囲」と、防災機関や住民等の「とるべき防災対応」を5段階に区分して発表する指標です。
先日の桜島では、「レベル5 避難」が発表されています。
気象庁の噴火警報・噴火速報
気象庁が提供する、噴火警戒レベルと噴火速報を知らせるサイトで、国内111の火山全ての情報をこのサイトから確認できます。
地図上の火山の△をクリックすると、その火山の詳細情報を知ることができるので、一度試してみてください。
気象庁 火山登山者向けの情報提供ページ
このサイトは気象庁が提供する登山者向けの情報サイトとなっていて、噴火レベル対象火山ではレベル2の火口周辺規制以上の火山を表示。噴火警戒レベル対象外火山では火口周辺危険の火山を表示します。
それぞれの火山をクリックすると、詳細情報を確認できます。
各火山のハザードマップ(防災マップ)
各火山(監視が必要な50火山)には、ほとんどでハザードマップ(防災マップ)が作成されていて、日頃からの備えや緊急時の避難方法などが掲載されています。
観光で訪れる際には各火山のハザードマップ(防災マップ)を確認し、スマホで使用しているブラウザ(SafariやGoogle Chromeなど)に、登録しておくことをおすすめします。
火山のある地域はみんなが集まる観光スポットになっている
噴火すると危険な場所になってしまう火山ですが、上手く共存することで得られる恩恵は計り知れません。
一般的な観光地とは異なり、変った地形や火山の火口を見ることもできます。また、みなさんが大好きな温泉も火山観光に欠かせない楽しみの一つです。
ですから桜島や伊豆諸島など監視が必要な火山のある地域のほとんどが、多くの人達が集まる観光スポットとして有名です。
ここでは、有名な火山のある観光スポットのおすすめサイトをご紹介します。
桜島観光ポータルサイト みんなの桜島
桜島観光ポータルサイト みんなの桜島
http://www.sakurajima.gr.jp/
桜島で観光するなら、ぜひ確認しておきたいサイトです。
トップページにて桜島の火山活動がリアルタイムに把握できますし、さまざまな観光スポットの紹介があるので、観光ルートを決める時にとても便利です。
伊豆諸島 TOKYO11Islands
出典:TOKYO11Islands https://www.tokyo-islands.com/
伊豆諸島の観光サイトなら、東京諸島観光連携推進協議会が運営する「TOKYO11Islands」がおすすめです。
東京に属する伊豆諸島9島、小笠原諸島2島の合計11島の魅力を探すことができます。
阿蘇山 ASOisGOOD!
出典:ASOisGOOD! https://www.asocity-kanko.jp/
九州では桜島と同様に活火山で有名な阿蘇山があります。
阿蘇山はカルデラと中央火口丘で構成されていて、高岳、中岳、根子岳、烏帽子岳、杵島岳が阿蘇五岳と呼ばれています。
カルデラの地域は、巨大噴火の歴史と生きた火口を体感できる「阿蘇ジオパーク」として、日本ジオパーク、世界ジオパークに認定されていて、観光スポットとして人気を博しています。
そんな阿蘇山のおすすめな観光サイトは、阿蘇市観光協会が運営する「ASOisGOOD!」です。
モデルコースや観光スポット、宿泊施設や温泉の紹介もあり、充実したサイトとなっています。
まとめ
今回は活火山について解説してきました。日本は火山列島とも呼ばれるほど、火山の多い国です。
現在では111の活火山があり、その内50火山が監視の必要な火山として指定されています。
ただ、昔から火山の周辺には人々が集まり、火山の恩恵を受けながら暮らしを営んできました。火山と上手く付き合うことで、豊かな暮らしを手に入れることもできますし、訪れて温泉で心身を癒したりもできます。
観光に行く際には火山に対する知識をしっかり把握して、存分に楽しめるよう、ぜひ本ページを参考にしてくださいね。
栗栖 成之
1963年広島県呉市生まれ。現在は兵庫県に在住し、1995年阪神淡路大震災を経験。
2014年からWEBライターを開始して、執筆した記事は3,000以上。
2017年に防災士を取得し、現在防災関連の記事も多数執筆中!