災コラム

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通勤や通学中の地震に備えよう!ケースごとの対処法を解説

2023/01/13

1995年(平成7年)1月17日に起きた、兵庫県南部地震による阪神・淡路大震災をきっかけに、さまざまな地震対策がほどこされてきました。

それでも2011年(平成23年)3月11日には、東北地方太平洋沖地震による東日本大震災が起きてしまいました

毎年各所で自然災害が猛威をふるい、そして被害をもたらせています。中でも地震は未だに予測が難しく、緊急地震速報も揺れが到達するまでの時間は、数秒から数十秒と短く、対応しきれないケースがあるのが現状です。

そこで今回は、通勤や通学の際に大きな地震が起きた場合、どのような対処法が有効であるかをまとめました。

地震の観測網は発達している!さまざまな観測点が存在する

出典:気象庁 震度観測点を示す
図

出典:気象庁
https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/intens-st/


2022年4月1日現在、全国には4,372個所の震度観測点が存在しています。

この観測点には気象庁・地方公共団体・防災科学技術研究所の3団体によるものがあり、その合計は4,372個所となっています。

地図を見ればお分かりのように、全国を埋め尽くすほどの観測点が設置されています。

団体名 個所数
気象庁 671
地方公共団体 2,904
防災科学技術研究所 797
合計 4,372

海溝型地震の予測も発展してきている

地震には「活断層による地震(内陸型地震)」と、プレートとプレートの境界で起こる「海溝型地震」が存在します。

阪神淡路大震災は「活断層による地震(内陸型地震)」にて起きた災害で、東日本大震災は「海溝型地震」によって起きた災害です。

その他にも火山性地震がありますが、これは火山の噴火による地震で滅多に起きません。従って、一般的な地震は内陸型と海溝型に分かれることとなります。

先ほどの震度観測点は陸地に設置されている震度計ですが、実は海底にも地震計が設置されていて、常に海溝型地震を観測しているのです。

現在では13の海溝型地震の観測システムが稼働している

海底地震計の設置場所・主管を表
す図

出典:日本科学技術会議
https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/hyouka/kentou/tsunami/haihu2/siryo2_2.pdf


これは日本科学技術会議が公表している「日本海溝海底地震津波観測網」の図で、現在では海底に13もの地震観測システムが整備されています。

これらの観測システムにて、緊急地震速報の発表が可能となっているのです。

観測網の構成について

海底地震津波観測網の基本構成の

出典:防災科学技術研究所 海底地震津波観測網
https://www.seafloor.bosai.go.jp/S-net/


海底に設置されている地震の観測網は、図のように1つの観測システムにて平均約25の観測点を、約30kmの間隔で網の目状に配置しています。

  • 観測装置は約25台
  • 約30km間隔で配置
  • ケーブルの全長は約800km
  • 水深1,500m以浅では、海底に約1mの穴を掘って埋めている
  • 沿岸や浅部では外装ケーブルでケーブル本体を保護している

これだけの地震計やシステムによって緊急地震速報が発表される

緊急地震速報の流れの図解

気象庁 緊急地震速報のながれ
https://www.data.jma.go.jp/svd/eew/data/nc/shikumi/whats-eew.html


普通に生活しているなら、先のような地震計を見ることはありませんし、緊急地震速報についても「ふぅ~ん」程度に終わってしまうでしょう。

しかし、陸地や海底にこれだけの地震の観測網を整備することで、緊急地震速報が可能となっているのです。

現状では確かに「役に立たない」ケースも多く見られますが、ひとりでも多くの命を救うことができるように、気象庁をはじめ各研究機関は頑張っているのです。

通勤・通学中に屋外を歩いている際の地震への対処法

ここまでで、日本における地震観測の現状をお伝えしてきました。これだけの整備をしても、地震の予測は数十秒から数秒前でしか感知することができません。

震源から遠ければ机の下に隠れるなど、予防措置をとることが可能ですが、震源近くだと速報と同時か、速報よりも早く揺れがやってきます。

ここでは、通勤や通学時に外にいて大きな地震に遭遇したなら、どのような対処法が有効であるかを解説します。

ビルが建ち並ぶ街中を歩いているケース

ビルが建ち並ぶオフィス街や、街中の歩道を歩いている時に大きな地震に遭遇したら、先ずは頭を守りましょう。

頭上にある看板などが落下してくる可能性もあり、揺れによって割れた窓ガラスが降りそそいでくる可能性もあります。

  • バッグや上着などで頭をカバーして、建物からできるだけ離れる
  • 交通量が多い場合は、頑丈な建物の中に避難する
  • 近くに公園や広い場所があればそこに逃げ込む
  • 揺れがおさまったら、公園やグラウンドなど建物のない場所に避難する

道路に飛び出すと車にひかれるので要注意

地震時には歩いている人の方が、いち早く揺れを感じます。そして車を運転しているドライバーは、周囲の建物などの揺れを見て地震だと感じることが多いです。

なので、ビルから離れる際に道路に飛び出すと車にひかれる可能性が高くなります。交通量が多い道路の歩道を歩いているなら、逆にビル内に逃げた方が無難です。

住宅街を歩いているケース

住宅街を歩いている時に大きな地震に遭遇したなら、先ほどと同じくバッグや上着で頭を守ります。住宅街では降りそそぐ危険物はほとんどありませんが、自動販売機やブロック塀に注意が必要です。

  • ブロック塀からすぐに離れる
  • 自動販売機からもすぐに離れる
  • 電柱の多い場所では電線が垂れ下がってくる危険があるので近づかない
  • 揺れがおさまったら、公園やグラウンドなど建物のない場所に避難する

通勤・通学中に地下にいる際の地震への対処法

通勤や通学では、地下鉄を利用する方も多いでしょう。また、地下道を通って会社や学校に向かう方も多いはずです。ここでは、地下にいる際の地震への対処法を解説します。

地下鉄に乗っているケース

ほとんどの地下鉄では、震度4以上の地震を感知した際に緊急停車します。停車した地域が停電すれば、車両も停電となり真っ暗になりますが、少しすれば非常用バッテリーにて非常灯が点灯するので、慌てないことが重要です。

  • パニックにならないようにする
  • 電車の窓から離れて通路中央に移動する
  • 非常ブレーキにて転倒しないように手すりや吊革につかまる

地下鉄の駅にいるケース

地下鉄の駅にいる時に大きな地震に遭遇したら、ホーム上では線路から離れた場所に移動します。

その後は、地下鉄会社の職員の指示に従うのがベストで、慌てて駅から脱出しようとすると群衆雪崩に遭遇してしまう危険があります。

  • ホーム上では線路から離れる
  • 落下物に備えて、カバンや上着で頭を守る
  • 地下鉄会社の職員の指示に従って避難する
  • 慌てて駅から脱出しないようにする

地下街を歩いているケース

地下道を歩いている時も、慌てるのが最もNGな行為となります。地下は地上よりも揺れが少なく、実は地上にいるよりも安全なのです。

従って、慌てて地上に出ようとしないで、ショーウィンドーなどのガラスから離れて待機することが最も安全な方法です。

基本的に地下街には、約60m間隔で非常口が設置されているので、慌てて地上に出なくても揺れがおさまってからでも十分間に合います。

  • 店舗のショーウィンドーなどのガラスから離れる
  • 通路の中央や柱の付近に退避する
  • 揺れがおさまってから人混みを避けて移動する

通勤・通学中に建物内にいる際の地震への対処法

通勤・通学中に建物内にいる場合でも、先ずは頭を守り窓などから離れることが重要です。頑丈な机などがある場合は、その下に身を隠して落下物から頭と身体を守ります。

建物の中にいるケース

通勤や通学時に建物内にいるシチュエーションは駅などなので、机などの身を隠せるものは存在しないでしょう。とにかく、パニックになることは避けなければいけません。

  • 窓から離れる
  • カバンや上着で頭を守る
  • パニックになって走り出してはダメ
  • 揺れがおさまるまで身をかがめて待機する

エレベーター内にいるケース

地震が起きた際に駅構内などの、エレベーターにいるケースも考えられます。

エレベーター内で強い揺れを感じたら、慌ててしまうのは間違いありません。ですが、エレベーターは地震に対しての安全装置が施されているので、慌てなくても大丈夫です。

  • 揺れを感じたら全ての階のボタンを押す
  • 最初に止まった階でエレベーターから降りる
  • もしも閉じ込められたら、非常用のインターフォンで連絡して救助を待つ

通勤・通学中に乗り物に乗っている際の地震への対処法

先に地下鉄に乗っている際の対処法をお伝えしていますが、通勤・通学ではバスや電車、マイカーを利用する方も多いです。

ここでは、バスや電車、マイカーなど乗り物に乗っているケースの対処法を解説します。

バスや電車に乗っているケース

電車では先の地下鉄と同様に、ほとんどの鉄道会社で震度が一定の規定値(概ね震度4が目安)に達すれば、緊急停止となります。

またバスの場合は、運転手の判断に左右されることが多く、運転手がいつどのような場所で地震を感じるかによって停車のタイミングが変わってきます。

ただいえることは、電車もバスも急停止することが多いので、転倒しないようにすることが最も重要になってきます。

  • いつ地震が起きるか分からないので、常に手すりや吊革にしっかりつかまっておく
  • 慌てて車外へ飛び出さないようにする
  • パニックに陥らないようにすることが重要
  • 電車なら車内アナウンスの指示に従う
  • バスなら運転手の指示に従う

マイカーを運転しているケース

マイカーを運転している時に地震に遭遇した場合は、場所によって揺れの感じ方が変わってきます

高速道路や橋梁の上では揺れを早く、そして大きく感じることとなり、一般道では余程大きな揺れでない限り、ビルや電柱、看板などの揺れ方で地震であることに気づくケースが多くなります。

いずれにしても、運転中は慌てて衝突事故を起こさないようにすることが重要です。

  • ハザードランプを点灯させてゆっくり道路の左側に停車する
  • エンジンを切り揺れがおさまるまで車内で待機する
  • 車外へ避難する際にはキーは付けたままロックしないで窓は閉めておく
  • 車から避難する際は連絡先のメモを残し、車検証を持って徒歩避難する

最近の車はスマートキーになっているので、キーをつけたままというのは難しくなります。この部分については、スマートキーでない旧型の車が該当するとしてください。

退避後は最も安全な場所に避難する

通勤・通学の際に大きな地震に遭遇すれば、学校や仕事どころではありません。まずは身の安全を最優先に考えて、その後は職場や学校もしくは自宅のどの場所が安全で最も近いかを考えます。

もしかすると、近くの避難所へ行くのが最も安全かも知れません。大きな地震の揺れがおさまっても、余震が続くケースも多く予断を許しません。

自宅や職場への移動は揺れが完全におさまってから

地震による大きな揺れをしのいだなら、まずは最も安全な場所に移動して避難することが重要です。

そして、揺れが完全におさまってから、自宅や職場への移動を開始します。

震度5以上の地震なら、その後の余震にも注意しないといけません。かといって、余震が完全におさまるには1週間程度必要となるので、余震がおさまるのを待つ訳にもいきません。

本震の揺れが完全におさまってから、余震に注意しつつ安全な場所への移動を開始します。

まとめ

地震は突然やってくるので、予測不可能です。通勤や通学途中に大きな地震に遭遇することも想定して、普段から家族が落ち合う避難場所や連絡方法を決めておくことが重要です。

そうすることで安否確認もスムーズになり、家族を探しに行って二次災害に巻き込まれることもなくなります。

いつ起きるか分からない地震には、普段からの防災対策が重要です。

栗栖 成之

1963年広島県呉市生まれ。現在は兵庫県に在住し、1995年阪神淡路大震災を経験。
2014年からWEBライターを開始して、執筆した記事は3,000以上。
2017年に防災士を取得し、現在防災関連の記事も多数執筆中!