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能登半島地震|避難所運営の現場からみる避難所で大切なこと【後編:課題と防犯、必要だと感じた備え】
2026/10/16

能登半島地震の被災体験をもとに、避難所運営で感じた大切なことを前編、後編に分けて伝えます。
後編では、避難所運営をとおして感じた課題と防犯についてまとめました。さらに、避難所生活を送ったからこそ必要だと感じた備えておきたいものもお伝えします。
いつ起こるかわからない災害に備え、地震発生後の避難所の現実を多くの人に知ってほしいと思っています。発災直後からの様子をつづったこの記事が、避難所運営や避難所生活の備えをする人の目に留まれば幸いです。
前編の記事はこちら→
能登半島地震|避難所運営の現場からみる避難所で大切なこと【前編:被災時の状況と避難所の様子】
目次
高齢地域の避難所運営の課題
私の実家は石川県輪島市で、いわゆる過疎地域です。そして、高齢地域でもあります。そんな高齢地域の避難所を運営する中で感じた、避難所運営の課題についてお話しします。
①運営側の人数確保が難しい

避難所運営の中で感じたのは、高齢地域では、運営人員の確保が難しいということです。それは、避難所内を動き回ったり、重い荷物を運べる人材が日中は出払ったりしてしまうからでした。
みんなが被災者なので、活発に動ける世代の人だからといって「避難所運営を手伝ってほしいから、家での作業をしないでほしい」とは言えませんでした。そのため、どうしても自分で対応できない力の要る作業のときは、近くにいる男性に声をかけて力仕事を手伝ってもらいました。
食事のヒアリングや物資の管理など、運営面で改善が必要な点ももちろんあったと思います。今回の能登半島地震は帰省時期の発災だったため、活発に動ける世代が通常期よりもいたように感じますが、それでも運営人数の確保が難しいものでした。帰省時期と被らない時期の発災だと、なおさら、人数確保が課題になるように思います。
②介助を必要とする人への対応
避難所によっては、介助が必要な人への対応も課題になる点だと感じました。具体的には、対応の仕方を理解している人がいないと適切なケアができないことです。私自身の体験として、手伝ってほしいといわれ体を起こすのを手伝った際、その人の体に負担をかける起こし方になってしまったのではないかと思うことがありました。
私がいた避難所は家族単位や顔見知りどうしで部屋を利用していたため、介助で困っている人の声を聞くことはほとんどありませんでした。しかし、ケアをしている方を手伝えれば、場合によっては介助を代わることができれば、介助する側もされる側も避難所での生活を過ごしやすくできたのではないかと考えます。
高齢地域では介助が必要な人の割合も多いと考えられますが、避難所を運営する人の力だけではカバーできない面もあります。発災から少しでも早く、福祉ケアが行きわたるよう支援をしてほしいと思います。
避難所の防犯と女性の安全について
災害時には、さまざまな犯罪も起こります。私が避難所生活を送っていた期間にも不審者情報が出回り、防犯対策を取ることもありました。
また、多くの人が集まる避難所では、女性は視線や予期せぬ接触などにより、不安な日々を送ることも多くなります。
ここでは、避難所内で感じた防犯と女性の安全についてまとめていきます。
避難所の防犯は避難所内の協力と情報共有が必要不可欠

避難所の防犯は、避難所を利用している人たちの協力と協力を仰ぐための情報共有が欠かせません。このように思うのは、数名だけが防犯を担うのは体力的にも精神的にも疲弊する避難所生活の中で、負担が大きいと感じたからです。
私がいた避難所では、夜中に車の中を物色しているような懐中電灯の光を見たと言う人がいて、数名が交代で見回りに出てくれていました。
防犯のための見回りは被災してさまざま沸き起こる不安の一つを解消するために大切です。しかし、見回りに出てくれている人もまた、不安を抱えているし毎日見回りが続けば体に負担もかかります。不審者がいるかもしれないという情報を施設内で共有し、見回りの協力者を募ることができたのではないかと思います。
ただ、不審者がいるかもしれないという情報は、避難所内の人々の不安を煽ってしまうことになりかねません。施設内で共有する際のリスクを考慮し、伝え方に工夫をしながら情報共有、協力を募ることが大切だと思います。
女性が安心して避難所で過ごすために必要なこと
女性が安心して避難所で過ごすには、「女性だけが使える空間」があることが大事だと感じます。他人の目を避けたい着替えや介護用おむつの交換が安心してできると、避難所生活の不安がいくらか軽減されるように感じます。
私がいた避難所は廃校になった小学校で、多くの教室がありました。そのため、避難所の人が増えても女性用の部屋を確保できたのが、女性の安心につながったのではないかと考えます。
私自身の心がけとしては、避難所内であっても部屋の外に出るときは一人で動かないようにすること、一人で動くときは行き先を同じ部屋の人に伝えるようにしていました。
被災時の状況次第では、避難所の環境も施設内にどんな人がいるかもわかりません。どんな状況でも、周りとのかかわりを断って一人孤独に避難所で過ごすことのないようにし、少しでも安心して過ごせるようにしてみてほしいと思います。
実際の経験で分かった、避難所運営で大切なこと
振り返ってみると、避難所運営をする上で大切にしていたことがありました。野外活動の運営補助をしていた経験からくるもので、世代は違うものの、その時の集団生活と同じだ、と思えたことが大きかったと思っています。
共同生活をいかに過ごしやすくできるかを考える

私が大切にしたのは「共同生活をいかに過ごしやすくできるか」を考えることです。家族を亡くした人、家が倒壊した人、避難所にはさまざまな被災状況の人がいました。いつ抜け出せるかわからない状況の中、少しでも過ごしやすい環境にしたいと思っていました。
避難所の責任者の決める方針や話し合いの場で全体最適を優先した上で、自分にできることを考え、以下の2つを心がけました。
- 自分から挨拶をする
- ポジティブさを忘れない
自分から挨拶をする
共同生活を過ごしやすいものにするために、私が行ったのは自分から挨拶をすることでした。避難所は地区の人びとが集まっていましたが、私の親世代やそれ以上の世代の人が多く、初めて会う人もいました。
知らない人だからと知らん顔をするのではなく、自分から挨拶をすることで、安心感を持ってほしい。そんな気持ちで行いました。
ポジティブさを忘れない
ポジティブさを忘れないことも、避難所運営で大切にしたことです。ネガティブな思考に陥ってしまうと気力も体力も落ちていくのではないかと思い、ポジティブな思考に切り替えるようにしました。運営スタッフが暗い顔をしていてはよくないと思ったのも、理由の一つです。
「これからどうなっていくのか。また大きな揺れが来たらどうしよう。仕事に戻れるのだろうか。」
家の倒壊を免れ、家族みんな同じ避難所に入れた私ですら、さまざまな思いがめぐりました。また、運営本部は人員の受け入れや物資の管理をするだけでなく、食事の配膳をする場所としても使ったため、人の出入りが激しく、落ち着く暇がありませんでした。
体力、気力が落ち込みそうになったときでもポジティブさを保てたのは、挨拶の際に「いつもありがとうね」「何か手伝えることがあれば言ってね」と声をかけてくれた人たちの優しさを感じられたからかもしれません。
人を巻き込む
運営本部と役割を作っていても、避難所の人を巻き込んで作業にあたるようにしました。それには、さまざまな人が避難所運営に関わることで、避難所をみんなで動かしているという意識につなげるという狙いがありました。
避難所運営の体制が整い、避難所内は運営する人・避難所で過ごす人と区別ができ始めたのを感じていました。その結果、動ける世代の人でも手伝いをせず、欲しいものを言いに来るだけの人がいる、トイレタンクに補充する水が少なくてもそのままになっているなど、問題が起こり始めたのです。
それを解決するために、各部屋から動いてくれそうな人に声をかけ、運営メンバーが中心となって動いていた作業に加わってもらいました。運営メンバーの作業負担が軽くなっただけでなく、手伝いの輪が広まったように感じました。
避難所運営では、多くの人に運営に関わってもらうことが大切だと思います。
避難所に備蓄・準備しておいてほしいと思ったもの

私が避難した先は、指定避難所ではなく指定緊急避難場所だったため、備蓄が一切ない施設でした。そのため、本格的に支援物資が来るまでの2~3日間は、自分たちで使えそうなものを持ち寄り過ごしていました。このような状況を踏まえ、備蓄されていればよかったと思うものを以下に挙げています。
合わせて、避難生活に必要な備蓄がある避難所でも「こんなものがあると良いのでは」と思ったものもまとめました。
・簡易トイレ
何よりも必要だと感じたのが、簡易トイレです。避難所に入れたその日に簡易トイレがあれば、トイレの不安なく一夜を明かすことができたと思います。
簡易トイレの数が十分に備蓄されていれば、みなさんにトイレタンク用の水をくんでもらう負担や、運営側の水の管理の負担が生じなかったでしょう。また、プールに溜まっていた水を消防団の人に引いてもらう必要もなく、その労力と時間を他のことに使えたかもしれません。
「地域の人が全員避難したら」という仮定のもと、物資が届くまでに必要な数を備蓄しておいてほしいと思います。
・灯油式ストーブ

電気が使えない環境でも使えるストーブも、避難所にそろっていてほしいと思いました。物資として毛布の支給もありましたが、毛布だけで寒さをしのぐのは、厳冬期は難しいと感じます。
私のいた避難所では、いくつかの家庭から持ち寄ってもらった灯油式ストーブを各部屋で使用しました。ストーブの使用による空気の乾燥や火事、不燃による中毒に注意は必要ですが、空気が温まることは、避難所の人々の気持ちを安心させてもくれました。
寒さをしのぐだけでなく気持ちの安らぎのためにも、電気がなくても使える灯油式ストーブが、十分にあると良いと思います。
・飲み物・食料
非常用の飲み水や食料も、避難所に備蓄が必要だと感じたものです。私たちの地域は農業をしている人も多く、また、食料を数日分は準備している正月の時期だったこともあり、食料にはあまり困りませんでした。
それでも、飲料水の備蓄は多くなく、初日は近隣の人が持ち寄ってくれたみかんで水分補給を兼ねた覚えがあります。お茶も一人コップに一杯ずつ。脱水症状を起こす人がいなかったのが幸いでした。
食料は、可能ならいろいろな味や種類があると、気分転換になるといえます。避難所を活用する場合があるかもしれないと想定し、こんなものがあったらいいなという発想で、備蓄をしておいてほしいと思います。
・パーティション

簡易的なパーティションも、避難所に準備されていると良いと思ったものの一つです。着替えや一人で一息つきたいときなど、視線をさえぎるものが必要な場合があるからです。
私がいた避難所はおおくて4世帯ほどが一つの教室に入る運用でしたが、平地の避難所は体育館に約300人が身を寄せていました。避難所での不便な生活の中で人の視線にさらされ続けるストレスなどから、避難所の雰囲気はあまり良くなかったそうです。
1家族に1つパーティションが行きわたることが理想ですが、広い空間をいくつかに区切れるような数のパーティションの備えがあっても良いのではないかと感じました。
・生理用品・おむつ
生理用品やおむつも、避難所に準備してあれば安心できるものの一つです。避難所生活がいつまで続くかや、いつ必要物資が届くかわからない状況の中で、個人や家庭で準備する非常用持ち出し用袋での準備には限界があります。
避難所から足りないものを取りに家に戻れるとも限りません。生理用品やおむつを替えずに使い続けることのないよう、ぜひ避難所に備蓄をお願いしたいと思います。
おむつについては、さまざまな年齢用のものがそろっていると不安の軽減につながると考えます。
実際、避難初日にトイレがうまくできないという小学生をお持ちのご家族からおむつの相談を受けました。個別のケースにフィットするのは難しくても、起こりうるケースに柔軟に対応できるよう物資が備蓄されている状態を願います。
家庭で準備しておけばよかったと思ったもの
私がいた地域では、家から避難所までの距離が近く、家に何かを取りにいくことができました。しかし、発災当日、津波が来ていたら家に物を取りに帰ることはできなかっただろうと考えると、非常時の準備はしておくべきだと考えました。
・非常用持ち出し袋

簡易トイレや非常食、常備薬、替えの下着、生理用品などを入れた、非常用の持ち出し袋を準備しておけばよかったと思っています。今回の避難所生活初日で、私が困ったと感じたのはトイレと飲み水、寒さでした。1日分だけでなく、2日分の準備ができていれば、避難初日を安心して乗り越えられたかもしれません。
私が今回の経験から、非常用持ち出し袋として準備しておけばよかったと思うものをまとめました。持ち出し袋をまだ準備していない人は、参考にしてみてください。
・マスク
避難所生活の中で、マスクを多めに準備しておけばよかったとも思いました。季節柄、風邪やインフルエンザの心配があったからです。
また、避難所運営をしていたことでトイレの清掃に入ることもあり、衛生面からマスクを着用していました。私の避難生活の場合は、持ち寄りのマスクがあったので、トイレの清掃後のマスク交換も可能でした。
マスクに余裕があれば衛生面に配慮してマスクを交換することもでき、自分だけでなく施設内の人も守れます。持ち出し袋に多めにマスクを備えておくことも、大切です。
・ウエットティッシュ
ウエットティッシュやおしりふきも、準備しておけばよかったと思います。手を拭くだけでなく、食事を置く場所を拭いたり体を拭いたりできるので、衛生面を考えると準備しておいて損はないと思います。
かさばる可能性もありますが、除菌タイプのものや大判で体が拭けるタイプなど、数種類持っておくと安心できます。
入浴に勝るものはないと被災体験を通じて感じましたが、体を拭くだけでも気分が良くなるので、ウエットティッシュやウエットタオルの備えをおすすめします。
・ドライシャンプー
ドライシャンプーも準備しておけばよかったものの一つです。避難所では入浴ができないので、冬場で汗をかかないと言っても、髪のべたつきは何とかしたいものでした。
ウエットタオルで体を拭くのと同様、入浴以上にさっぱりできるものはありませんが、ドライシャンプーをするだけで気分がさっぱりします。
・レインポンチョ・丈の長いスカート
女性や小さいお子さんを持つ人は、レインポンチョや丈の長いスカートを準備しておくと安心だと思います。避難所に更衣室用の部屋があるとは限らないので、レインポンチョや長いスカートは、目隠し代わりに使えます。
・蓄電池
充電式の蓄電池も、ぜひ家庭に準備しておいてほしいと思います。私たち家族は、親戚が蓄電池を持っていたことで照明の心配をすることなく、安心して過ごせました。
また、避難所本部に発電機が設置されるより先にスマホの充電ができたことも、蓄電池があってよかった点だと思います。本部の充電器は時間制で部屋ごとに台数の制限を設けていたので、自由に充電できるのは安心感につながりました。
- その他
- 簡易トイレ
- 飲料水
- 非常食
- 常備薬
- 替えの下着
- カイロ
- アルミシート
- 液体歯磨き
- 生理用品
- モバイルバッテリー
まとめ
発災直後は被災者が避難所運営をしていることを理解し、協力し合うことが大切

災害時、避難所を運営する立場に回っている人は、役職や勤め先、まとめる人がいないなら、という理由で運営にあたってくれています。運営の便宜上、ビブスをつけたり名札をつけたりして目立つようにしているだけで、避難所にいる人たちと同様の悲しみや混乱の中にいます。
私はこの被災体験から、避難所運営スタッフと避難所利用者という区別が起こってはいけない、避難所運営をしている人も被災者だということを忘れてはいけないと強く感じました。
緊急事態で自分や自分の家族のことしか考えられない状況でも、少し落ち着いてから、誰もが被災者であることを思い出してほしい。そして思いやりをもって自分にできることを考え、協力し合うことが大切だと思います。
避難訓練では避難所での過ごし方も扱い、有事の際には避難者の多くの人が運営に携わる避難所が増えることを願います。
出村優紀美
石川県輪島市出身。実家に帰省していた際、2024年1月1日の能登半島地震で被災、避難所運営を手伝いながら避難生活を送る。学習塾を運営する民間企業に勤めた経験を活かし、現在は塾講師として学習指導を行いながら、Webライターとしても活動中。