災コラム

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暖冬による災害に要注意!2024年の冬はエルニーニョ現象が大きく影響

2024/01/19

2023年に発生したエルニーニョ現象によって、昨年から2024年は暖冬傾向になるといわれています。

通常の冬場と異なるため、さまざまな災害が起きる可能性が高いといえるでしょう。

暖冬といっても全く雪が降らない訳ではなく、気象状況によっては積雪量が多くなる地域もあります。

そこで今回は、暖冬によって起きる災害について詳しく解説します。

エルニーニョ現象が起きると暖冬になる理由

エルニーニョ現象が発生するメカニズムの図解

2023年から2024年の冬は暖冬になるといわれていて、その原因はエルニーニョ現象にあります。

どうしてエルニーニョ現象が起きると暖冬になるのか、疑問に思う方も多いはず。まずは、エルニーニョ現象が起きると暖冬になる理由について解説しましょう。

スーパーエルニーニョ現象が発生

2023年の海面水温の変化

出典:気象庁 エルニーニョ監視速報(No.375)



気象庁の公式サイト(エルニーニョ/ラニーニャ現象とは )では「エルニーニョ現象とは、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より高くなり、その状態が1年程度続く現象です。」と解説しています。

具体的には、対象海域の海面水温が6か月~1年程度+0.5℃以上となった場合には「エルニーニョ現象」が発生したことになります。

上図を見ればお分かりのように、2023年8月~10月にかけて平年よりも2.2℃高く、現在はスーパーエルニーニョが発生しているといわれています。

エルニーニョ現象が起きると暖冬になる理由

エルニーニョ現象の冬季の天候への影響

出典:気象庁 日本の天候に影響を及ぼすメカニズム



エルニーニョ現象が起きると、大気の流れや風の向きが変わり気候に影響を与えます。それにより日本は、エルニーニョ現象の影響で暖冬になることが多いです。

主な理由として、エルニーニョ現象で冬場は西高東低の気圧配置が弱まり、気温が高くなるため暖冬になるといわれています。

本当に暖冬なのか調査してみた!

北大西洋をクローズアップした世界地図

ここまででエルニーニョ現象について解説しましたが、本当に暖冬なのか年末年始の気温や積雪量を調査してみました。

筆者の体感的にはとても暖かいと感じていましたが、全国的にどうだったのかお伝えしましょう。

2023年10月9日~2024年1月6日の平均気温

気象庁のデータベースから2023年10月9日~2024年1月6日における、全国4地点の平均気温を調査してみました。

観測地点 平均気温
北海道・宗谷岬 3.4℃(+0.6℃)
東京都・八王子 11.2℃(+1.1℃)
大阪府・大阪 13.3℃(+0.5℃)
福岡県・福岡 14.0℃(+0.8℃)

上記の全国4地点の平均気温はいずれも平年よりも高くなっており、暖冬であることが分かります。

また、2023年12月28日~2024年1月6日までの年末年始10日間の平均気温もご覧のとおり、全国的に高くなっていました。

2023年12月28日~2024年1月6日の平均気温

気象庁 最新の気象データ 天候の状況



積雪量は少なく平年比80%以下が多い

2024年の積雪の深さ(平年比)

気象庁 最新の気象データ 雪の状況



2024年1月7日時点での積雪量を調査すると、平年比100%以上の地点は北海道の一部地域に限られています。本州では東北地方をはじめ、積雪量は平年比80%以下の地点がほとんどです。

雪が降らない訳ではなく暖冬だからこそ起きる災害もある

HELP イメージ画像

エルニーニョ現象によって日本列島は暖冬傾向にあることが分かりましたが、決して雪が降らない訳ではありません。実際に2023年12月21日には寒波が押し寄せ、各地で大雪をもたらしています。

このように、暖冬傾向にあっても寒波は襲ってくるので油断できず、暖冬であるからこそ起こりうる災害があります。

積雪・融雪を繰り返すため雪の事故が起きやすい

寒波によって大雪が降り高い積雪になる地域もありますが、暖冬傾向にあると寒波は長く続きません。

そのため、積もった雪が溶けやすい環境となります。断続的に寒波が起きると積雪と融雪を繰り返すので、山間部では雪崩が起きやすく、屋根に積もった雪も落雪しやすくなり要注意です。

積雪がある地域では屋根の下を歩くのでなく、離れて歩くことが重要となります。また、屋根からの雪下ろしも、命綱を付けるなどの対策が必要になるでしょう。

ノーマルタイヤによるスリップ事故

暖冬で雪が降らないからとノーマルタイヤのままでいると、突然の雪によってスリップ事故を起こす可能性が高くなります。

毎年のように積雪のある地域では暖冬であっても、スタッドレスタイヤに交換しておくことをおすすめします。

現実に2023年12月には突然の積雪によって、雪による交通事故が多発しており、特に高速道路では重大な事故が起きています。

凍結もあり得るため、積雪地域では車にタイヤチェーンを用意しておくとベストでしょう。

水分を含んだ雪が多いため体を傷める可能性が高い

2023年12月に降った雪は水分を多く含んでいたため雪が重く、除雪作業が思うように進みませんでした。

数十センチ雪が積もれば自宅の玄関先などは、除雪しないと安全に通行できません。そのため、必ず除雪作業が必要となりますが、水を含んだ雪は通常より重く、いつもより体力も力も必要です。

そんな重たい雪を除雪するため、足腰や腕などの部位を傷める可能性があります。また、寒い中での作業なので厚着をしますが、途中からは汗をかくことも多く風邪を引きやすくなるので体温調整も重要です。

暖冬は農作物にも影響する

暖冬は天候不順をもたらせるため、農作物にも悪影響を与えます。農作物の中には一定の冷たい気温が必要な作物もありますが、暖冬によって気温が下がらないため不作になってしまいます。

また、暖かい日が続くのでなく、いきなりの寒波によって気温が下がるなど、天候不順となるため作物が正常に育ちません。その影響は野菜や果物の価格高騰となり、消費者におよんでしまいます。

福島県猪苗代で生産される「雪下キャベツ」は、文字どおり雪に埋まった状態で栽培されます。しかし今季は暖冬で、例年どおりの雪が降っていないため、通常通りの栽培ができていない状態です。

このように、寒さや雪が必須条件である農作物には、暖冬はダメージが大きいといえるでしょう。

寒暖差による体調不良

暖冬は寒暖差による体調不良も懸念材料で、1日の気温差が10℃以上になることも珍しくありません。

昼間は温かくても夜になると冷え込むことが多く、服装の調整が重要となります。また、住宅内でも温度差による対策は必要で、暖房だけでなく衣服によって調整する必要があるでしょう。

子どもや高齢の方がいる家庭では、夜になっても昼間と同じ服装で過ごすケースも多いため注意が必要です。本人が大丈夫といっても、家族が厚着をさせるなどの対応が重要といえます。

暖冬で雪が降らないと困ることは多い!

雪景色の写真

寒さが苦手な方にとって暖冬は歓迎だと思いますが、暖冬で雪が降らないと困ることも多くなります。

雪解け水による天然水を必要とする施設もあり、水不足が懸念されています。そのほかにも、雪に関わる仕事をしている方にとっては生活に悪影響をおよぼすため、暖冬で雪が降らないことは災害級の被害をもたらす原因になるといってよいでしょう。

北アルプスの山小屋は登山者に水が提供できない

水道施設のない山小屋などで水の確保は、雨水や残雪による天然の水となります。しかし、冬場に積もるほどの雪が降らなければ水も枯渇するため、登山者への水の提供ができません。

実際2023年の夏から秋にかけて、北アルプスの一部の山小屋は深刻な水不足に陥っています。原因は冬の積雪量の減少や春の高温によるものとされており、現状のままだと2024年も水不足に陥る予想です。

そうなると登山者は、自身が必要な飲料水を持参する必要があるため、いつもよりも重たい荷物を背負うこととなります。その結果、体力の消耗が激しくなり遭難するリスクが高くなったり、飲料水がなくなり脱水症状に陥ったりする事故も予想されます。

スキー場が開設できない!関係者の生活に影響がある

当然ですが積雪がないと、スキー場は開設できません。2024年1月3日時点で宮城県内にある10個所のスキー場の内、雪不足で7箇所が開設に至っていません。

雪が積もらなければスキー場関係者の方たちの仕事が激減し、ダイレクトに生活に影響します。例年であれば約3万2,000人が訪れる予定が0人となるので、影響の大きさは計り知れません。

また、スキー大会などの開催が中止になるとスキー場だけでなく、周辺の宿泊施設も予約がキャンセルになり、関係者の生活に悪影響をおよぼしてしまいます。

23年ぶりとなる「雪乞い神事」も行われるほど深刻な雪不足

兵庫県の香美町では天然の積雪がないばかりか、気温が高いため人工降雪機を使うこともできていません。

先にもお伝えしているとおり、スキー場には地元の宿泊施設や飲食店、お土産屋など多くの方の生活がかかっています。そのため「雪乞い神事」による神頼みをしてでも、雪が降ることを願っているのです。

香美町だけでなく雪不足となっているスキー場関係者の方、全ての願いであるのは間違いないでしょう。

まとめ

今回は、暖冬で起きる災害についてお伝えしました。暖冬になる理由はエルニーニョ現象であり、暖冬だからこそ起きる災害もあります。

全く雪が降らない訳ではなく、寒波によって突然大雪に見舞われることもあります。また、一時的に積雪があっても暖冬による気温の高さから、直ぐに融けてしまうためスキー場や関係者の方の生活に大打撃となっています。

いずれにしても、エルニーニョ現象を含む異常気象の多くは温暖化が大きな原因といわれています。これ以上酷くならないためにも、国単位でなく個人単位の温暖化対策が必要なのかも知れません。

栗栖 成之

1963年広島県呉市生まれ。現在は兵庫県に在住し、1995年阪神淡路大震災を経験。
2014年からWEBライターを開始して、執筆した記事は3,000以上。
2017年に防災士を取得し、現在防災関連の記事も多数執筆中!