防災コラム
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災害時の薬はどう備える?保健師が教える命を守る薬の備蓄と管理方法
2026/07/17
「もし災害の時に、薬がなくなったらどうしよう……」そんな不安を感じたことはありませんか。私は保健師として西日本豪雨で避難所を巡回した際に、「薬の残りが少ない」「薬を家に置いてきてしまった」という声に直面しました。
そして、普段とは違う環境で体調を崩す方や、怪我を市販薬でしのぐ方を目の当たりにし、薬の備えがいかに命に直結するかを痛感したのです。
防災への意識が高まり、水や食料を準備する人は増えていますが、薬やお薬手帳の備えも命を守る大切なカギになります。
この記事では、災害時に薬が不足する現実と“自分専用の備え”になる対策方法を紹介します。
目次
薬の備えが災害時に命を守る理由

災害時は医療や物流が止まり、薬が手に入りにくくなります。人によって必要な種類や量が異なるため、水や食料のように分け合うことも難しいです。だからこそ自分に必要な備えを整えておくことが重要になります。
現場で聞いた、災害時に薬を切らした人たちの声
西日本豪雨のとき、避難した方から「薬が残り少ないけど、病院が浸水して開いていない」「今は薬よりも片付けが優先」という声を多く聞きました。
避難生活では水分不足や寒暖差、寝不足が重なり、体調を崩しやすくなります。血糖測定器や血圧計を持ち出せず、体の状態を確認できないまま過ごす不安を抱えていた方もいました。薬は命を支えるために欠かせないものであり、切らしてしまうと健康リスクが一気に高まるのです。
薬の備えは後回しになりやすい
日常生活では「薬は病院でもらうもの」「必要になれば買えるから大丈夫」と考える方も多いでしょう。薬を用意しようと思っても必要なものは一人ひとり違うため、揃えるためには手間もかかり後回しになりがちです。
しかし災害が起こると、「薬が欲しい」と思ってもすぐに手に入りません。他の薬で代用するのも難しいため、普段から用意しておくことが、いざというとき命を守ることにつながります。
慢性疾患や持病のある人は災害時に体調を崩しやすい
さらに、災害時は生活リズムが乱れ、自律神経が不安定になりやすいです。その結果、血圧や血糖が急に変動するなどして、持病を抱える人ほど体調を崩しやすくなります。
実際に高血圧治療中の方が薬を飲まずに作業をしていたため、気づかないうちに血圧が上がり受診が必要となったケースもありました。
このようなリスクを防ぐため、日頃から薬やお薬手帳を持ち出せるようにしておくと安心です。
持病・応急手当・避難生活に対応できる医薬品をそろえる

災害時に備えておくべき薬は、持病の治療薬だけではありません。市販薬や応急処置薬、感染症予防のための衛生用品もあれば幅広く対応できます。家族の体調や生活習慣に合わせて揃えておきましょう。
まずは命に直結する持病の薬を準備する
最初に準備すべきは、服薬を中断すると命に関わる持病や慢性疾患の薬です。
災害直後は救命活動が優先されるため、持病や慢性疾患の方の診療は後回しになる場合もあります。薬が手元にあれば、体調を安定させられ、服薬できないことへの不安も和らぐでしょう。
市販薬や応急セットを備えて不安を減らす
さらに市販薬や応急セットを持っていれば、体調の変化や小さな怪我にも役立ちます。「薬剤師のための災害対策マニュアル」によれば、災害発災から3日間は怪我ややけどなどの外傷が多いとのことですが、備えがあれば落ち着いて対応できるでしょう。
市販薬を用意する際は、“水なしで飲めるもの”“小粒なもの”など飲みやすさを考慮することも大切です。
備えておきたい市販薬と応急セット
- 総合感冒薬:どんな症状が出ても幅広く対応できるものがあると安心できる。
- 解熱鎮痛剤:熱や痛みに備えて。ただし、かぜ薬と併用する際は成分が重複しないよう注意する。
- 胃腸薬・整腸薬:慣れない食事やストレスから起こる、胃腸の不調を和らげる。
- 消毒薬・ガーゼ・絆創膏:災害直後に多い、切り傷や打撲などに対応できる。
感染症予防をして健康を守る
感染症を防ぐために、マスクや消毒薬、歯ブラシなどの衛生用品の備えも欠かせません。
避難所では多くの人と生活を共にするため、感染症が広がりやすいです。衛生用品があれば、新型コロナウイルスやインフルエンザ、感染性胃腸炎などを防ぎ、周囲の人の健康を守ることにもつながります。
- マスク:飛沫感染を防ぎ、喉や鼻の乾燥対策にも役立つ。
- エタノール消毒液やウェットティッシュ:手指の消毒はもっとも効果的な予防策になる。
- 歯ブラシ・デンタルフロス・入れ歯洗浄剤:虫歯や歯周病だけでなく、誤嚥性肺炎といった呼吸器感染症のリスクを軽減できる。
正しい知識で、薬を計画的に備える

これらの薬や衛生用品も、使用期限が切れていたり、保管方法が誤ったりしていれば、肝心な時に使用できません。家族で情報や管理方法を共有しながら、適切な方法で備えておくことが大切です。
薬は最低3日分、できれば7日分用意する
薬を用意する際は、持病の薬は最低3日分、可能であれば7日分を用意するのが理想です。
大規模災害では、発生から72時間は救命活動が優先されることに加え、道路が寸断されれば病院や薬局に薬が届かない可能性もあります。その際も手元に薬があれば、落ち着いて「この先の薬をどうするか」を考えられるでしょう。
薬の使用期限や保管方法に注意する
薬を用意する際は、使用期限を確認しておくことも重要です。古い薬から使い、新しい薬を非常用に回す“ローリングストック“を実践すると、常に新しい薬を備蓄でき、期限切れを防げます。
また、薬ごとに「冷暗所保存」「常温保存」など保存条件が異なるため、正しく保管できているか注意が必要です。
身近な人と薬の情報を共有する
薬の保管場所は、家族や身近な人と共有しておきましょう。さらに、薬の種類や在庫、更新日を記録しておくのも有効です。
1日分ずつ分けて服薬時間を書いておくと、すぐに取り出せて飲み間違いも防げます。また薬名や効能、服用回数をメモして袋に添えておけば、家族や支援スタッフも安心してサポートしやすいです。
災害時に薬がない時の対処法3選

被災直後に最も大切なのは、まずは自分の命を守ることです。状況が落ち着くまでは、危険を冒して自宅に薬を取りに戻るのは避けましょう。そのうえで、薬がないときにどう行動すべきかを知っておくことが、命を守るための大切な備えになります。
かかりつけ医や薬局に相談する
まずは、かかりつけ医や薬局へ相談をしてください。大規模災害時には、特例でお薬手帳や薬の情報が分かれば、処方箋がなくても薬局で薬を受け取れるケースがあります。
あらかじめ主治医に「絶対に切らしてはいけない薬」を確認しておきましょう。
救護所や避難救護センターを活用する
災害救助法が適用されると、地域ごとに救護所や避難救護センターが開設されます。そこでは応急処置に加え、慢性疾患の薬を受け取れる場合もあります。避難所の掲示や自治体の広報を確認し、場所や利用方法を早めに把握しておくとよいでしょう。
避難所スタッフやボランティアを頼る
避難所では必要な支援は、自ら声を上げることが大切です。薬が必要なことを伝えれば、スタッフやボランティアが救護所や薬局への連絡を代わりに行ってくれる場合があります。薬の不足は命に関わる重大な問題ですから、困ったときは一人で抱え込まず、できるだけ早く周囲に相談してくださいね。
お薬手帳を活用して薬の受け取りをスムーズにする

災害時に薬を受け取る際は、服薬情報を正確に伝えることが欠かせません。そのために役立つのが「お薬手帳」です。
お薬手帳で正確な薬情報を伝える
普段からお薬手帳で服薬内容やアレルギー、副作用の有無などがすぐに分かるようにしておきましょう。災害時は、在庫不足から薬局や避難所で普段とは違う薬を処方される可能性もあります。「自分がどんな薬を服用しているか」を正しく伝えることで、安心して薬を受け取れるだけでなく、副作用や効果不足のリスクの軽減にもつながるのです。
紙・電子・コピーを使い分けて薬情報を分散管理する
お薬手帳は1冊だけに頼るのではなく、複数の形式を組み合わせて情報を分散して管理するのがおすすめです。
- 紙のお薬手帳:誰にでも見やすく、医療機関でも確実に利用できる。
- コピーや写真:防水ケースに入れて避難バッグに常備すれば、紛失や破損のリスクを軽減できる。
- 電子お薬手帳:スマホやクラウドで家族の分をまとめて管理できる。
複数の手段を用意しておけば、どんな状況でも薬の情報を提示できます。さらに家族や親せきにコピーを渡しておけば、本人が対応できないときにも代わりに正確な情報を伝えられて便利です。情報を分散して備えておく工夫が、最終的に薬を切らさない安心へとつながります。
まとめ|薬の防災対策を今日から始めて安心を確保する

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災害はいつ起こるか分かりません。だからこそ、水や食料と同じように、薬やお薬手帳も“必需品”として準備しておくことが大切です。
薬そのものの準備に加え、服薬情報の共有や分散管理といった工夫が、体調を安定させ、避難生活の不安を和らげることにつながります。
家族や周囲の人と協力して、少しでも安心できる環境を整えていきましょう。
参考文献
災害に役立つ常備薬の選び方|災害に備えた準備を~在宅避難者の衛生・健康管理ガイド~|東京都南多摩保健所
大規模災害時にお口と全身の健康を守るために
災害時にお口の健康を守るために
日医ニュース:災害時のために。持病のクスリを備えていますか?
日本チェーンドラッグストア協会監修:自分のため、家族のため家庭内備蓄をしましょう!
メディカルスタッフのための ライフステージに応じた関節リウマチ患者支援ガイド
厚生労働省:避難所生活を過ごされる方々の健康管理に関するガイドライン
電子版お薬手帳 |厚生労働省
電子版お薬手帳にかかる参考資料
葉山なのか
保健師として西日本豪雨で避難所の開設・運営に携わる。現在はWebライターとして活動する傍ら、月30人以上への保健指導も実施中。医療・健康・防災分野を中心に、自身の経験を活かしつつ相手の気持ちに寄り添った記事を執筆している。